学園編① 〜編入〜 告白からの波紋
バロル達が去ってから約1時間…ユナ達は休憩を挟みつつ素振りを続けていた。
今はユナとメリカは休んで居る。
「いつになったらバロルおじさん達来るんだろ…」
「私達をどう鍛えるか、じっくり考えてるんじゃないの?」
「だよねー…」
軽口を叩いている。
「…にしても、驚いたわね。まさか、『虚構の錫杖』と面識があったなんて」
「私だって驚いてるよ…そんなに凄いとは思ってなくて…」
「…えーと…ユナが教会?に居たのって何年前まで?」
「え?うーん…四年前までかな…」
メリカは四年前と聞き、『虚構の錫杖』の実績を頭の中でその時期を照らし合わせる。
しかし途中で、そもそも『虚構の錫杖』が有名になったのは最近だったと思い出し、時期の照合をやめる。
「…『虚構の錫杖』が有名になったのはつい最近だから、知らないのも仕方ないかもね知れないわね。四年前なんて、そもそも『虚構の錫杖』って名前のパーティーがあったかすら分からないから」
「そうかー…」
暫くの間話題が無くなるが、ユナが話題を作る。
「メリカって、冒険者の云々に詳しいよね。あと、架空の話とか」
「そうね」
「嵯峨徒ちゃんも架空の話が好きだし…」
「ええ?ユナも興味があるの?」
「…あんなに楽しそうに話してたから…」
メリカに弱みを握られた感が否めないユナである。
だが、メリカはそんな事は露ほどにも考えてなかった。
「それなら『シエン英雄譚』がおすすめよ。図書館に全巻の写本が置いてあるから気軽に読めるわ。あらすじを言うと、主人公のシエン…あ、女の子ね…は最初、とある貴族の側室の子として登場するんだけど、意地悪な正室に虐められてて、毎日嫌な思いをして過ごしてたの。けどある時女神様がシエンに夢の中で語りかけて、それがきっかけでシエンは15歳になってから直ぐに屋敷を出て、一人の冒険者として生きていく事にしたの。けど、シエンが住んでる街では冒険者登録をさせて貰えないから、シエンの意地悪な正室の権力が行き届かない、遠くの街まで旅をするの。けどその道中で強いモンスターに襲われて、あわや終わりかと思われたけど、其処に颯爽と現れたのは一人の男。その強いモンスターを一睨みで退散させ、腰の抜けたシエンを一瞥して、名も告げずに何処かへと去って行った。その後ろ姿に憧れて、シエンは誰かを助けれる英雄に憧れるの。そして…」
おいおい。なんかネタバレも含まれて無いか?気のせい?
ユナは熱く語るメリカに若干引いている。すると、バロル達がタイミング良く帰って来た。
「お。随分と詳しいな」
バロルも読んだ事があるらしい。
「おじさんも読んだ事があるの?」
「いや。とある吟遊詩人から聞かされただけだ。だから詳細までは知らん」
ユナは興味無さそうに相槌を打つ。
「さてと。お前達それぞれのメニューを用意したからよく聞け」
そう言い、バロルは一人一人にどの様に訓練していくべきかを告げていく。
ざっくりと言うのならば、ユナなら剣と魔法をバランスよく扱う為に、剣の稽古と魔法の鍛錬を並行、アシリカなら回復と支援に特化する為、敵の攻撃から避けつつ支援する訓練、メリカなら敵の攻撃を盾でいなしつつ着実にダメージを与える為に、盾での受け流しの訓練と言った感じだ。
そして、訓練は説明が終わって直ぐに開始される。
皆の訓練中の粗を直していくのが、当面のユナ達の課題だ。
バロル達の仕事も、ユナ達の訓練の粗探しと指摘となる。
…
従来の戦闘科の授業は、ただひたすらに実戦という、何ともお粗末なモノだった。そんなお粗末な事をしてたせいで、ある時とある事件が起き、その場にいた教師全員と生徒十数名がモンスターにより殺される事故が起こった。
因みにそのモンスターは、強すぎるという事で手を出せずにいたが、比較的最近にシャロンが討伐した。
事件以降、戦闘科は危険が伴うとして、生徒は集まるにしても教師が集まらなかった。
バロル達の元に話が来たのは1ヶ月ほど前だ。
バロル達は冒険者としての頭角を表すよりも前から、冒険者の新人に必要最低限の戦い方を自主的に教えていた。その評判は高く、新人の死亡率がかなり低くなると言う、目に見えた効果も出ていた。だからこそ白羽の矢が立った。
とは言っても、バロル達の様な人材を失う事は冒険者ギルドとしては痛い。バロル達にしても、彼らが掲げる目的と教師という役回りは、余りにも乖離し過ぎている為、何度も断って来た。
しかし、『目的』の為の材料があると知った為、彼らはこの話に乗ったと言うわけだ。
さて。とは言っても、一つ疑問が残る。ウルベモルティスは大都会という奴だ。何故大都会かというと、理由は二つ。一つ目は、魔族の大陸からは最も遠い位置にあるから…つまり安全なのだ。という事は、ウルベモルティスの周辺の安全は約束されている。では何処で実戦訓練を行うのだろうか。周りにモンスターが居ないのに、如何にして実戦が出来ようか。
その答えは、ウルベモルティスを大都会たらしめる二つ目の理由だ。二つ目の理由は、南の大陸(人間の大陸)でも有数の巨大なダンジョンが地下に存在する事。
このダンジョンがまさしく金の成る木である。
まだ踏破された事は無いが、此処のダンジョンのモンスターが残す物は、同レベルの他のダンジョンのモンスターが残す物より高品質高性能なのだ。つまり、比較的楽に稼げるのだ。立地は悪くても、元が取れてお釣りも出るのなら問題無い。
このダンジョンの存在と学園にある書物が、バロル達の目的の材料になるかも知れないのだ。
そしてこのダンジョンは、ユナの力を伸ばすのにも最適だ。
流石にヒノキの棒と雀の涙ほどの金銭からのスタートのせいで、魔法討伐の旅の始め辺りにやられましたなんて笑えない。
ある程度まで強くなり、装備も整えてからのスタートなら、初期段階では問題ない筈だ。
……
さてさて…特に何かしらのユナ達にとってイレギュラーなイベントが起こる事なく、3ヶ月が過ぎた。季節的には夏に差し掛かった所だ。
少し不幸な出来事があったとすれば、少し前にユナに対して暴行を加えたジャーグが、何故か首を吊った事だ。検察の結果は、自殺とのこと。
どうやら、家事王に腕を切り落とされた事がかなりショックだったらしい。腕を落とされて武闘家としての人生を断ち切られたとでも考えたのだろう。
不幸な事故だ。
戦闘科では実戦をする事なく訓練が続き、魔法学では魔法の云々についてケミスから詳しく教わっている。ユナ達の好きな講義も、宿題が多いという事以外、なんら問題は無い。
ただし現在、ユナは困り果てている。
「ユナさん!はっきりして下さい!俺と付き合ってくれるのか否か!」
スタン君がずっと、ユナにまとわりついているのである。
今までは隅からじっと見てくるだけだったが、今になって、積極的になった。
いいぞいいぞもっとやれ。
「え?あ…あえ?」
色恋沙汰に免疫のないユナはすぐに混乱する。まだまだお子様だ。
「ちょ、ちょっと待ってて下さいねスタンさん!」
とりあえずアシリカとメリカがユナを離す。スタンもキャロラインとアルメリアによって離された。
「…えーと…私はどうすれば良いの?」
実はアシリカは既にもう10回以上、男子生徒からの告白を受けており、この手の案件には慣れている。
「確認しますが、ユナさんはスタンさんの事をどう思ってるんですか?」
「え?えーと…友達かな…」
「ですよね。でしたら、もう少しお互いの事を知りたいと言って、丁重に断って下さい。ズバッと切り捨ててはダメです」
「いいえ。ズバッと切り捨てなさい。今後付き纏われても厄介よ」
「う、うーん…」
アシリカは応援するスタンスの様だが、メリカは切り捨てる方針らしい。
「メリカさん。スタンさんは悪い方ではありません。ですが、まだお付き合いをするには互いを知らなさ過ぎます。突き放すのは早計だと思いますよ」
「ダメよ。私は見たのよ。スタンが他の女子生徒に言い寄られてる所をね」
スタン君はスクールカーストでは上位に位置している様で、モテるようだ。
「そうかもですが、スタンさんはソレを全て拒否してるのですよね?」
「だからよ。ユナとスタンをくっ付けるのに、私は断固反対よ」
「けど、スタンさんはユナさんの事を想ってるんです」
「もう…アシリカって時々ポンコツというか鈍感と言うか…」
メリカが危惧してるのは、いわゆる嫉妬から引き起こされる問題だ。
かつて自分も経験した事があるからこそ、避けねばならない。
「良い?絶対に断るのよ」
今まで見せた事のない圧に、ユナはただ頷くしかなかった。
それとほとんど同時に、スタン達の方でも話が付いたようだ。
「ユナさん…改めて!付き合って下さい!」
うんうん。素晴らしい。
「…ごめんなさい!付き合うのは無理です!もっとお互いの事を知ってからにしましょう!」
スタン君は雷に打たれた様な顔をした。
そして暫く俯き、再び顔を上げると、目からは涙が溢れていた。
「…う…うぐぶ…」
泣くのを我慢しているつもりなのだろうが、泣いてますね此れは。
「絶対に振り向かせてやるっす!」
そう言って、腕で目を隠しながら走り去っていった。教室が非常に居心地の悪い空気で満たされる。
ユナも、自分が悪い事をしてしまったと思い、居心地悪そうにする。
その様子をみたキャロラインがすかさずフォローに回る。
「ユナちゃんは悪くないわ!スタンは私達の忠告を無視して自爆しただけだから!けどあいつ悪い奴じゃ無いの!まさかこんな…」
キャロラインのフォローは続く。アシリカもアルメリアも、ユナのアフターケアに回っている。
そんな中、メリカだけは違う事をしていた。
スタンが教室を出た際に開け放たれた扉から見えた、スタンを追い掛ける複数人の女子生徒達の顔を、ユナ達を伺っている者達の顔を見ていた。
ユナ達を伺っていた者達は直ぐに去って行ったが、ソレは興味が無くなって去るものでは無かったようにメリカには見えた。
スタンがフラれた。この噂は、瞬く間に学園中に広がった。
実は彼…スタン君は、魔王城に比較的近い『ベルガ王国』の第七王子だった。
年齢や序列、母が側室の為に王位継承権は無い。あの性格のせいで、よく周りからは王子であると言う事を忘れられている。
しかしながら、王子は王子。女子達は積極的に仕掛けるし、男子達も気に入られようとする。しかも、優秀とされるSクラス所属…つまりは将来有望という事なので、尚更寄ってくる。
それにスタンは、人当たりの良さからよく皆の中心に居る。
そんな彼からの好意を受け取らない女子なんて、多分居ないのでは無いか。
結果、女子達から見れば『面白く無い存在』に降格し、男子達から見れば『スタンでさえも相手にならないアイドル』に昇格したのである。
しかしながら、女子達からの評価はともかく、何故男子達からのイメージが上昇したのか。
至って簡単である。噂に尾鰭が付くのはお決まりだ。
真相は『ユナが申し訳なさそうに断った』だが、男子達の聞いた噂は『まるで相手にもされなかった』となっている。
何がどう反応を起こしてこうなったのかは知らないが、お陰で、ユナは沢山の男子生徒から良くお茶に誘われるようになった。
スタン爆死事件から3日経ったが、既に20人以上に声を掛けられている。
「はっはっは!傑作じゃな!まさか!まさかあのユナを?!男どもが取り合おうとするとは!」
ユナの話を聞き、膝を叩きながら大笑いするのは、魔法学講師のケミスだ。
とは言っても、今は講義の時間ではなく、昼休みの時間。
アシリカもメリカも、嵯峨徒もいない。魔法学の講義室にいるのは、ユナとケミスだけだ。
「困ってるからケミス先生に相談しに来たんです…」
「クロームはどうしたんじゃ?」
「クローム先生はフルヘンシオさんと話があるらしくて…」
「成る程のう…しかしソレなら、ワシ以外にも適任の教師が大勢おるぞ?御主が受けている植物学の娘なんかは、男好みの体をしとるからのう。詳しいと思うが?」
「ソワーレ先生は私とは全然取り合ってくれなくて…と言うか、何故か目の敵にされてて…」
「…ほほー?そりゃ大変じゃな」
ケミスが、悪巧みをしてそうな顔をし始める。
「先生。こう言う時、どうすればいいんですか?」
「ワシは用事を思い出した。じゃあのう」
「あ、あの、先生…」
「良い教師は身近におるぞ」
そう言うとケミスはそそくさと出て行ってしまった。
しかし、ケミスの言葉でユナはハッとした。そうだ。仲の良い大人が身近に居ると。
「と言うわけで、ジョアンナお姉さんに相談しに来たんです」
「…ユナ?今は授業の時間じゃ無いの?」
戦闘科の訓練をサボって、ジョアンナのもとに相談しに来た。事前にバロルには事情を伝えてある為、快諾してくれた。バロルもジョアンナを薦めたし。
因みに、スタンはジョアンナの元に相談しに行ったユナをチラチラと見ていた為、集中しろとバロルに怒られている。
「…分かったわ。とは言っても、あまり良い答えは期待しないで頂戴」
「ありがとうございます!」
「まず、ユナちゃんがスタン君をフった事だけど、其れは正解よ。何しろスタン君は王位継承権は無いと言えども王子様だからね。ユナちゃんにもそれなりの作法や品が求められるわ。ユナちゃん、タダでさえお勉強とか訓練が大変なのに、挨拶の練習とか嫌でしょ?」
ユナは首を縦に振るう。
「其れに、貴族ってのは、血筋とかに煩いのよね。仮に作法や品があったとしても、周りが認めないし、最悪、ユナちゃんの身が危なくなるの。ユナちゃんの身を案じても正解よ」
なんかスタンが可哀想になってきた。
「次にお茶に誘われる件ね。此れは何とも言えないわ。私も一時期夢見てたわ。けど、本当に時々だけど…っと。此れはユナちゃんには早いわね。私個人の意見だけど、お誘いに乗るのは構わないけど、行くのなら信頼出来る友達を一人でも二人でも良いから連れて行きなさい」
ユナは頷く。
「行く時にやっちゃダメな事ってあるの?」
「…うーん…どちらかと言うと気遣わないといけないのは男性の方で、女性は楽らしいわ。まあ、普通に考えてやっちゃダメな事はダメよね。上手い人なら、上手くエスコートしてくれるかも知れないわよ?」
「うーん…」
あまり人に迷惑をかけたく無いユナにとっては、其処がネックなのだ。
「私に言えるのはコレくらいね」
「えー…そのもっとこう…」
「一番詳しいのが、一番近くにいると思うけど?」
「?」
近くを見回すと、直ぐ隣に家事王が立っていた。
「うわわわわ?!いつから居たの?!」
「…」
家事王はユナの手を引っ張る。
「…付いて来い?」
意味が伝わったのを確認し、家事王はゴーレム達の待機部屋まで向かう。
「噂は聞きました」
「う、うん…だと思うよ」
だってユナが廊下を歩いてる最中も、周りの生徒はヒソヒソと話してる。その内容を家事王は聞き取っている。
「お茶会…今まで誘いを蹴ってましたよね」
「うん…わからないし…」
「…何故私に相談しないのですか!」
「ええ?!」
「この私に言ってくだされば!直ぐにでもお茶会のイロハをユナ様の骨の髄にまで刻み付けましたのに!」
「え、あの…」
「お茶会こそまさにユナ様の魅力を売り込む前哨戦に相応しいではありませんか!」
「ぜ、前哨戦?」
「ええそうです!そうしてスタンとか言う不埒者は腐っても王族!気がつくでしょう!自分が惚れた女は自分なんか眼中にも無かったんだと!」
「あ、あのー…」
「それに聞きましたよ私は!12月にはダンスパーティーがあるそうですね!其処で素晴らしいダンスを他の男と決めるユナ様を見て、その男に嫉妬し、その男を襲う!それを見てユナ様はスタン様を見限り…そう…私に抹殺命令を…」
要するに家事王はスタンを始末したい様だ。
「しないから!そもそもダンスパーティーになんか出るつもり無いよ!」
「ええ?!そんな殺生な!私の存在意義を消すおつもりですか!」
「なんでそうなるの!」
「ユナ様が勤勉である程私の仕事は増えるのです!ですから!なにとぞ!」
「私は踊れないの!もう!真面目に聞いてよ!」
そう言ってユナはムスッとする。
「すみません、すみません」
反省の色ゼロである。
「…ねえ家事王」
「はい」
「私はスタンの告白?を受け入れるべきだった?」
暫く家事王は考え込む。
「告白を受け入れる事は否定します。なぜなら…」
「分かってる。私が危なくなるんでしょ?」
「…ええ。安心しました。ですが、スタン様を仲間に引き込む事には賛成します」
「なんで?」
「スタン様の職業は狩人でしたね?」
「うん。遠距離攻撃とか潜伏に優れてるよね」
「戦場では重宝しますよ。スタン様の様な将来有望な方なら、伸び代も充分見込めます」
「けど、私が断っちゃったばかりだよ?」
「…ま、何とかなりますよ」
家事王の返答が引っかかるユナだったが、聞いても答えてくれなさそうなので、別の質問を振る事にした。
「…話を戻すけど、結局、お茶に呼ばれたら参加した方が良いの?」
「あ、忘れてました忘れてました。失敬」
そう言えばユナは、立て続けにお茶に誘われてて辟易してたのだった。
「相手を見極めて下さい。それとやはり、アシリカ様やメリカ様、嵯峨徒様をお連れ下さい。特に嵯峨徒様なら、正真正銘、お姫様ですので、詳しいイロハは彼女が教えてくれるでしょう」
「誰の誘いは受けて、誰の誘いを断るとかも、相談した方が良いの?」
「当然です。“低俗な男”に弱みを握られても嫌でしょう?」
「…弱みを握られるのは嫌かも」
家事王は『低俗な男』と言う部分を強調した。
「まあそもそも、そんな輩とお茶会なんて認めませんけど」
「あはは…」
「総括すると、誘いは相手を見極めるべし、必ず信頼出来る誰かを連れるべし、事前に作法云々は学習すべし、ですね」
「はーい」
「さあ。早く戻って下さい。訓練の続きを」
「分かってまーす」
そう言ってユナは、気が楽になった顔をして走り去って行った。
その後を、家事王は黙って付いて行った。
…
学園のある教室にて、複数人の女子生徒と、窓際に座る只者ではないオーラを放つ、恐らくリーダーポジションの女子生徒が話をしていた。
「例の編入生…ユナとか言う者の件について、どうお考えですか?」
取り巻いている一人が、リーダーポジションの女子に問う。
「…どう、とは?」
「はい。あの者は貴族の血筋では無い上に、あろう事かスタン様を誑かし、そのスタン様の告白を拒絶し遊ぶ、悪女と聞きます」
とんでもない噂が広がっているものだ。尾ひれがついたどころの話ではない。
「それに、見た事もない肌をした者も連れています」
「そして淑女にあるまじき行為の数々…彼女はこの学園には相応しくありません」
…たしかに、ユナは講義に遅れそうになって廊下を走ってはクロームに叱られているし、食堂ではメリカと大声で言い争いをしている。
取り巻き女子達の会話を聞き、リーダーポジの女子は呆れた顔をした。
「あら。貴女方の中で、既に答えは出てるじゃない。私に聞く程の事なの?」
「い、いえ!申し訳ありません!」
「良いわよ。私も同じ事を考えてたわ。彼女はこの学園に相応しくないわ。それに、見ているとムシャクシャするもの。ああいうのは、大嫌いなのよね」
リーダーポジは、意地の悪い笑みを浮かべる。
「其れに、残り二人も気に入らないわ」
「では、やります?」
「ええ。頭の天辺から足の爪まで、ボロボロに砕いておしまい」
裏で密かにユナ達を潰す計画が渦巻いてるとも知らず、ユナは、帰るのが遅いとバロルに叱られているのであった。




