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光と闇 〜終わりの始まり〜  作者: シラス王
学園編
18/34

学園編① 〜編入〜 暴行事件

「全く…困り果てた方ですよ、ユナ様は」

「…」


ユナと家事王の姿は医務室の一角にあり、ユナの表情は暗い。周りでは医師達が驚いた顔で様子を伺っている。

初日から3日、ユナ達は気に入った講義を受けてた。特に何の問題も無く、平和に過ごしていた。

問題が起こったのは昨日…ユナが少し泣きっ面で廊下を歩いていた時の事だった。


後ろには家事王がユナを追う形で付いていた。


此処1日2日で、ユナ達の事は様々な噂と共に学園中に知れ渡っている。ユナ自身はそんな事知らないが。


「ユナ様、大爆笑されてましたね」

「う、うるさい!」


実はついさっき魔法研究の宿題でユナは、『相手をリンゴに変えて無力化する魔法』を発表し、皆に爆笑されたのだ。あのアシリカでさえ声を出して笑った程だ。嵯峨徒は若干引いてたが。本人にとっては丸一日かけて考え出した魔法なので、非常に悔しい結果に終わった。


「実現したら絶対に強いって!」

「て言うか、なんでリンゴなんですか。絵面がシュール過ぎます」

「私リンゴ好きだもん!」


家事王はユナの回答にため息を吐き、憂鬱そうに口を開く。


「でしょうね。私を作った方も、自分の趣味を全力で投入してましたよ」


ユナの顔がたちまち明るくなる。


「へへーん!そうでしょそうでしょ!私って凄いんだー!」

「馬鹿と言ってるんです」

「えー?!家事王を作ったんだから頭良いんじゃ無いの?!」

「頭の良さの問題では無いのです。アレこそまさにキングオブ馬鹿ですよ」

「きんぐおぶ馬鹿?」

「馬鹿の王という意味です」

「…ちょっと家事王?私が馬鹿の王様って言いたい訳?」

「御安心下さい。あの方に勝る馬鹿はそうそう居ません」

「私が馬鹿なのは否定しないんだね」

「平均ステータスが80な所、知力40でしょう?」

「うぐっ…」

「さあさあ。とっとと次の所に行かないと」

「はーい」


家事王は急かす。

唐突にユナはぶつかられ、そのまま尻餅を付いてしまった。

ぶつかって来たのはふくよかな年上の少年だ。見るからに悪役と言った風貌。

その周りを、小物臭漂う取り巻き数人が囲んでいる。


「あいたたた…」

「ユナ様!大丈夫ですか!」


すぐさま家事王が駆け寄りユナを起こす。そしてぶつかってきた相手に向き直った。


「ちょっと。ぶつかっておいて御免なさいの一つも無いんですか?」

「んん?何だこの芋女は?この芋女がぶつかってきたせいで、私の服にシワと芋の匂いがついてしまったでは無いか。どうしてくれるんだね?」


どうやらこの男はユナ達の噂を知らないらしい。家事王を見ても特になんのリアクションもしない。

嫌味っぽく芋の部分を強調する。当然、家事王の怒りのパラメータは指数関数的に上がって行く。


「へえ…丁度良かったでは無いですか?芋は庶民の基本食の1つです。今、庶民と同じ経験が出来たのですから」

「冗談は止してくれたまえ、鉄屑。庶民と同じ経験なんて死んでもゴメンだ」


ユナがピクリと反応した。家事王は依然として冷静を装おうとするが、声には明らかに怒気が込められていた。


「死んでも、と言う言葉は、少なくとも貴方程度が軽々しく扱って良い言葉では無い。取り消して貰いたいものです」

「比喩と言う言葉を知らないのかね?だから君は鉄屑なのだよ」

「じゃあ、その鉄屑と会話してる貴方はアレですか?肥やしですか?」


唐突に家事王は取り巻きの1人に蹴られ、壁に激突した。


「あまり調子に乗るなよ鉄屑。鉄屑程度がジャーグ様とお話し出来る時点で光栄と思え」

「…」


家事王には損傷は見受けられない。ピンピンしてる。


「ジャーグ様ですか。アレですか?そう言うお年頃ですか?取り巻き引き連れて、さも自分が偉いと錯覚しちゃうタイプですか?」

「貴様…!良い加減に…」

「これこれよしたまえ。負け犬の遠吠えだ。行くぞ」


家事王はそっと胸を撫で下ろした。ユナに危害が及ばない様に終わりそうだと。

ジャーグが去り始め、取り巻きも後を追う。去り際にジャーグは唾を、取り巻き達は家事王に蹴りを入れた。

そのまま彼らが去って事なきを得る…筈だった。


「うあああああああ!!!!」


いきなりユナが走り出し、何事かと振り向きかけたジャーグの頬に拳を一発叩き込んだ。


「がぐう?!」


そのままジャーグは吹き飛んで地面に倒れた。


「な、何を…!」

「謝れ!」

「は?」

「家事王をこんな目に合わせた事…謝れ!」

「こんの、芋女が!」


起き上がったジャーグの顔面に拳をもう一発。


「がぶ?!」

「ユナ様!私は痛くも痒くも無いので何も…」

「そう言う問題じゃ無い!」


ユナも頭の中では家事王の考えを理解していたのだが、家事王を蹴り、鉄屑呼ばわりした事に我慢出来なかったのだ。


「今だ!取り押さえろ!」


そして、すぐ周りが見えなくなる。気付いた時には囲まれていて、直ぐに脇から腕を通されて上半身を固定されてしまった。必死に引き剥がそうとするが、相手は年上の男。素の力では負けてしまう。


「離せ!」

「黙れ!この芋女が!」

「ぐっ…」


取り巻きの1人がユナの頬を引っ叩く。


「今です!ジャーグ様!」

「…フフフ…よくやりましたね。そして其処の芋女…よくも…よくもこの私の顔を殴りつけてくれましたね!」


と、ユナの腹を思いっきり殴った。


「が?!」


ユナの目に涙が滲む。

殴り方は素人のそれだが、それでも年上の男に全力で腹を殴られれば結構痛い。其れに…


「痛いですか?当然です。私は此れでも武闘家の職業でしてね」

「げほ…げほ…」

「ほれ!ほれ!ほれ!」


腹を狙って続け様に殴る。ユナは苦悶の表情を浮かべ、ジャーグはそれを見て気色の悪い笑みを浮かべる。


「苦しいですよね?ほら、その苦しみを和らげて差し上げますよ」


そう言うとジャーグはユナの首を締め始めた。


「か…かは…!」

「ほーら。殴られた痛みも和らぐでしょ?フフフフフ…」

「あ…か…やめ…」

「ならまた殴って…」


シュ…

場におかしな音が響くと同時に、首を締めていたジャーグの二の腕が三等分され、腕の肉が落ち、鮮血が吹き出し、ユナとジャーグ、床を汚す。


「あ…あああああああああ?!?!私の腕がーーーー?!!!無い?!ないいいいいい?!!」


ジャーグは悶絶する。

取り巻き達は理解が追い付かず、唖然としている。

ポタン…と血の滴る音がし、その方を取り巻き達が振り返ると、其処には6本の腕の内の2本に血が付いた包丁を持った家事王が居た。


「…何をしてるんです?早くユナ様を離してやって下さい」


そう言う家事王の声は、感情をかなぐり捨てた様な声だった。

そう言って包丁を振り、血を落とす。

取り巻き達はなお理解が追い付いていない。


「聞こえませんでしたか?ユナ様を離しなさい。でなければ、腕を切り落とすだけでは済みませんよ」


その声を聞き、ようやく取り巻きは慌ててユナを離す。

が、家事王はユナを拘束していた取り巻きの両耳を瞬時に切り落とした。


「ぎゃあああああ?!!なんで?!なんでぇ?!!耳がああああ?!」

「腕を切り落とすのは勘弁しましたが、何も切り落とさないとは言ってません。一度で聞き取れない耳なんて無くても同じでしょう?無駄な物が無くなって良かったでは無いですか」

「いああああ?!ぎゃああああ?!!」


ジャーグと取り巻きが暴れるせいで辺りに血が撒き散らされる。


「本当なら、ジャーグさんと取り巻きさん…貴方方の両腕は肩から切り落としても良かったんですが、残念ながら私、抵抗の意思の無い者に暴力を振るう事は固く禁じられてましてね。ありがたく思って下さい」


家事王は真っ直ぐユナの元に向かう。


「…下賤な者共の血で汚れてしまいましたね。気分は害していませんか?」

「…家事王…」


その声は震えていた。果たして何に恐怖したのか。

ユナは家事王がジャーグの腕と取り巻きの耳を切り落とした事に恐怖した。

ユナは人の血に恐怖した。


「…」


家事王は何も考えず、何も言わずにユナを見つめた。

ユナは、床と自分を汚す血を見て、のたうち回る2人を見て、そのまま気を失ってしまった。


「…」

「な、なんなんだこの惨劇は…」


すると其処へクロームがやって来た。


「あら。クローム先生。どうしましたか?」


何時もの調子で家事王は問いかける。

クロームは家事王が包丁を持っている事から、家事王が主犯だと予想した。


「…家事王…お前がやったのか?」

「ええ」

「何故だ?」

「いやー…其処の豚がユナ様を芋女呼ばわりし、私を鉄屑と呼んで、取り巻き達に蹴られ、其れをユナ様がお怒りになってしまって豚を二発殴り、取り巻きの1人がユナ様を拘束して、豚がユナ様を殴り続けたので、豚の腕と取り巻きの耳を切り落としただけです」

「…ユナの立場が危うくなるぞ?」

「…フフフフフ…」

「?」

「無いですね、其れは」

「…大人しく付いて来い」

「構いませんが、早くユナ様と豚共を医務室に連れて行ってやって下さい」

「…一応、お前は検察にかけるぞ」

「どうぞ御自由に」


クロームが事前に呼んでおいたのか、直ぐに教師が何人か来た。

場の凄惨さに驚愕しつつも直ぐに皆を抱き起こして医務室に連れて行った。

家事王はクロームがフルヘンシオの元に連行した。

フルヘンシオは引退したとはいえ元Sランク冒険者。万が一家事王が暴走した時に押さえ込むためだ。


「家事王ちゃん。貴方、何をしたか分かってるの?」

「腕と耳を切り落としましたね。それが何か?」

「何でそんなことしたの?」


家事王は包み隠さず話した。


「…此れはジャーグの方が悪いわね。家事王ちゃんの話を聞く分には、だけど」

「おや。私が虚偽の報告をしたとでも?」

「いいえ。私は家事王ちゃんを信用しているわ」

「アレですか?あの豚共の家柄的な問題ですか?」

「そう。ユナちゃん達って勇者だけど、貴族の血は流れてないでしょ?」

「恐らく」

「其れが問題なのよ。ユナちゃん達が勇者だとは公表出来ないから、ユナちゃん達は飽くまで唯の庶民なの」

「あー…どうせ、豚共の実家は裁判に持ち込もうとするでしょうね。貴族相手じゃ分が悪い」

「此の件に関しては緘口令に似た物を敷くけど、ユナちゃん達は大分肩身が狭い思いをするわよ」

「ふむ…」

「けど、家事王ちゃんの気持ちは分かる。其れ程、ユナちゃんの事を大事に思ってるのよね。安心して頂戴。貴方達の事は、私が何とかするから」

「…無理をなさらないで下さい。罰があるのなら受けますので」

「貴方は、私達の学園に所属するロボットよ。当然、私には貴方を守る義務があるの」

「…感謝します。校舎長殿」


そう言うと家事王は頭を下げた。


「一先ず、現場の掃除は家事王ちゃんがして頂戴。掃除は得意でしょ?」

「お任せ下さい。では失礼します」


そう言って家事王は出て行った。


「フルヘンシオ校舎長…よろしかったんですか?」


クロームが恐る恐る尋ねた。


「良いのよ。ジャーグの行動は少し耳にしてたけど…ちょっと度が過ぎたわね」

「しかし、いくらなんでも切り落としてしまったのは…」

「じゃあ、ユナちゃんの腕と耳を切り落とす?」


私にそんな事を決断しろと?とクロームを威圧する。


「…いえ…」

「それに、『学園のゴーレムが生徒に危害を加えた』と言う事実が露見すれば、此の学園は直ぐ様機能出来なくなるわ」

「…はい…」


事件の進展は非常に速い物だった。その日中に方がついた。

結局、此の件はフルヘンシオの杞憂に終わった。調査を入れた結果、余罪がかなり出て来た為に問題が大きくなり、家事王に構ってる場合じゃ無いと言う事で家事王の件は不問となった。

当のジャーグや取り巻きは厳重注意なんかでは済まされず、ジャーグは停学2ヶ月、取り巻きは停学1ヶ月の罰となった。

フルヘンシオの緘口令が効果を発揮したのか、ユナや家事王については特に知られる事は無かった。また、誰も事件現場を通らなかったのも非常に運が良かった…のだが、ユナは責任の一端を感じてしまっており、その表情は暗い物となっている。

此処で冒頭の場面に戻る。

ユナは外傷自体はなかったものの、少し口の中を切っていたのと、腹に痣が残ってるので簡易的な処置を受け、一応病室で寝かされてる形だ。


「確かに、私も怒りの余り腕とか耳を切り落としたので私も十分問題ですが、元はと言えばユナ様があそこで殴らなければ事は大きくならなかったんです」

「…分かってる…」


いじけた様子でそう答えた。


「私の事であそこまで怒って下さった事は非常に嬉しいのですが、頼みますので御自身の身を第一に考えて下さい」

「…だったら、家事王も自分を大事にしてよ…」


紛れも無いユナの本心だ。ゴーレムだとかロボットだとかは関係無く、そう思っている。


「私はユナ様にお仕えするべく作られたロボットです。ユナ様の為にこの身が壊れるのなら本望です」

「…まるで、騎士様みたいだね」

「どうでしょうかね。兎も角、今後はくれぐれも簡単に手を出さない様にして下さい。どうしても我慢出来ないのなら、決闘でも申し込んで合法的にコテンパンにしてやって下さい。私も我慢しますので」

「…ねえ…」

「何ですか?」

「…家事王は…初めて人を斬った時、どう思ったの?やっぱり、モンスターを斬り付ける時とは全然違うの?」

「何故そんな事を聞くのです?」

「…私って…でしょ?」

「ええ」


大きな声では言えない。自分が勇者だと言う事は。


「もしかしたら、人を斬らないと行けない時が来るかも…って思って…」

「来ますよ、その時は」


何の躊躇も間髪も無く家事王は答えた。


「何も勇者の仕事は、魔王を倒すだけじゃ無いんですよ。人間にとって害悪となる存在を滅するのが貴女であると記憶しています」

「…多分あってるけど…」

「人間にとって害悪となる存在が人間では無い、と言い切れますか?」

「…」

「残念ですが、其れが人です。そして先程の質問にお答えしましょう。私は特に何とも思いませんでした。私が仕える御方の害悪となる存在と言う点において、モンスターと人との間には何ら壁も段差もありません」

「そう…なんだ…」


バーン!と医務室の扉が開き、アシリカとメリカが駆け込んできた。


「大丈夫ですかユナさん?!」

「校舎長から聞いたわよ?!アンタ何やってんの?!」


おやおや。意外にメリカも心配していた様子。


「2人とも…」

「年上の男に勝てるわけ無いでしょ!」

「ユナさんが強いのは知ってますが…」

「それに、腹に痣ができるまで殴られたんですって?!何の抵抗もしなかったの?!そいつの股蹴り上げるなり、アンタを捕まえてた奴の顔面に頭突きする位の事は出来たでしょ!」

「メリカさん。ユナさんに喧嘩の方法なんて教えないで下さい」

「知ってて損は無いでしょ!」

「まあそうですけど…」

「…心配してくれてるん…だよね?」


2人の会話に割り込む形でユナがメリカに質問した。

無論、メリカは肯定するはずも無い。


「バカ言ってんじゃ無いわよ!誰がアンタみたいなトラブルメーカーを心配するのよ!」


案の定ツンツンである。


「しかし、痣程度で済んで良かったですね…一応回復魔法を掛けておきます」

「ありがとうアシリカちゃん」

「我が体に流れし魔力よ。傷を治したまえ。ヒール」


ユナの腹の痣の色が、健康的な肌の色に戻っていく。


「治った様で安心です」

「…それで、家事王さんがユナさんを殴った方を斬ったと言うのは…」

「ええ。確かに、この包丁で斬りましたね」


そう言うと家事王は、2丁の包丁を何処からとも無く取り出した。


「幾ら何でも、腕を斬り落とすのは不味かったんじゃ無いの?」

「まあ、彼らが停学を解かれた後に復讐してくる可能性は否めませんね。だからこそ、腕を斬り落としたんです。少なくとも、ユナ様を殴った方の職業は武闘家。素手素足による肉弾戦を得意とする職業ですので、職業生命を4分の1削って差し上げましたね。まあ此れに懲りて、真っ当な人生を歩んで頂きたい物です。腕一本でより良い人生が買えたなら安い物でしょう」

「もし其れで復讐しに来たら?」

「此れ以上私が手を下す事は、フルヘンシオ様や学園の皆様に迷惑が掛かるので、司法に任せましょう」


てっきり、殺しにかかると言う返答をする物だと思っていたメリカは少し驚いた。


「ふーん…」


ユナは信じてない様子だ。

ただ、家事王が自分の為にしてくれた事とは理解してるので、それ程まで不信感を抱いている訳では無い。


「何なんですかその目は…」

「絶対に何かするでしょ…」

「しませんよ」

「…まあいいや…よっこらせっと!」


全快したユナはベッドから降りた。


「ユナ様。もう少し寝ていて下さい」

「もう治ったもん」

「そういう問題では無いんですが…はぁ…まあ良いでしょう」


医師からも許可を貰い、その日は部屋に帰り、家事王お手製のコンポタージュを飲んで寝た。


一方その頃のジャーグはと言うと…


第三の塔の彼の部屋で暴れていた。

斬られた腕には包帯が巻かれている。

その様子を、彼の部屋の岩製のゴーレムが静かに見ていた。

岩製のゴーレムの表面には砕けている所が幾つも見受けられるので、時々サンドバッグにされていた様だ。


「クソ〜…クソ…!クソ!あのダルマの鉄屑が!よくも私の腕を斬り落としやがって…!痛い…痛い!!」

「…」


ゴーレムは静かにジャーグを見つめる。


「それにー…停学にすべきは私では無くてあの芋女では無いか…!しかも…あの芋女が今噂になっている転入生だと〜…?じゃあ…あの鉄屑ダルマが最高級のロストテクノロジーの産物だとでも言うのか!認めん!私に逆らった奴らがそんな筈は無い!」


既に彼の頭の中では、彼に都合の良いロジックが組み立てあげられている様だ。


「お前もなんか言え!」


直ぐ近くにあった、水の入ったコップをゴーレムに投げ付けた。

ゴーレムは特に動じず、そのコップに当たる。コップは無論割れるが、ゴーレムにダメージは無い。


「言えと言ったのが聞こえないのか!この岩の塊が!」

「…」


ゴーレムは特に何の反応も見せず、黙々と割れたコップの破片を拾い始めた。

その様を見て、よりイラついたジャーグが、斬られていない方の腕でゴーレムを殴る。

いつもであれば表面が砕けるのだが、今回は違った。

表面が砕ける事は無かった。逆に、ジャーグの手に鈍痛が走った。


「ぐぎゃあ??!!」


何故だろうか。ゴーレムが何かしらの障壁を張った形跡は無い。

兎に角、ジャーグの拳はゴーレムの体を砕けなかった。


「な…な?」

「…」


ゴーレムは意にも介さず、コップの破片を拾い終え、ジャーグのいる部屋から出て行った。

そして、ジャーグの拳がゴーレムに振われる事は遂には無かった。



一方、ウルベモルティスより少し離れた場所にて、3人の人影が見える。


「おらお前ら。もうちょいでウルベモルティスに着くんだ。へばるんじゃねえ」


ガタイの良いスキンヘッドの大男が他の2人を鼓舞する。


「あいあいさー…けど、ちょっとだけ休ませて?」


若干チャラチャラした男だ。


「さっき休んだばっかでしょ。どうせあっちに着けば休めるんだから頑張ってよね」


しっかり者風の女が男を励ます。


「でもよー…」

「ぐう垂れる余裕があるウチは問題ねえだろ」

「へーい…ちぇ…」

「と言うか、お前がこの依頼を受けたいって言ったんだからな」

「そうそう。私達にはやる事があるのに…」

「こんな大陸の端っこじゃ集まるもんも集まらねえって…」

「いや、けどさ?此処が人間の大陸では一番安全だから、栄えたんじゃ無いのか?多少遅くなるかも知らねえけど、確実に情報は手に入れられるって」

「わーってるがよ…」

「其れに、資金も稼げるしな」

「全く…金払いの良さだけで選びやがって…俺は貴族とかそう言うのは大嫌いなんだよ」


大男がウンザリした口調で話す。


「まあ気持ちは分かるわよ。けど、背に腹は変えられないでしょ?」

「確かに資金は大事だがよお…」

「そう言う事でお前も了承したんだから、グジグジ言うなや!」

「いやなんでお前が上から目線なんだ」

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