824 生命神と人種差別について生配信
1年10月14日
「あっ!生命神だよ~!光一くん、邪魔しに来た訳ではないよ」
「生命神さん、心を読まないでほしいな」
「いや、心は読んでいないよ。顔に出てたの!『うわぁ~もしかして邪魔されるのかなぁ?面倒だなぁ』ってね!」
「ブリタニア、僕、そんなに顔に出てた?」
「ものすっごい出てたわね。『うわぁ~面倒』ってね」
「あっ!そうなの?まぁ良いや。それじゃどったの急に?」
「いやねぇ?僕が創造神様と対応を協議していたらね?エルフの神と獣神が来たんだよ。アンケート結果にブチ切れてね」
「ほう。色々と気になるけど続きをどうぞ」
「どうも。人種差別が酷い状況だと明らかになってね。エルフの神も獣神もブチ切れた。人間からの一方的な差別なら、まだ良かったんだけどね。まだね!まだ!良くはない!だけどお互いにって発覚したから『我々の種族はここまで愚かなのか』とブチ切れちゃったの」
「へ、へー。そ、それで?」
「うん。『もう我慢出来ない!制裁すべきだ!』ってなったから僕達は困った。いや、チョット待ってくれよと。これ以上、人口が減ったら困るんだと」
「えーっと。制裁とは?」
「差別をしているエルフやハーフエルフの息の根を止めたり、雷を落としまくったりとかかなぁ?」
「そ、それ、天界の法的にはどうなの?」
「グレーゾーンかな?理由がちゃんとあるからアウトとは言えない、でも、やり過ぎ感はあるから。……とは言えエルフの神の場合は。ある程度、認められているんだけどね。エテルノを除く他の種族と違って、寿命がないから。他の種族だと世代交代すれば解決する問題というのが、エルフやハーフエルフの場合は起こりにくい。いわゆる老害というものだよ」
「つまり、法は犯していないけど、老齢による弊害が生じたと判断したら急死させると」
「そういう事だね。怖い話に聞こえるかもしれないけど、人間だって病気で急死する事はあるし、そもそも寿命があるからね。エルフやハーフエルフが寿命がないことで生じる問題を管理するのもエルフの神の仕事なんだよ。今回の場合、若い世代の殆どが問題ないけど、年配の古い考えの人がある程度いるという感じなのかなぁと思っている。であるならば、時間が解決する問題かもしれない」
「だけど、エルフとハーフエルフは寿命がないから『時間が解決する』というのが起きにくいと。だからエルフの神にはある程度の権限が与えられている訳だね?そしてブチ切れてしまったと」
「はぁ……そういう事。とりあえず事前に相談してくれて良かったよ。エルフの神と獣神には待ってもらった。いや、本当に人口が減るのは困るんだって。獣神は『エルフの神がやるのなら、ワシだってやっても構わないだろ!』と言うしさ」
「ご苦労さま。それで……愚痴を言いに来たのかな?」
「半分正解だけど半分は違うよ。ここからが本題、創造神様と対応を協議していた……と最初に言ったでしょ?」
「あー。言っていたね。それがどうかした?」
「も~察しが悪いなぁ。僕も創造神様も人種差別については問題視しているという事だよ」
「あーなるほどね。察しが悪くてゴメンね。それで問題の対応については?」
「まぁ謝る必要はないんだけど、置いておいて。対応はとりあえず君に任せる。神々がブチ切れたとか言っちゃっても良いから。とにかくよろしくね。もしも、改善されなければ、エルフの神と獣神が動く。でもこれは獣人やエルフ、ハーフエルフだけの問題ではない。そこで、法務神とも相談した。そして『バランス調整』を行う事を決定した」
「あー。察しが悪い僕でも分かったよ。つまり、年配の古い考えの人達が一斉にお亡くなりになると」
「そういう事だから本当によろしく頼むよ。……あー!光一くんに押し付けて、また倒れられると困るな。分かった。僕も演説に参加するからよろしくね。なぁ~に。説得に失敗しても光一くんのせいではない。愚かな人類のせいだ。気に病む事はないさ」
「それじゃよろしく頼むよ。はぁ~。面倒な仕事が更に面倒な事になった。どうやって演説しようね」
「あぁ、それなら僕が神の力を使うよ。光一くんがさっき言った対象者に冒頭だけ伝える。生配信するから必ずそれを観るようにってね。そしてイブちゃんに生配信してもらう。生配信後は動画として残してね」
「了解よ」
「それじゃ行こうか」
「それでは皆さん、一旦失礼します。ブリタニア、行こうか」
「うん!」
僕達は挨拶を交わすとイブの案内でスタジオに移動した。おぉ~!緑の背景だ!おー!大和王国の台をイブが設置してくれた!
「それじゃ始めようか。オンラインゲームで言うゲームマスターメッセージを使うよ。僕は準備完了」
「僕も準備出来たよ。あー!生配信って緊張するなぁ~!」
「それじゃ生配信を始めますね。5,4,3,2,1……」
「ハロー!皆、聞こえているかな?生命神だよ。驚かせてゴメンね。今、生配信をしているから必ず観るように!重要な事だからね。それじゃ生配信で会おう。……神の力を使ったメッセージを終了したよ。のぞみちゃん、アクセス数はどうかな?」
「急激に増えているよ。落ち着いたら合図をするからね~」
「それじゃそれまで雑談でもしていようか。光一くん、色々と新しいサービスを考えているんだよね?面白そうだなぁと思ってみているよ」
「まぁね。国王でもあるから色々と考えるよ。まだ公表できる段階ではないけど、ザックリとだけ。建設中の大きな遊園地みたいなもの。それから今、知人にテスト導入してもらっているけど、食品を販売しているお店向けの、新サービスだね。後は情報技術、ITとして技術者向けの新サービスを検討しているよ」
「他にも考えているけど話していないものってあるのかな?」
「映画をもっと楽しんでもらう為の施設とか考えてはいるね」
おっ!のぞみが合図をしている。
「おー!良いねぇ!……おっと合図をしてもらったから本題に入ろうか」
「皆、おっはよー!これでも生命神だよ。それじゃ光一くん、どうぞ」
「皆、おはよう。今回は国王としてでは無く、エテルノの神として話すよ。途中、国王になるかもだけどね」
「僕は友人として仲良くさせてもらっているから、光一くんと呼んでいるけどね。光一くんはこの間、この世界のご先祖様にあたる、光一くんの元いた世界に遊びに行ったんだけどね?色々とあってその世界の一番偉い神になったんだ。だから立場的にはこの世界の創造神様よりも上なんだけど、まぁ~光一くんは謙虚だからね。今も創造神様って呼んでいるよ。いやぁ友人が大出世して僕も嬉しいね」
「今回、その話をする必要、あった?」
「あるよ?光一くんの立場を改めて明確化しておかないと、舐められても困るからね。そう。重要な発表はこの件ではないんだ。先程、行われたアンケートの結果から一部の国と地域を除き、人種差別が深刻な状況だと分かったんだ。生命神としての立場から言わせてもらう。全ての種族は創造神様が生み出したり、種族として認めたものだよ?人種差別をするという事はそれを否定する事を意味する。これは一体、何事かな?」
「一部の国と言うのがグラウベ聖国で、地域が大和王国の本体だね。今回のアンケート結果に神々は、分かりやすく言うとブチ切れた。特に獣神やエルフの神」
「そう。『我々の種族はここまで愚かなのか』とブチ切れちゃったの。そして『もう我慢出来ない!制裁すべきだ!』と主張した。僕と創造神様は説得をして一旦、待ってもらった」
「あー。制裁って分かりやすく言うと、人が大量にお亡くなりになる事を意味するよ。人種差別をする様な人が対象者だね」
「エルフの神と獣神なら、獣人やエルフ、ハーフエルフではない我々は関係ないとか思った?大間違えだよ。この演説を聞いても状況が改善されなければ、エルフの神と獣神が動く。でもこれは獣人やエルフ、ハーフエルフだけの問題ではない。そこで、法務神とも相談した。そして『バランス調整』を行う事を決定した」
「先日、魔法のバランス調整を行ったよね?アレと同じだよ。簡単に言うと人種に関係無く、差別をする全ての人がお亡くなりになる。これを生命神さんは『バランス調整』と言ったんだ」
「そういう事だよ。人種毎にそれぞれ特徴はあるけど、皆、同じ人。『我が種族は優れている』とか頭の悪い考えは止めてね。あのさぁ。頼むから、仲良くしろとまでは言わないけど、差別は止めようよ」
「あのねぇ?リーベ王国民。ハーフエルフが次期国王になるのがそんなに嫌?ハーフエルフでも良いじゃない。ハミルトン王子は頭が良いし何が問題なの?リーベ王国の王族の血を継ぐ者な訳だし何の問題もないでしょう。愚痴になるけどね。僕なんか神だから僕の子どもは僕の血を継がないんだよ。のぞみ?義務教育で遺伝子を教えている?」
のぞみは手で大きく丸を作った。
「……教えているのね。ありがとう。それじゃ都合が良い。僕の子どもは神の子になる。だから妻の血、遺伝子に合わせる様になっている。例えば妻がエルフならハーフエルフでは無くエルフが生まれる。妻がハーフエルフならハーフエルフが。ドワーフならドワーフの子どもが生まれる。この性質上、僕の血、遺伝子は子どもに受け継がれない。だから子どもは母親に似る事はあっても僕に似る事はないんだよ」
「あー。そうだね。生命神としてそれは申し訳ないけど仕方ないんだ」
「うん。分かっているよ。ただね、リーベ王国民は何が不満なのか不思議でね。血の繋がった王族なのに何が不満なんだと」
「そうだね。アルバート国王が愛した相手がエルフだっただけ。そして2人の間に子どもが生まれた。子どもはハーフエルフだけど何が問題なんだろうね?リーベ王国は人間の国だからとか勝手に決めつけているのかな?王国だから王が支配する国なんだけどな。そりゃ国民も大切だけど、国民にエルフやハーフエルフ、獣人がいても何も問題ないじゃんね」
「そう。愚痴の続きね。僕の血、遺伝子は子どもに受け継がれないけど、僕の子どもである事には変わりない。だけど、これは既に家庭内で話し合った事だから発表すると、大和王国の次期国王はまだ生まれてもいないけど、第九王妃の紗也華との子どもにする方針でいる。それは僕と紗也華は性格や趣味等が似ているから、子どももそうなるのではないかという期待から決めた事。今後、変更する可能性もあるけどね。それに僕の血、遺伝子は子どもに引き継がれない。それならせめて祖国の、僕の元いた世界の血を受け継いだ子にしたいという思いもある。これは人種差別によるものではない!僕の血、遺伝子が引き継がれるのなら、次期国王は第一王妃のブリタニアとの子どもにしたからね」
「でも、光一くんとブリタニアさんの子どもはリーベ王国の国王になる予定でいるんだよね?」
「そうだね。だから僕の血、遺伝子が引き継がれるのなら、僕とブリタニアの娘を女王にする考えでいたね。……それで?将来的には僕とブリタニアの子どもが、リーベ王国の国王になる予定でいる。ハーフエルフだけど何か問題がある?ブリタニアはリーベ王国の血、遺伝子を引き継いでいるからね。僕とブリタニアの子どもだって、ちゃんとリーベ王国の血、遺伝子を引き継いでいる。何も問題ないでしょう?」
「うん。僕も問題ないと思うよ。……良いかい?人種差別問題について、我々、神々は問題視しているどころか、怒っている。もしも、考えを改めず人種差別を続けるのであれば、悪いけどこの世から消えてもらう。……理不尽?横暴?そりゃ僕もこんな事はしたくないけどさ。仕方ないじゃない。この世界を創られた、創造神様のお考えを全否定するのだからね」
「ヒンメル王国の皆さん、シルヴィー女王がハーフエルフ差別禁止法を制定した際に、『神界でも人種差別は問題視されており、これ以上くだらない差別をするようなら天罰を食らうと思いなさい』と言っていたでしょう?普段、温厚な神も怒る時は怒るから気をつけようね」
「そういう事で。良いかい?考えを改める事をオススメするよ。それじゃ以上で失礼するね」
「それじゃ、この後すぐにアンケートをとるね。嘘をついても神にはバレるから正直に回答した方が良いよ?それじゃバイバーイ」
「……はい。カットー。お疲れ様です」
「それじゃ僕は帰るね」
「あれ?結果を見ていかないの?」
「天界から見させてもらうよ。それにアレだけ脅せば大丈夫でしょう?」
「そっか。まぁそうである事を願いたいね」
「それじゃ皆、お疲れ様。まったね~」
「うん、お疲れ様。来てくれてありがとう」
「いえいえ~」
(バンッ)
生命神さんはそう言うと去って行った。





