849 システム監査神と色欲の神
1年10月21日
数秒後、僕を包んでいた光は消えた。
「おぉ!光一くん、おめでとう!これで世界神じゃな!まぁ、ワシがいる間は気楽に好きにしてもらえれば良い」
「国王でもありますし、世界神としても地上で異常がないか、ボットに監視させたりはしようと思います」
「君は相変わらず真面目じゃのぉ」
「ちなみに神の力って使っても大丈夫ですか?つまらないので未来を見たり、タイムリープしたりはしませんけど……」
「そうじゃのぉ……それなら構わんが、使う時は事前にワシに相談してもらえると嬉しい」
「分かりました」
「それでは次は私ですね?システム監査神に私はなります!」
魔法神ちゃんがそう宣言すると数秒間、光に包まれた。
「魔法神よ。おめでとう!これでシステム監査神になり、上級神の仲間入りじゃ!いやぁ非常にめでたい事じゃ!あっ、そうじゃった!既にワシと光一くん、魔法神を世界管理システムの管理者に設定済みじゃ。後はよろしく頼む」
「創造神様、承知しました!ボットの準備もありますので一旦、失礼致します!」
「うむ、分かった。よろしくの」
「はい!失礼致します!」
そう言うと魔法神さんは消えた。
「それじゃ光一さん、ナビィとエイドちゃんでグラウベ聖国に魔法神さんの銅像を設置してくるわね」
「うん、2人ともよろしくね」
「ナビィに任せて!」
「エイドも頑張る~!」
ナビィとエイドも銅像の設置に向かった。
「ところで生命神さん。どうして僕が世界神になる事を条件にしたの?」
「ん?あぁ、それはね。光一くんは火星神であり、創造神様よりも偉い神様だよね?それはこの世界でも通用する。だけど、この世界での役職ではなく、この世界に貢献出来るものではない。そして、光一くんはこの世界でエテルノの神だけど他は内定の状態」
あー。そういう事ね。つまり立場的には中途半端だと。
「今回、世界神になる前から上級神として扱われていたけどね。役職は1つ。今まではそれで良かったけど、そこに役職が2つある上級神が現れたらさ。どちらの方が立場が上なのかって話になる。それを回避したかったから光一くんに世界神になってもらったの」
「理解したよ。世界神になる事で……正式なって言ったらおかしいけど、まぁ僕は今回、正式な上級神になったという事だね?」
「まーそういう事だね。多分、魔法神ちゃんも同じ理由だと思うよ」
「光一、そういう事ならいっその事、色欲の神になっちゃいなさいよ」
「いやいや、ブリタニア。それは早くないかな?」
「光一くん、別に良いじゃん。何の問題もないでしょ?確か子どもが産まれたら、かなりの神力が入って来るはずだよ」
「えっ?そうなの?いや、だからと言って無理に妻を妊娠させる気はないし、これ以上は妻を増やす気もないけどさ。貴重な神力を無駄にはしたくないなぁ」
「光一、私は別に構わないわ」
「紗也華、だーめ!子育て経験のあるレーネが言っていたでしょ?1年間は妊娠せずに子育てに専念した方が良いって。子どもの為にも止めておこうね」
「はーい。でも光一、色欲の神になりなさい」
「それじゃ、僕は色欲の神になります!」
宣言したら僕は再度、数秒間だけ温かい光に包まれた。
「お~!光一くん、おめでとう!何度も言っているが無理だけはしないようにの。無理したら解任するから気をつけるように」
「ありがとうございます。気をつけます。……ん?身体のダルさが改善された?……お?約100万の神力が約180万に増えている?何で?」
【神力が約180万に増えた理由】
色欲の神になると過去2年間までさかのぼって、神力を手に入れる事が出来る。
そして、色欲の神は妊娠をする、もしくはさせると、特別手当として子ども1人あたり1万の神力を手に入れる事が出来る。
光一様の場合は、現在36人の妻と2人のエテルノに、子どもを2人ずつ妊娠させている。
その為、76万の神力が入って来た。
ちなみに無事に出産をすると子ども1人あたり100万の神力が手に入る。
注意事項。
例えばAさんが1月1日に出産したとする。出産から1年後の1月2日以降でないと、Aさんが妊娠をしても特別手当は支給されない。
同じく例として、Aさんが出産から1年未満でも、出産から1年半経っているBさんを妊娠させたら、問題なくBさんを妊娠させた事による特別手当が支給される。
常にお相手の女性の意思を尊重し、感謝の心を忘れる事なく、大切にする事。子どもを大切にする事が色欲の神には求められる。
ルール違反をすると自動的に処分の対象となるので要注意。
例えば……何がとは伝えないが、一時的な機能不全から切断まで処分は様々。……以上。
ヒィッ……アメとムチかよっ!聞いてもいない注意事項まで教えて来やがって!注意されなくとも女性が傷つく事はしないよ!子どもも大切にするよ!
「ん?光一くん、どうしたの急に真っ青な顔をして?」
「光一、大丈夫?」
「あー、生命神さん、ブリタニアも……大丈夫だよ。世界管理システムなのかな?神力が約180万に増えた理由を教えてもらったんだけどね。後半の内容が怖すぎてね。この場にいる全員にメールで内容を送るよ。イメージして……送信」
「おっ!光一さんから僕にメールが来た。へー。こんな感じなんだ。どれどれっと。……あー。光一さん。お疲れ様」
「のぞみちゃんにも届いたのね?私も届いたわ。何だか面白いわね。……内容は酷いけど…フヒッ」
「のぞみとイブにも届いて良かったよ。それからイブ?笑い事じゃないからね?」
「あー光一くんなら大丈夫だと思うけど……最悪は僕が生命神として治してあげるよ」
「生命神さん、ありがとう。でも大丈夫。僕は女性を大切にして傷つけないし、子どもも大切にするから」
「光一、やっぱり1年間は妊娠せずに子育てに専念した方が良さそうね」
「うん、ブリタニア。そうだね。子育て一緒に頑張ろうね」
「そうね。よろしくね」
「こちらこそ」
いや、チョット待て。女性の意思を尊重等は良いが、「子どもを大切にする事」の定義がわからん。何が処罰対象になるんだ?
【子どもを大切にする事の定義と処罰対象】
子どもを大切にするとは、育児放棄や虐待等の明確に問題のある事をせず、大切に育てる事を言う。
したがって、定義にある誰が見ても明確に問題のある行為をしなければ、処罰の対象にならない。
全く仕事をするなとまでは要求しない。普通に生活をしていれば問題ない。……以上。
分かる様な分からない様な感じだけどまぁ良いや。深く考えても仕方ない。
「光一くん、心配せんでも君なら大丈夫じゃよ。天界のシステムはあまり厳しくないからの。特別手当を目当てに無理しないようにという抑止力の為の注意事項じゃろう」
「そうですね……そうであってほしいものです」
万が一、創造神様や生命神さん等の第三者からみても不当な処分をくらった場合、どうすれば良いんだろ?
【不当な処分の場合】
第三者からみても不当だと判断される処分を受けた場合、それは世界管理システムに欠陥がある可能性が考えられる。
その場合、システムを修正可能な担当の神様に連絡し、修正してもらう事をオススメする。
なお仮に修正されたとしても、処分の回復までは行われない為、悪しからず。
しかし修正後、過去2年間までさかのぼって不当な処分がないかを調査する。
調査の結果、不当な処分があった場合、慰謝料の様なカタチで神力が支給される。
その神力の一部を生命神様に渡し、治療してもらう事をオススメする。
注意事項。
処分の大半は痛みを伴う。特に切断は激痛である。例え機能不全処分であっても痛みを伴う仕様。
慰謝料を目当てに世界管理システムを改悪し、わざと「不当な処分」を受け、不正受給をしないように。
いやいや、悪しからずじゃねーよ!治せよ!それから!言われなくとも不正受給なんてしないよ!
大体、システム監査神でもある魔法神ちゃんが、そんなシステム変更を認める訳がない。
ないとは思うけどさ。仮に認めてくれたとしても軽蔑されるし、恥ずかしいわ!
生命神さんに治療をお願いするのも恥ずかしいっての!繰り返しになるがお前が治せよ!
「光一、急に何に怒っているの?」
「あー、ブリタニア。説明するのが面倒だから、この場にいる全員にまたメールを送るね。イメージして……送信っと」
子どもを大切にする事の定義と処罰対象、不当な処分の場合についてと、僕の感想もあわせて送っておいた。
「あっ!届いたわ。……ふふっ!私、このシステム好きになったわ」
「だからイブ~!笑い事じゃないから!」
「光一、私は光一が不当な処分を受けてもね。システムに怒る事はあっても、光一を笑ったり軽蔑したりしない。だってツライだろうから。恥ずかしいと思う必要もないわ。隠し事をされる方が嫌。あなたがツライ時に何も出来ないのが嫌。だから、もしもの場合は教えてね」
「光一。紗也華の言う通りよ。夫婦間での隠し事は駄目。私達はあなたを愛しているから安心して」
「紗也華とブリタニア、ありがとう。でもイブとのぞみは笑うから教えない!」
「光一さん、僕は笑っていないじゃないかー。ほら、イブちゃん謝って!」
「分かったわ。光一さん、ごめんなさい。でも、光一さんを笑ったわけではないの。この性格が悪そうなシステムを笑ったのよ。私とのぞみちゃんも理解しているつもりよ。だから、もしもそういう症状が出ても笑う事や軽蔑する事なんてないわ。恥ずかしいと思う必要もない。何も恥ずかしい事ではないわ。だから、教えてね」
「まぁ、もしかしたら不当ではないかもしれないから、もしもの場合は相談に乗ってもらえると嬉しい」
「光一さん、僕達に任せてよ」
「あー。光一くん、僕は生命神だから大丈夫だよ。恥ずかしがる必要はないから。切断は直接、見ないと厳しいけど、機能不全なら見なくても治せるから安心して」
「うん、生命神さん。もしもの場合はよろしくね」
「う~む。ワシは思うに処分を実行する前に、情報通信技術神の確認とシステム監査神の承認を必要とすれば良いのではないかの?」
「それはそれで恥ずかしいんですが……ま、まぁ。不当な処分を受けるよりはマシですね。それでお願いしたいです」
「……戻りました~!話は聞いていたので何となくは分かりますが、私にもメールを送ってください!」
「あっ!魔法神ちゃん、おかえり~。分かった。今、送るね。イメージして…………送信っ!」
「ありがとうございます。……あー。そういう事ですか。確かにシステムが勝手にやって良いことではないと思います。情報通信技術神にシステムを改善させましょう!」
「まずは、魔法神よ。お疲れ様。そうじゃな、悪いがよろしく頼む」
「はい!創造神様、お任せください!慣れていますから」
「ただいま~」
「エイドもただいま~」
「魔法神さんの銅像をグラウベ聖国のいつもの場所に設置して来たわ」
「いやぁ~良い仕事をした。エイド、満足」
「おっ!ナビィとエイド、お疲れ様」
「私の銅像ですか!?ありがとうございます!」
「おー!2人ともお疲れ様。それでは情報通信技術神を生み出すとしよう。魔法神よ。準備は良いかの?」
「はい!大丈夫です!お願い致します!」
「うむ。それでは生み出そう」
目の前に光の球が現れて徐々に人の身体に変化していく。
さて、どんな神が生まれるのだろうか?





