第34話。勇者一行
「見たかよ!あの情けない姿」
「ほんと、情けない。あれで次期魔王だろ?
思ってたより、魔王討伐なんて簡単なのかもな」
「隼人が強すぎるだけだよ~」
とある王国の、冒険者ギルドに響く笑い声と喝采。
ダンジョン攻略を祝う声。
ダンジョンとは魔王一族が、作成するいわば次期魔王の住み処だ。
ここ数十年ひとつも攻略されなかったダンジョンが攻略し、勇者一行パーティーは盛り上がっている。
「あんまり飲みすぎるなよ。明日は国王に所見に行くんだろ?」
「大丈夫だって」
ダンジョン攻略の功績で国王から褒美を貰うことになっている。
国王も魔王討伐のために、莫大な資源を使い召喚した勇者一行の活躍を喜んでいる。
「あの~、私はそろそろ失礼します」
みんなが盛り上がっている中、一人の小さな女の子が宴会の席をたとうとしている。
「なんだよ~。ノリ悪いな。
それとも、俺達がお前と同じ魔族を殺したのを怒ってるのか?」
「……違います。それに私は魔族ではありません」
「ああ、半魔だったな。まあ、どっちにしても俺達からしたら一緒だけどな」
小柄な少女は、人間とドワーフの元に生まれたて半魔族。
かなり珍しい部類ではあるが、多少は存在する。
勇者一行が彼女を仲間に入れたのは、彼女のドワーフとのしての能力。
武器などは純血のドワーフに依頼するが、彼女に作らせるのは、家電製品。
日本で暮らしていた時の物だ。
電気の変わりに魔石を使えば、彼女の能力ならほとんど再現出来た。
彼らにとっての、彼女の存在価値はそれ一点だった。
次の日、王城に呼ばれた勇者一行。
ダンジョンの撃破の報酬と共に依頼される次の依頼。
先日出来たばかりの新しいダンジョンへの攻略依頼。
そのダンジョンの場所は死の森。
この世界で生まれた者なら即断る依頼だが、異世界から来た勇者達。
そして、一度ダンジョンを攻略した自信から依頼を受ける。
自信に道溢れた勇者一行。
青い顔をした小さな少女を除いて。