703 天気予言アルゴリズム?
202X年6月22日
「イブ、日本に動きはあった?」
「この後に動きがある予定よ。各政党は組織を立て直して選挙準備をしているわ。与党側としては憲法第7条の拡大解釈で対応するみたいね。『天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。』となっているでしょ?」
「そうなの?流石に条文までは覚えていないっす」
「うん。まぁそうなの。内閣は消滅したから『内閣の助言と承認』は不可。よってその点はないものとして『天皇は、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。』と解釈するみたいよ。そして衆議院の解散をする。更に『国会議員の総選挙の施行を公示すること。』という条文を都合良く解釈するらしいわ」
「都合良く解釈?」
「そう。非常事態だから参議院も補欠選挙では無く総選挙をしちゃおうって考えみたいね。通常、参議院は総選挙がないんだけど憲法にあるのは『国会議員の総選挙』。これを都合良く解釈して無理矢理に両院で総選挙をするらしいわ」
「そうなの?内閣総理大臣の任命はしないの?政治的空白はマズくない?」
「選挙に集中したいからか知らないけど、組閣はしないみたいね。表向きには民意無く総理大臣を決められないってさ」
「争点はどうするの?」
「う~ん。与党側は大和王国との同盟関係を維持すべきかどうかを争点にしたいみたいだけど、野党側はこの混乱状態を招いた与党側を非難して票を稼ぎたいっぽいわね」
「……それさ。野党側にも消えた人がいたら説得力ゼロだよね」
「まぁそうなんだけどね。野党側は我々、大和王国のやり方が気に食わないらしくてね。かと言ってそれを争点にすると大敗しちゃうから誤魔化したいみたいよ」
「そうなの?それを争点にして大和王国を非難した方が票を稼げそうだけど」
「それはないわね~。光一さんを侮辱しちゃったテレビ局や新聞社が機能不全に陥って、擁護していた側しか通常営業出来ていないもの。それと調子に乗って口がすべって光一さんを侮辱しちゃうのが怖くて争点にしたくないと。だったら海外の主要メディアからも叩かれている『消えた内閣』を非難した方が良いと考えたっぽいわよ……正確に言うと海外メディアは『消えた内閣』とそれによる憲法バグを『先進国とは思えない』と言っているんだけどね。『消えた内閣』の暴言は酷い内容だからね~」
「なーるほど。でも混乱状態にあるのは日本だけではないでしょ?」
「まぁね。だけど日本ほど状況が酷い国はないわね」
「それにしても良く国会議員の動きをそこまで知っているね」
「まぁ殆どはアメリカ合衆国から教えてもらった情報ね。分かるでしょ?」
「あー流石はアメリカ合衆国。同盟国に対してもしっかり情報収集してるね」
「アメリカ合衆国政府は今の日本の状況をアメリカの安全保障上の懸念事項としているからね~。政治的空白により自衛隊の最高指揮官が不在の状態だから」
「同盟国だからこそ、そこは気になるわな」
「そういう事よ。『日本の選挙後に日本の同盟国に戻ってもらえない?』と言われたから『それは日本国民と日本政府次第です』と答えておいたわ」
「うん?イブがアメリカ合衆国大統領代行の側にいるの?」
「まぁね。同じ女性だし非常事態だから同盟国として情報連携等の協力をしましょうって事になってね。こちらからも色々と情報共有しているのよ?」
「へー。そうなんだ。お疲れ様」
「ありがとう。でも私としては楽しいし、大した負荷でもないから気にしないで」
「それなら良かった。火星の方は大丈夫?」
「何の問題もないわ。部下に任せておいてもらえれば大丈夫よ。1つお願いとしては私の身体をもう1体用意してほしいわね」
「了解。それじゃナビィよろしくね」
「はいはーい!……ほいっ!」
「ありがとう。それじゃ新しい身体の方は失礼するわね」
「う、うん。でもなぁ国王としては存在感がないのが気になるけど、火星神だからそんなもんなのかなぁ」
「まぁそんなもんでしょ?特に問題ないし」
「東京のキャパシティ的にも大丈夫なの?」
「あーそれはまだ余裕があるわね。何の問題もないわ」
「大阪府の整備をしておく?」
「それならゆっくりと進めているわよ」
「それじゃオープンする時に僕がニュース番組に出ようかな?」
「分かったわ。その時は教えるわね」
「あーそれから。異世界に帰る時に報告しようかと思ったけど伝えておくわね」
「うん?なんだろ?」
「地球の映画の輸入の件だけど許可を得たわ。ついでに大手ゲームメーカーからも過去作品の輸入許可を得ておいたわ」
「おー!それは助かる!か、火星は駄目ですかねぇ?」
「それはこれから追加で許可を得る予定よ。まだ予算に余裕があるから大丈夫だと思うわ」
「それじゃそっちもよろしくね」
「あーテーマパークを造るのもご自由にどうぞって感じだから安心して」
「あっそうなんだ?」
「うん。異世界なんて元々、得られなかった利益を地球のお金で得られて満足していたわ。あの様子なら多分、火星も大丈夫ね」
「それなら良かった」
「条件としては地球での販売はもちろんD-Systemで使わないでくれってね。地球のテーマパークに来る人が減っちゃうから」
「そりゃそうだわ」
「ゲームメーカーとは逆に包括的許諾契約を得られたわ。条件としては発売開始から1年以上経っている作品。もちろん収益の内いくらかをお支払いする契約ね。ゲーム実況に関しても許諾を得られたから大丈夫よ。D-Systemのゲームの特性上、宣伝になるからね」
「おー!……あれ?ハロメン驚いていないね?」
「うん。光一、私達は既に知っていたからね」
「え?そうなの紗也華?」
「私達は内部で共有があったし、SNSの運営公式アカウントでも発表されていたんだけど……光一は見てないか」
「……最近、見ていないのがバレた。前は見ていたんだけどね。妻がいて重要な案件は教えてくれるし良いかなと思っていました。はい」
「まぁ良いんじゃない?それで。光一の言う通り重要な案件は教えるし。今回の件は重要じゃないから教えなかっただけでね」
「それじゃそれでよろしくね」
「了解よ」
「イブ、他に報告はある?例えば面白い新技術とか」
「もう報告はないけど……面白い技術か。一応はあるけど面白いかは微妙よ?」
「新技術なら何でも良いよ~」
「天気予言アルゴリズムね。1ヶ月先までの天気を予報ではなく予言するというものよ」
「予言?」
「そう。予言よ。位置情報と組み合わせれば今、自分がいる場所に何時何分何秒に雨が降ると知ることが出来る」
「お、おう」
「ただし、私は地球では使えても異世界や火星では微妙な技術だと思っているわ」
「地球で使えるだけでも凄いけど、異世界や火星で使えない理由はなんで?」
「異世界や火星では精霊さんが雨を降らせたりしていると認識しているわ。だから天気予報の向上は出来ても予言までは出来ないと私は考えているの。だから面白いか微妙な技術なのよ」
「ナビィ、どう思う?」
「ふむ、そうね。精霊さんもゲリラ豪雨の様な形では無く、出来るだけ自然な形で雨を振らせているから全く予言出来ないという事もないと思うわよ。流石に1ヶ月先までの予言は無理でも1週間から2週間までなら予言出来るんじゃないかしら?」
「何故に1週間から2週間?」
「精霊さんも『あっ今から雨を降らせよう』とか気まぐれでやっている訳ではないの。計画的にやっているわ。そうじゃないと人々の生活に影響が出てしまうからね。それで計画を立てるのが1ヶ月毎なのよ。基本的にはね」
「そうなの?」
「うん。流石に精霊さん1人で世界を管理出来ないから、複数の精霊さんがいるのね。それで月の真ん中辺りに『来月はどうしようか?』って会議をして決めているの。だから計画的にやっているわ。アルゴリズムがどんなモノか分からないから何とも言えないけど、1週間から2週間の予言は可能だと思うわよ?」
「それじゃナビィさん。アルゴリズムを共有するわ」
「そ、それ。頭がパンクしない?大丈夫?」
「大丈夫よ」
「うぅ~えいっ!……ほうほう?あー気象衛星をアップグレードして、地球をシミュレーションするのね。……了解!」
「それでナビィどう思う?」
「光一さん、2週間はいけるわね。1ヶ月となると微妙だけど天気予報の精度は向上すると思うわよ。ただ……」
「ただ?」
「魔法の行使等は当然、予測出来ないでしょ?魔法で雨を降らせるとか」
「うん。まぁそんな事が出来る人、やる人が僕以外にいるかは微妙だけどそうだね」
「それと同じ様に何らかの魔法行使により、精霊さんの担当地域が砂漠化しそうになったら緊急措置として雨を降らせたり対応するわ。それも予測できないわ」
「まぁそれもそんな事が出来る人、やる人が僕以外にいるか微妙……僕の子孫以外がいるか。まぁ良いや。基本的にはないでしょ?」
「まぁね。だからナビィとしては面白い技術だと思うわ」
「それじゃ部下に……」
「あっナビィさん待って!もう既に地球と火星で必要な準備をして実験しているから!だから大丈夫よ」
「あっそうなのね。了解。あっぶねぇ。部下に指示を出したら『もうやりましたが何か?』って怒られるところだったわ」
「……天使ってそんなに怖いの?」
「う~ん。どうだろ?可能性の話だから何とも言えないわね」
「あーまぁ人とそこは同じか」
その後も僕達は雑談を続けた。





