学園編① 〜編入〜 初ダンジョン
「ユナさん!タオルです!」
何故こうなったのだろう。
現在、戦闘科の訓練が終わってすぐ、スタンがユナにタオルを差し出した。たしかに、ユナは汗を流してる。
「あ、ありがとう…」
「ユナさん!」
「は、はい?!」
「喉が渇いてるでしょう!水を持って来ました!」
…えー…スタンの思惑としては、ユナに親切にする事で出来る男として見られたい、と言った感じだ。悪くは無い…発想は至極当然なのだが、方法がよろしく無い。
ほれみろ。ユナがドン引いている。
「う、嬉しいんだけど…それくらいは自分で出来るから今度から…」
「いいえ!此処は俺にやらせて下さ…」
と、此処で誰かが訓練用の木剣で、スタンの頭を軽く叩いた。
「痛?!誰っすか!…あ、キャリー!何すんすか!」
「アンタが何をやってんのよ!そんな臭い事やってる暇があるんだったら、片付けを手伝いなさい!」
「今日は俺の当番じゃ無いっすよ!今日はキャリー達っすよ!」
「仮にも王子なら率先して手伝いなさいよ!あと!語尾に『っす』ってつけるのやめなさい!」
「王子は関係ないっす!」
「そんな事じゃユナちゃんには見向きもされないわよ!」
「どんと任せてくれっす!」
チョロいな。キャロラインは『ユナを出汁にスタンを使役する』を覚えた。
にしても、キャロラインとスタンのやり取りが、まるで母と子のソレだ。
「あはは…キャリーちゃん酷いね…」
「良いのよ良いのよ。こう言うのは有効活用しないとね」
キャリーは笑う。
「そうそう。いまさらだけど、この学園には慣れた?」
と、質問をする。
「まだ…かな?」
「あー…だよねえ。編入してからまだ一週間も経ってないのに、あんなにお茶に誘われてる人なんて、見た事ないよ?」
「うーん…」
「ま、その内無くなると思うから、もう暫くの我慢だよ」
「はーい…」
「一旦集合しろ」
バロルの一声で、先程まで小言を叩いていた生徒達が集まる。
「そろそろ、ダンジョンでの実戦訓練を再開したいと思っている」
どよめきが走る。今までは危険だとして、実戦訓練は行われてこなかった。
それを何故行うのか、みんな解せないのだ。
「本当ならお前達をもう少し鍛えたいんだが、ま、大人の事情って奴があってだな」
戦力増強を早急に図りたいと言う、上からの指示があったのだろう。
とは言っても、ダンジョンの比較的浅い所までは大して問題は無い。出てくるモンスターも弱いのだ。ダンジョン内のトラップも殆どが確認され、地図が配布されている階層もある位だ。
第一階層の入り口に近いあたりは、子供の遊び場になる程度には安全性が確保されている。
よって、近々、集団でダンジョンに潜る様だ。
ショウが担当している者達は、もう少し訓練してから潜らせるらしい。
その事を伝えられてから解散し、ユナは廊下を歩く。
「いやー…ついにユナ様がダンジョンデビューですか」
「だねー」
「また一つ…ユナ様の魅力が上がり…大人の階段を登りましたね…」
「ちょっと何言ってるか分からない」
「すみません」
「今日の晩ご飯は何?」
「ピーマンの肉詰めです」
「またピーマン?苦いから嫌いなのに」
「なに甘ったれてるんですか。良薬口に苦しです」
「そう言われると反論出来ない…」
「まだまだ、青二才ですね〜」
「ムカ…」
「悔しかったら好き嫌いしないでピーマンくらい食べて下さい」
「家事王って本当に私の事慕ってくれてるの?」
「ええ。ですから、キチンとして欲しいのです」
「はーい」
と、其処へ3人組の女子生徒が向かってくる。
「ねえ聞いた?」
「ええ。はーい、ですって」
「なんて間の抜けた返事なんでしょうかね」
「品がないですわよね」
「アハハハハハハハハ!」
そう言うと3人組は去って行った。
間違いなく、ユナに対しての嫌味といった所だ。
それがわからないユナではない為、ユナは少しソッポを向いた。
「な、何なんですか今のは?歩きながら大声で笑う方が、よっぽど品がなくないですか?」
家事王は動揺しながらもツッコんでいる。
ソッポを向いていたユナの顔も家事王の方に向いた。
「私…何か悪いことしたっけ?」
「ユナ様が好き嫌いしてるからバチが当たったんです」
「それは無いよ」
「それはそうと…」
家事王としては、こう言うゴタゴタにユナの注意を向けたくは無いのだ。
話題を逸らす。
しかし、幾ら注意を向けさせない様にしようが、幾ら話題を逸らそうが、相手は容赦しない様だ。
すれ違い様には嫌味を言ってくるのは基本として、根も葉も無い噂が流れたり、時々無視されたり。
取り敢えず、ユナが何かすれば何かしら言ってくる。
最も、あんまりユナに効果は出てないが。
毎回、ユナにしか聞こえない様に家事王がツッコミを入れてる為だ。
訓練の休憩中に、ユナと家事王は会話している、
「いい加減、ユナ様も言い返したらどうです?」
「ダメだよ。メリカにも相談したけど、無視が一番だって」
「何を弱気な事言ってるんですか。二度と悪口が言えない様に、上下関係を叩き込めばよろしいではありませんか」
「だから、そんな事しないって」
「いいえ。必要な事です。あ。私に頼むのもアリですよ?ユナ様の眼前に、首謀者の首を持って進ぜましょう」
家事王は嬉々として話すが、ユナは聞き流し、近々行くダンジョンを想像していた。
「ダンジョンかー…楽しみだなー…」
「ありゃ?スルーされました?」
「強い武器とかが手に入るんだよね」
「ダンジョンで、ですか?」
「うん」
「此処で少し復習と行きましょう。何故ダンジョン内でモンスターを倒すと、何かしらの素材やら武具やらを残すんでしたっけ?」
ユナは硬直し、頭を捻る。
「…えーと…ちょっと待ってね…今思い出してるから…」
「では、ダンジョンとは何ですか?」
「…一種の生物?」
「なんで疑問系なんですか。概ね合ってますよ。その通り、ダンジョンは生物と表現する事も出来ます。体内に抵抗力、つまりモンスターを配置し、外敵…冒険者を、ダンジョンコアに近付けぬ様に迎撃する。モンスターが勝てば冒険者の全てをダンジョンの餌に出来ます。ダンジョンに旨みがなければ、餌も寄って来ません。ですので、ダンジョンは餌にとって旨みのある物、つまりは武具や素材を、餌の元に残します。その餌が外に出て、ダンジョンの評判を上げる事により、ダンジョンに更なる餌がやってくる。そしてその大量の餌で、ダンジョンはより大きくなる…このサイクルが出来上がる事により、ダンジョンも人も、得をします。よって、ダンジョンは人と共存する、共生型の生物と呼ばれているのです」
「メモメモ…」
「後で図書室にでも籠って、本の写本でもして下さい。嫌でも覚えれますよ」
「やだ」
「はあ…困りましたね」
「面白そうな話をしてるじゃ無い」
と、そこへ赤髪赤目の女子が一人、長剣を携えて向かって来る。
「ねえ」
「は、はい?」
「アンタ、最近ずっとそのゴーレムの近くで座ってるけど、真面目に訓練する気あるの?」
何故か敵意たっぷりの声で喋る。
目の前の女子を含め殆どの生徒は、休む間も惜しんで訓練に打ち込んでいる。
しかし、それはユナに敵意を向ける理由にはならない。
「や、やる気はあるよ。今は休んでるだけ」
「休んでる暇があったら、みんなみたいに少しでも訓練に勤しめば?」
「けど、休む事も大事だって、バロルおじさんが言ってたよ?」
「…そうやって自分は高みの見物って訳?」
「どういうこと?」
「少し先生達と親しいからって、調子に乗ってんじゃ無いわよ」
そう吐き捨てると去って行った。
「…エリカ・フィン・ランガード。魔王軍に滅ぼされた、ランガード公国の第三公女ですね」
「うん。2年前に滅ぼされたんだって」
「ランガード公国はクルックス王国から独立した公爵家が立ち上げた国でしたね。独立した公爵は、非常に武勇に長けたらしいです。そのせいなのか、クルックス王国とスバロス共和国を同時に相手取れたんですよね。最も、三国とも大きな国家とは言い難かったのもありますが」
「けど、クルックス王国もスバロス共和国も、去年滅ぼされちゃったんだ」
「らしいですね」
それ以上家事王は喋らなかった為、ユナは訓練に戻る事にした。
初のダンジョンでの実戦訓練があったのは、それから四日後の事だった。
ウルベモルティスのダンジョンの入り口は、ウルベモルティスの中心、すなわち栄光の塔の真下にある。入り口付近は広場になっており、一般人や冒険者が多数おり賑わっている。広場で一般人は屋台を開いて冒険者相手に物を売ったり、冒険者は臨時のパーティーを組める相手を探す。時々揉め事が起こる為、騎士が幾人か配置されていたりもする。
ユナ達はその広場に集合を掛けられた訳だが、どうにも奇異の目で見られてしまう。それもそのはず。この様な所に制服姿の子供達が集合してる光景は、慣れない者から見れば異様だ。
そんな奇異の目に暫く晒された後、バロルとジョアンナが参上した。
2人の登場に、周りの冒険者達は驚きの声をあげる。
「お、おい!アレって『虚構の錫杖』の[砕殻]バロルと[雷光]ジョアンナじゃじゃねえか?」
「嘘?!本物なの?!ええ?!」
「[疾風]ショウは居ないようだが…」
「なんでこんな所に…あ!もしかして、此処に『虚構の錫杖』が存在するんじゃねえか?!」
「まだ誰も行った事のない階層に?」
「ああ!」
周りでは様々な憶測が飛び交う中、バロルとジョアンナは顔を手で隠していた。
「バロルおじさん。[サイカク]って何?ジョアンナお姉さんの[雷光]も」
実力のある冒険者には、二つ名が付く。これはもう恒例の儀式の様な物だ。
「ああ…ちょっと前に亜竜って言う、ドラゴンもどきの頭を鱗ごとこの斧で潰したら、そんな二つ名になっちまった…」
「亜竜の鱗を砕いたの?!」
亜竜…ドラゴンもひっくるめて竜種と呼ばれているが、竜種の鱗は非常に硬い事で有名だ。攻撃の際に武器を当てると、武器の方が壊れてしまう。
それに、竜種は骨も丈夫な為、竜種の中でも最下位の亜竜とは言え、その頑強さは折り紙付きである。しかも、その頭を潰したのだから大した物だ。
因みに、バロルの二つ名が[砕鱗]では無く[砕殻]なのは、最初に命名した誰かが、その亜竜の頭の硬さから、鱗では無く殻と間違えた為だ。
「ジョアンナの方は、雷属性の魔法ばっかり使うからな…」
「…だって…威力が高いのよ…それに…かっこいいじゃない…」
「そのお前の拘りのせいで、一体全体、何回俺とショウのケツに雷を撃ち込んでくれた?え?」
「それはそれ、これはこれよ」
「急に開き直るな」
「ねえバロルおじさん。早くダンジョンに行こうよ」
「お?ああ。そうだったな。先ず、今日は第二階層と第三階層に向かう。事前に調べた所、第一から第三階層までで現れるモンスターは大方スライムだ。其処でダンジョンに慣れてから、第四階層以下に降りていく。其処からはゴブリンとコボルドが大半を占める。ホブゴブリンも出て来るらしいから注意しろ。あと、ダンジョン内で出た装備品や素材は、倒した奴の物だ。協力して倒した場合は、上手く相談しろ。後の説明は面倒臭いから、この紙束を其々渡す」
それの1番上の紙には、『これでアナタもダンジョン踏破者!赤ちゃんでも分かるダンジョン攻略指南!』と書かれている。パラパラとめくると、成る程、ダンジョン内でのルールや、ダンジョンで長期間過ごす際に必要な物品などが書いてある。ふざけた題名とは裏腹に、キチンとした指南書の様だ。
「じゃあ行くぞ」
その時のバロルの顔には、悪戯を企んでいる子供の様な笑みが浮かんでいた。
入る際に特に検査等は無い様で、すんなり入れた。バロル曰く、所によっては厳しい検査を敷いている所もあるらしい。
入って階段を降りた先に見えたのは子供の姿と、そこそこ広い空間だ。事前情報通り、子供の遊び場と化している。冷静に考えると、此処はダンジョン内なので、モンスターに痛手を負った冒険者が血塗れで戻って来ても可笑しくは無いので、子供達の遊び場には不適な筈だが、なるほど、小屋が建てられている。血塗れの姿を見せない様にしている訳だ。そんな事するくらいなら、街中に公園を作れと言いたくなる。
その場所を通り過ぎ、第二階層へ続く階段を降りていく。
このダンジョンは『地下総合階層型』と言う、一定階層ごとに環境がガラリと変わるダンジョンだ。此処の場合、十階層ごとに環境が変わる。例えば、ユナ達がダンジョン慣れする一から十階層は『地下迷宮型階層』である。
浅い層であり、ゴブリンやコボルド、スライムと言った弱いモンスターしか出ない為、駆け出しの冒険者にとってはダンジョンと言う環境に慣れるのに打って付けの階層である。
ユナ達は第二階層の半ばあたりまで来た所で止まった。
「よし。今すぐにパーティーを組め」
バロルが突然こんな事を言い出した。
「勿論、仲の良い奴と組んでも良いし、今まで話した事のない奴と組むのも良いし、思い切って仲の悪い奴と組むのもアリだし、1人でやると言うのも構わん」
そうしてユナ達はパーティーを組み始める訳だが、その様子を見てバロルは少し呆れた。
此の選択は、学校で遠足の班を決めるのとは訳が違う。正しく自らの命が掛かった選択と言っても過言では無い。戦闘面で背中を預けられるのは誰か、探索面で重宝すべき技能を持つのは誰か、連携は取れるか、攻撃面、防御面、回復面など、これらを深く考えた上でパーティーを組まねばならない。
それなのに彼女らと来たら、よく見知った者同士で組み始める。悪くない選択だが、パーティーによっては偏りが出てしまっている。
組まれたパーティーのメンバーを挙げていくと、[ユナ・アシリカ][メリカ・嵯峨徒][キャロライン・スタン][エリカ・ガルジュ・アルメリア][ニケ・リエ・シエ]の五つとなる。
此の中で1番バランスが良いのは、エリカのパーティーだ。攻撃役のエリカ、防御役兼荷物運びのガルジュ、魔法の高火力と支援のアルメリア。回復は、ガルジュが回復薬を運ぶ事で解決出来る。
ユナ達はまあまあだ。アシリカは支援も回復も行えるし、ユナは高スペックなので、何とかなっている。
メリカ達は火力型だろう。度重なる戦闘は禁物だ。
キャロラインとスタンは2人とも斥候タイプなので、探索面は良いとして、戦闘面に期待すると痛い目を見る。
1番ダメなのはニケ達だ。彼女らはとても仲が良いのだが、全員魔法使いだ。詠唱中に守ってくれる盾役も、時間稼ぎをする攻撃役も居ない為、近付かれる前に敵を倒し切る必要がある。敵より早く敵を発見し、対処しなければならない。
本来ならニケ達が各パーティーに分散すれば丁度いい感じになるのだが、彼女らの仲の良さの前には理屈は形無しだ。
因みに彼女らは三子で、非常にそっくりだ。髪の色も目の色も同じで、背も体型も殆ど見分けが付かない。判断出来る材料としては、ニケにはそばかす、シエには涙ぼくろ、リエには片目の眼帯(別にリエは盲目では無い)。
また、バロルとの模擬戦にて魔法を放ったのは彼女達である。
「…まあ良い。良いか?絶対に下に続く階段を見つけても降りるなよ。戦って良いのは此の階層でだけだ」
そう言うとバロルは行けとジェスチャーをし、それに従ってユナ達もそれぞれ別の道を進んで行った。
ユナ達が言った後で、バロルは壁によりかかった。
「どうしたの?そんなに怖い顔して」
「してねえ」
「足も揺すって…そんなにユナちゃん達が心配?」
「心配なんてしてねえ。ユナなら問題ねえよ」
「アンタねえ…自分から仕掛けておいてよく言うわね」
「…もう5分は経ったか?」
「まだ1分も経ってないわよ」
ユナとアシリカはダンジョンの中を歩いている。
「凄いですよね。地下にこんな物があるなんて」
アシリカがユナに話し掛ける。
「私たちって、今ダンジョンの喉辺りにいるのかな」
「うーん…案外まだ口の中かも知れませんよ?」
「にしても、モンスター出ないね」
「そうポンポンと出て来られては困るんですけどね」
「かもねー」
「あら?彼処にスライムが居ますね。倒しますか?」
通路で、青いゲル状の体を持つスライムが右往左往している。
「…道に迷ってる?」
「だとしたらおっちょこちょいなスライムですね」
すると、ユナ達を視認したのか、右往左往するのをやめた。
そして跳ねながらユナ達に近付いてくる。
ユナ達の足元に来ると、体を少し変形させて腕の様な物を作り、ユナの足をペシペシ叩き始めた。
因みに、通常のスライムの攻撃方法は体当たりのみである。
そっとユナが足を引っ込めたら、今度は腕を2本に増やしてペシペシし出した。
しかし効いてないことが分かったのか、跳ねながら逃げて行った。
「な、何あれ?」
「ダンジョンって不思議ですね…」
それから暫く歩くと、ゴブリンが一体出て来た。
「あ。ゴブリンだ」
「ですね。どうします?」
「倒す?」
ユナ達の問答を見て、ゴブリンは醜悪な笑い顔をした。
まるで、格好の獲物が来たと言わんばかりの笑みだ。
「…今回は、戦うらしいですね」
「だね。けど、ゴブリンなら問題無いよ」
「ですね」
余裕の態度を見せるユナとアシリカだが、次のゴブリンの行動に、冷や汗を流す事となる。
「ゲピャ!ゲピャピャ!」
大きな声を上げたと同時に、複数の足音が聞こえてくる。
ゴブリンが仲間を呼んだのだ。
瞬く間に十数体のゴブリンが来て、ユナ達を取り囲む。
「…こんなに居ましたっけ?」
「…ゴブリンのスキルかな…聞いた事無いけど」
「ゲピャー!」
呼んだゴブリンが声を上げると同時に、十数体のゴブリンが同時に襲い掛かる。
「どど、どうしよう?!」
「落ち着いて下さい!此の数を同時に相手取るのは難しいですから、早く包囲網から脱出しましょう!」
言い合ってる内に、ゴブリンの一体がユナ目掛けて棍棒を振るう。
それにいち早く気が付いたユナはゴブリンの棍棒を弾き、胴部を刺し貫く。
「おりゃー!」
突き刺したゴブリンをゴブリンの集団目掛けて投げる。
「我が体に流れし魔力よ!我が味方のオドを強めたまえ!体内魔力強度増幅」
「我が体に流れし魔力よ!我が手に集いて、敵を貫く矢となれ!下級火属性魔法、火矢!」
アシリカにより強化された魔法は、ゴブリン達を次々と貫いていき、包囲網を辛くも破った。
「ゲピ?」
その事が、呼んだゴブリンにとっては不思議で仕方がない様だ。
「我らが主神アルター様…私共の矛であるユナの力を強めたまえ!」
と、此処でアシリカが、主神アルターの加護を与える魔法(以降は信仰魔法と略す)を用いて、ユナを強化し、強化されたユナは微弱な光を纏う。主神アルターの加護を纏った状態だ。
「一刀一閃!」
そして勇者のスキル『一刀一閃』で、瞬時に仲間を呼んだゴブリンの首を刎ねる。
すると如何だろうか。呼ばれたゴブリン達は跡形も無く消えて行った。
「…取り敢えず、危機は脱しましたね」
「…」
ユナは答えない。何度も、ゴブリン達を切った時の感触を思い出しては、頭の中に疑問符を浮かべる。
ユナ達は訓練の過程で、ゴブリンを何度も倒している。
だからこそだろうか、ユナはゴブリンを切った時の感触が、外で切った時とは違うと思い始めた。
そう。違うのだ。肉も皮も、硬い。棍棒を弾く時も、いつもよりもほんの少し押し返される感触を覚えた。
詰まるところ…
「アシリカちゃん…」
「どうしました?」
「私達、バロルおじさんに一杯食わされたらしいよ」
「?」
「此処のモンスター、外のモンスターより強い」




