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886 やっぱり兄弟

 地球:202X年11月11日

 火星:1年6月3日


 ~ブリタニアの視点~


 生命神さんが治療を始めてから約10分が経った。

 紗也華はイブが光一の隣まで運び寝かせた。ベッドに入ると気のせいか、紗也華は少し幸せそうな表情になった。


「よし!お待たせ!治療は終わったよ。皆、お疲れ様」


「生命神さん、ありがとう。お疲れ様」


「こちらこそブリタニアさん、ありがとう。その言葉に救われる思いだよ」


「それは良かったわ」


「イブさん。光一くんと紗也華さんには、注射して僕の部下を入れた。後は朝の9時からで良いから栄養を点滴してあげてほしい。排泄は必要ないよ。僕の部下が排泄物を処理するから」


「分かったわ。対応ありがとう」


「うん。それじゃ皆、僕は帰るね。皆もゆっくりと休んでよ。では」


 そう言うと生命神さんは去って行った。


「皆、ウィンドウとアクアオーラが戻って来るわ。皆も疲れたわよね?ゆっくりと寝て」


「……お待たせ。アクアオーラ帰還よ」


「ウィンドウもただいま」


「2人共おかえりなさい。大丈夫?」


「ブリタニアさん。私とアクアオーラさんは大丈夫よ。心配ありがとう」


「良かったわ」


「皆、帰りましょう?私も充電するわ。ウィンドウとアクアオーラ後はお願い」


「イブお母さん、ウィンドウ達に任せて!皆も早く寝て」


「そうね。私も眠いわ」


「ブリタニアさん。そうですね。私も寝るとします。それでは失礼します」


「ナビィもおやすみなさい」


「エイドもー!ばいばーい」


 皆、帰ったわね。


「孝次さんは大丈夫?」


「僕は平気。いやぁ神の恨みは怖いね。人の恨みも怖いけどさ」


「そうね。私は光一もだけど紗也華が心配だわ」


「そうだね。僕も紗也華さんが心配。さて、寝よう。はぁ報告するのが面倒だな」


「ふふっ。お疲れ様。色々と起きてから考えないとね。それじゃおやすみなさい」


「うん、おやすみなさい」


 私はベッドに入ると疲れていたのかすぐに眠りについた。



 私と孝次さんは朝の9時頃に目が覚めた。というかイブに起こされた。


「2人共、疲れているのに起こして悪いわね」


「いや、僕は眠り過ぎたよ。普段の疲れが出たかな?」


「私は大丈夫よ。どうかした?」


「話があるの。孝次さんどうする?今日も泊まる?」


「上司に報告して、その反応次第だね。出来れば兄貴と紗也華さんの意識が戻るまで泊まりたい。まぁ暇だから研究でも……とは思ったんだけどね。こう見えて心配でね。集中できそうにないんだ」


「ウィンドウから聞いたわ。報告するのが憂鬱なんでしょ?私も一緒に行くわ」


「え?良いの?」


「もちろんよ。それで病室を移ろうと思っているの。特別個室Sにね」


「あれ?そんなのあったっけ?」


「最近、完成したのよ。1泊35万円というのは変わらないわ。この病室より面積が少し広くてね。会議室兼応接室がないの。そしてベッドが3つある。この病室はダブルサイズのベッド1つとセミダブルのベッドが1つ。でも特別個室Sはクイーンサイズのベッド1つとセミダブルのベッドが2つなの」


「それなら孝次さんもベッドで寝られるわね」


「ありがとう。正直、助かるよ」


「それは良かったわ。部下が手続き済ませたから移動しましょう?ウィンドウとアクアオーラ。光一さんと紗也華さんをお願い」


「了解よ。お姫様抱っこね」


「アクアオーラも分かったわ」


「それじゃ行きましょう。ついてきてね」


 私達はイブのゲートで部屋を移動した。


「うわー!また凄い豪華な部屋だねー。病室とは思えないよ」


「トイレも2つあるわ。普通のトイレと付き添い用トイレね。もちろん。どちらもオシャレなデザインで清潔感があるわ」


「そうなの?それじゃ私は付き添い用トイレを使用するわ。孝次さんは普通のトイレを使う?あっ!私は一緒でも良いのだけど、気になるかなと思って」


「お気遣いありがとう。そうさせてもらうよ。ブリタニアさんが嫌とかじゃなくてね。僕も男性だからさ申し訳ないというかなんというかね」


「そう思う必要はないんだけど……まぁ良いわ。中央に大きなベッドがあるのね?私は光一のいる方。光一の右手側のベッドで寝るわね」


「うん、了解。僕は紗也華さんの隣か。良いのかな?」


「あなた襲ったりしないでしょ?良いのよ」


(ピンポーン)


「来たわね」


「……失礼します。点滴をしますねー」


「うん。お願いね」


 複数の病院スタッフさんが入って来た。看護師さんかな?


「副大統領。でも良いんですか?うちのスタッフが対応して」


「看護師長さん。えぇもちろん。信用しているから大丈夫よ」


「ありがとうございます」


 数分で作業が終わり、部屋から去って行った。


「ふふっ孝次さん。来たわ」


「え?」


(ピンポーン)


 誰が来たんだろう?


「……おー!小鳥遊くん、お疲れ様ー」


「舘野先生!?ど、どうしてこちらへ?」


「まー教授だから情報が入って来るんだよ。様子を見に来たが……その前に副大統領。それとも国王補佐官の方が良いですか?いつもお世話になっております」


「イブで良いわ。あー様は止めて。こちらこそいつもお世話になっているわね」


「それでは失礼してイブさんとお呼びしますね。イブさん、そちらの方はどちら様でしょうか?」


「王妃のブリタニアさんよ」


「大和王国第一王妃のブリタニアよ。よろしくね。私もブリタニアさんで良いわ」


「ありがとうございます。それでは失礼します。ブリタニアさん、はじめまして。大学で教授をしております舘野厚志と申します。いつもお世話になっております。よろしくお願いいたします」


「舘野さんね。覚えたわ。改めてよろしくね」


「はい」


 ウィンドウとアクアオーラも自己紹介をした。

 2人は光一と紗也華の様子を見ている為、会話には加わらない。夜中の反省もあり、すぐに対応する為だ。


「私から状況を説明するわね。お時間は大丈夫?」


「イブさん、私の時間は大丈夫です。それでは状況について、よろしくお願いいたします」


「分かったわ。長くなるから席に座りましょう?」


 そうしてイブによる状況説明が始まった。舘野さんは終始、真剣に話を聞いていて、良い人なんだなって思った。

 イブの説明が終わると難しそうな表情になった。


「そうですか。長期戦になる可能性が高いと思われますか?」


「私はそう考えているわ。もう亡くなる可能性はないと確信しているけどね。私はこの状況で希望的観測をしない。むしろ最悪の事態を想定して、長期戦を覚悟しているの」


「分かりました。長期戦となると地球にある本国に帰国されたらどうですか?うちの病院よりも設備が充実しているでしょうし、費用面でもその方が良いかと思いますが」


「それも考えたんだけどね。場合によっては病院側に、マスコミ対策の協力をお願いしようと思っているのよ。帰国すると本当に入院していても、その事実の証明が難しいからね」


「それでしたら大和王国と何の関係もない他の病院の方が良いのではないでしょうか?」


「申し訳ないけど他の病院は信用出来ないのよ。この病院は大和王国国営企業のセキュリティシステムを導入している。だから良いの。通信や会話を盗聴される心配もなければ、悪意のある人物により点滴に何かされる心配もないから。マスコミが何かいちゃもんをつけて来ても問題ないわ。こちらは事実なんだから」


「確かに。患者様は国王陛下や王妃陛下ですから、セキュリティが最重要ですね。失礼しました」


「迷惑をかけて申し訳ないわ」


「いえ、とんでもありません。我々に出来る事があれば何でもおっしゃってください。最大限、協力をさせていただきます」


「ありがとう。助かるわ」


「それにしても小鳥遊くんも心配だろう。研究室の事は気にしなくて良いから、国王陛下が快復するまで傍にいてあげるといい。いつも色々と仕事や研究を頑張って来たからな。気は休まらないかもしれないが、身体を休めなよ。研究室の方には私から話をしておくから」


「ありがとうございます。ご迷惑をおかけします」


「なーに気にする事はない。連絡は何か動きがあればで良いからな。それから君はいつも頑張っているからな!これで美味いものでも食べて少しでも元気を出してくれ。釣りはいらん。受け取ってくれ。その方が俺も嬉しい」


「そ、それではお言葉に甘えて頂戴します。本当にありがとうございます」


「おー、いつも頑張っているご褒美だ。ブリタニアさんもお気を確かに持ってください」


「うん、ありがとう。でも私は大丈夫よ。困った夫でね。よくある事なのよ。だから慣れているの」


「強い心をお持ちなんですね」


「まぁね。それだけ色々と苦労してきたの」


「そうですか。私は国王陛下が羨ましいです。私の妻なんて……おっといけない。つい口が滑りましたね。私はこの辺で失礼いたします」


「ふふっありがとう。また会えると嬉しいわ。社交辞令じゃないわよ?」


「ブリタニアさん、ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。副大統領もお疲れ様です」


「ありがとう。また何かあったらよろしくね」


「はい。それじゃ小鳥遊くんも元気でな」


「舘野先生、お忙しい中ありがとうございます。はい、元気で頑張ります」


「おー。それでは皆様またお会いしましょう。失礼します」


 そう言うと舘野さんは去って行った。


「良い人だったわね」


「ブリタニアさん。そうでしょ?だから僕はここを選んだんだ。ブリタニアさん、1万円もらったけど昼食はどうしようか?」


「私は昼食はカツ丼。夕食は寿司が良いと思うけどどうかしら?」


「良いね。イブさんお願いするよ」


「了解よ」


「イブ、結婚式はどうしようか?」


「今日は様子を見ましょう。もしかしたら、光一さんは結婚式に間に合わせようと、頑張っているかもしれないから」


「そうねイブ。ところで優紀は?」


「今日は午前中だけ仕事。本国から応援で1人、エテルノに来てもらったからね。仕事の引き継ぎをしているわ」


「それじゃ明日からは優紀も孝次さんといられるのかしら?」


「そうよ」


「孝次さん良かったわね」


「イブさん、ありがとう」


「良いのよ」


「ところで孝次さん。優紀と遊びたいとか思わないの?大丈夫?」


「ひゃいっ!?ブリタニアさん?朝から変な事を言わないでよ」


「どうなの?」


「今はそういう状況ではないからね。落ち着いてから優紀と話してだね」


「そっか。やっぱり光一が心配?」


「まぁね。でも紗也華さんの方が心配」


「そうねー。生命神さんが治療したから大丈夫だと思うけどね。それでも心配だわ」


「……あっ!やべっ!両親にも報告しないと」


「あー。それなら私がお母様に電話したわ。何の問題もないわよ。お父様には家に帰って来たら話すって言ってたわね」


「それなら良いか」


「移動しましょう?ウィンドウとアクアオーラと合流したいわ」


「そうだね」


 私達は移動した。光一と紗也華は穏やかな表情で眠っている。


「ウィンドウとアクアオーラ。ずっと見ていてくれてありがとう」


「いえ、ウィンドウは見ているだけしか出来ないから」


「アクアオーラもよ」


「十分に助かっているわ」


「あのー。今更だけど生体情報モニタを使ったらどう?昨日は意識があったけど、寝たきりになったからね」


「ピッピとなる音がうるさいかなと思ったのだけど」


「あー同期音だね。設定でオフに出来るよ」


「そうだけどオフにしても良いの?」


「使わないよりは良いと思うよ。アラーム音とは別で設定可能だからね。ずっと見ているのも疲れるでしょ?」


「ガーン!ウィンドウはリストラになるのね」


「アクアオーラとウィンドウさんの存在意義が……なくなるの?」


「2人共。あなた達は道具ではないでしょう?生きている。2人の代わりに道具が使えるのならそれが一番だと私は思うわ。あなた達は十分に頑張った。少し休みなさい」


「でもブリタニアさん、私達の存在意義は?」


「アクアオーラ。あなたは道具でも可能な事を存在意義だと言うの?私は違うと思う。また光一にもしもの事があったら対応する。これは道具には出来ないでしょ?私にも出来ないわ。あなた達だから出来るの。ねぇ?アクアオーラ?」


「ブリタニアさん、なに?」


「私、ここにいて何か役に立っている?2人はエテルノだから役に立ちたいと思うのは分かる。なら聞くわ。私は何の役にも立っていないの?私は光一の傍にいて声をかける事しか出来ないわ。そんな私は役に立っていないかもしれない。だとしたらこの場にいてはいけないの?」


「ごめんなさい。私は勘違いをしていたわ。光一さんと紗也華さんが頑張っている時に何をやっているんだろうな私。ブリタニアさんも役に立っていると私は思う。頑張っている2人と皆の心の支えになっているわ」


「私、心の支えになっているかな?どうなんだろうね?」


「なっているわ。でもそうじゃないわよね。2人の傍にいられるだけで幸せな事なのよね。他の皆も心配で傍にいたいはず。だけど我慢している。この場にいさせてもらえる事に、私は皆にもっと感謝すべきね」


「ウィンドウも反省したわ。騒いでごめんなさい」


「謝る必要はないわ。あなた達はそういう思考回路になっているだけなのだから。分かってもらえればそれで良いの」


「僕なんて本当にこの場にいるだけ。なーんの役にも立っていないよ。でも良いじゃん。心配だから傍にいたい。それだけでこの場にいて良いんだよ。それを許してくれる周りの人には感謝しないとだけどね。それに2人は大切な事を忘れているよ」


「孝次さん、なんでしょうか?アクアオーラには分かりません」


「愛だよ愛。2人はさ。愛する人がいるでしょ?そして愛してくれる人がいるんでしょ?それだけで存在意義があるじゃない。更に2人には子どもがいる。お腹の中にね。ママが自分の存在を否定しちゃったら、子どもは不安になるんじゃないかな?愛する夫と子どもがいる。存在意義としては十分でしょ?」


「そうでした。私は大切な事を忘れていました。私はまだまだ未熟ですね」


「ウィンドウも全く同じです」


「良い意味で君達はまだ若い。だから未熟でも良いんだよ。成長していこうね」


「「はい!」」


「良い返事だ」


 何だろうな。孝次さんもどこか光一と似ている。やっぱり兄弟ね。

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