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Part6 浩伯の世界

「――......ルト。ハルト。いつまでノビているのですか」


 無の中を漂っていた俺の意識は、真耶の声に掬い上げられる。


「着きましたよ、ホラ早く」


 着いた? どこに?

 てか起こす為にアゴ叩くとか、結構乱暴ですね真耶さんや。

 凄く脳に響くから止めて欲しいナリ。


 あー床が冷たい。と言うか硬い。

 なんだこの材質、土じゃないけど......?


「ん、んん......」


 目を擦りながら、俺は上半身を起こした。

 手元を見る。どうやら、俺は白いタイルの上に寝転んでいたらしい。

 どこだ、ここ?


「あ、起きたの? おはよー」


 声がした方を向くと、やや離れた所に一人の人間が立っていた。

 白い肌に、白い髪。天龍砕 ミツキ。

 そうだ、俺はドラゴンに変化したミツキに運ばれて......


「ってそーだ、『ドラゴン』! ミツキのあの運び方、凄く怖かったんだが!?」

「え、そうなの!? 気持ち良いと思ってくれるかなーって......ごめんねー?」


 手を頭の後ろに回し、申し訳無さそうな顔をするミツキ。

 悪気は無かったんだろうけど......やっぱり感覚がズレてる感じが否めない。

 まあいいか。運んでもらったのは事実だし、これ以上言うとネチっこくなる。


 気持ちを切り替えて、今俺が居る場所について考えよう。

 さっき真耶が『着いた』って言ってたけど......


「ここがオモシロ高校、で合ってるのか?」

「うん、そうだよー」

「......」


 そうだよー、って言われてもなぁ。

 ぐるりと周りを見渡しても、真っ白な床と青空が広がっているばかり。

 唯一あるとしたら、ポツンと小屋のような物が立っているだけだ。


「高校って感じしないんだけど?」

「そんな事無いよー。こっち来て?」


 チョイチョイと手招きをするミツキ。

 俺は立ち上がり、言われるがままミツキの所まで行こうと――


「これは......」


 する前に、下に広がっている景色に気付いた。

 白だ。異様なまでに真っ白で、幾何学的な形の建物群が、俺の視界を埋め尽くしている。

 加えて、周囲に張り巡らされた水のプロムナードも目を引く要素だ。

 一方では水路が建物の間を縫い、また一方では屋根の上から水が駆け流れ。

 水源が何処かもあやふやで、ともすればそれらの軌跡は超自然的なアートに見えてくる。

 学校と言うより、未来都市みたいだ。


「どうどう、驚いた? これがミツキ達の学校、主代高校だよ!」

「これが......」


 敷地の広さとは違った引き込まれるような感覚に、つい言葉を忘れる。


「あーまあ、何と言うか。変わってるなー、って感じがする」

「だよねー、皆そう言うんだー」


 俺の反応を見て、エヘヘーと笑うミツキ。

 間の抜けた声を漏らしつつ目の前の光景を眺めていた俺だが、ふとある事を思い出す。


「そうだ忘れてた、ニーナに連絡しないと」

「えっ、ニーナちゃん?」

「動作テストの会場まで案内してくれる事になってたんだ。ええと、スタホは......」

「私から既に連絡しています。もうそろそろこちらに着くと思いますが」


 おお。流石真耶さん、出来る女性だ。


「まーまー、そんなカッカせずに......」


 噂をすればなんとやら。

 ポツンと佇むドアの向こうから、腹立たしくもよく通るニーナの声が聞こえて来る。

 でも......なんだ、この声色?

 慌てているようで変に声を上ずらせて......もしかして、誰かをなだめてる?

 そう言えば『カッカするな』って――


[バァン!]


 直後、力強くドアを開け放つ音。

 その向こうに立っていたのはニーナと――


「ん、誰だ?」


 男だ。学ランに身を包んだ男子生徒で、十中八九ここの生徒だろう。

 モチロン、俺はこの生徒の事を知らない。が、一つ分かる事がある。


 この生徒、かなり怒ってるっぽいぞ......


「レイド!」


 それに気付いたミツキが、嬉々とした表情で男子生徒の方を向く。

 え? 『レイド』? それがあの男子生徒の名前なら、相当なキラキラネームだな......


「聞いて聞いて! ミツキね、そこの人達を助けたんだよ!」

「あっ、オイ!」


 近づいて大丈夫なのか、と声を掛けるヒマも無く、ミツキはレイドの元へと駆け寄る。


 笑顔を弾けさせるミツキ。

 黙ったまま両腕を広げるレイド。


 そしてミツキが飛びかかろうとした瞬間――


「ミ゛ぃーツ゛ゥーキ゛ぃィィィイイイ!!!」

「ひゃあぁぁあ~~~!?」

「また世間を騒がしやがって! 何度言ったら分かるんだ、お前はぁ!?」


 レイドの両手がミツキのコメカミにドッキングされ、グリグリとねじ込まれた。

 うん、知 っ て た。


「イタタタタ! 痛いよレイドぉ!」


 ......なんかグリグリするの長くないか?

 もう五秒以上、グリグリの刑が執行され続けてる訳なんだが。

 しゃーない、ここは助けてやろう。


「ま、まあまあ。その辺にその辺に。俺達がミツキに助けられたのは事実なんで......」


 小走りで、俺はレイドに近づく。

 するとレイドはミツキを手放し、スッとこちらを向いた。


 身長は俺と同じくらいだろうか。

 やや長めに伸びた、パーマ混じりの黒髪。

 目元にクマを浮かばせ、その奥からは人を射るような――いや、刺すような鋭い三白眼が光る。


 こ、怖え。よくラノベや漫画とかで『人を殺してそうな目』って言うけど、コレは間違いなくその類だ。

 エンガとは別ベクトルの威圧感に、心臓がキュッと縮こまるのが分かる。


「ああ、アンタ達が......。うちのミツキが迷惑かけたようだな。悪かった」

「えっ!? ヤまあ確かに荒っぽかったけどここまで連れて来てくれたし......どっちかと言うと有難かった、って感じか」


 びっくりして変な声出たんだが。

 それにしても意外だな、ミツキへの接し方とか眼付きからして、ぶっきらぼうなヤツかと。

 ちょっと言葉遣いが粗雑だけど、低姿勢だ。


「って言うか、『うちのミツキ』って?」

「まだ名乗って無かったな。俺は天龍砕 レイド、こいつの......兄、みたいなもんだ」

「なるほど......あ、どうも」


 挨拶されると同時に名刺を渡された。

 この高校の生徒、名刺持ってるヤツ多くないか? なんて思いながら目を通す。

 ふむふむ、『主代高校 三年生 生徒会長 天龍砕 嶺土』か。レイドってこう書くんだな。


 って、生徒会長だとッ!?


「『兄みたいなもんだ』じゃないよー! レイドはね、ミツキにとって自慢のお兄さんなんだ!」

「よせ、そんな立派なもんじゃねぇよ」


 床に座ったまま意義を唱えるミツキの頭を、レイドはグイと抑え込む。

 ほうほうナルホド、兄妹ねぇ。ガゼン興味が湧いて来たぞい。

 もちろんアッチッチーな意味では無いけどさ。


「で、アンタは北条 ハルト、少し後ろに居るのが藤宮 真耶だな?」

「え? あ、ああそうだけど」

「この高校の奴らは常識外ればかりだ。もし何か迷惑な事をされたら......俺の所に連絡してくれ」

「わ、分かった。ありがとう」


 畳み掛けるようなレイドの言い方に、やや気圧される。

 年下だってのに、何か凄みがあるんだよなぁ。


 と言うか、俺はともかく何で真耶の名前まで把握してるんだ? ......いや、生徒会長だから、その辺り押さえてるのか。

 加えて、一般人視点でのオモシロ高校の生徒の見え方も分かっている。

 うん、頼りになるお兄ちゃんじゃないか。


「俺はこれで失礼する。それと......高梨 仁奈(ニーナ)

「わ、私ですか?」

「後で生徒会室に来い」

「何故ぇ!?」

「ミツキには勝手に外に出ないよう、普段から釘を刺してるからな。それを破ったんだ、どうせお前がそそのかしたんだろ」

「ギクリ」


 冷や汗を垂らすニーナ。

 そう言えば、ミツキがそんな事言ってたな。


「図星か」

「ちょ、もしかしてさっきの発言、確信が無いのに言ったんですかぁ!?」

「んな事はどうだって良い、お前が原因である事が分かった以上、な」

「ぎゅむぅ......」

「案内が終わったら来るように。いいな?」

「......はい」


 あのニーナを黙らせた......だと!?


「……と、長居しすぎたな。ミツキ、頼むぞ」

「うん!」


 チラリと腕時計を見たレイドは、溜息混じりにミツキの肩に手を当てる。

 それを合図に、背中から翼を生やすミツキ。

 そしてレイドの脇の下を抱え、バサリと力強い音を立てながら屋上から舞い降りて行った。


「何か、俺より年下なのに落ち着き払ってる、ってか......」

「泰然自若、そう呼ぶにふさわしい方でしたね。ハルトも見習ってください」

「ウグッ」


 そそっかしくて悪ぅござんした。

 でもあそこまで腰の据わった男子高校生って珍しいと思うんだ。

 オモシロ高校だし、もっと“ウェーイ”な奴ばっかりかと思ってたけど、そうでもないらしい。

 と、後ろでニーナが大きな溜息を付く。


「はぁ~あ、一時間説教コースですか」

「あっ、“ウェーイ”してそうな奴」

「シツレイですね、“ウェーイ”じゃ無いですよ、私は。“ヒューウ!”ですよ」


 何がどう違うんだよ、ソレ。


「ま、こんな所にずっといても意味ないですし。改めまして、ようこそ主代高校へ。動作テストの会場まで案内しますんで、ついてきて下さい」

「ん、分かった。......変な所連れて行くなよ?」

「しませんってば。そんな事したら説教が延びるんですから......」


 珍しくも心底嫌そうな顔をするニーナ。

 よっぽどレイドの説教が嫌いみたいだ。


 レイドが来たドアから階段を降りる。

 俺達が居たのは学生寮の屋上らしい。

 何でもオモシロ高校の殆どの生徒は寮生活で、高校は平日も祝日も多くの生徒が居るそうだ。

 加えて休日でも学校の設備の利用は自由だから、部活等の課外活動が盛んになる。

 結構自由度の高い高校なんだな。

 その辺りは素直に羨ましい。

 

 そして学生寮の外に出ると、あの白い景色が目に飛び込んで来る。

 白い壁に、ガラスのような透明度の水。

 土や植物もあるにはあるが、どれもコンクリで囲まれている上に等間隔配置。

 やっぱり学校より未来都市って感じだ。

 これまで体験した事の無い雰囲気だから、結構引き込まれる物がある。


 独特な世界観を感じつつ暫く歩いていると、不意にニーナが足を止めた。


「っとぉ着きましたよ。ここが“ウィザード”動作テスト会場の、井澄 剛のラボ兼自宅です」

「ここが――って、そこまで広くないな?」

「大体が地下施設なんです。さー行きますよ」


 ニーナが扉に近づくと、自動ドアが音も立てずに開く。

 その直ぐ奥には、地下に続くであろう階段が俺達を待ち受けていた。


「ハルト、行きますよ。こんな事、早く終わらせてしまいましょう」

「ああ、そうだな」


 警戒してても仕方がない。

 俺と真耶は臆する事なく、テンポ良く階段を降りて行く。

 さてさて、何が出て来ますかねぇ......

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― 新着の感想 ―
[良い点] 近未来的な高校、キターッ(*≧∀≦*)!! ミツキちゃんといい、レイドくんといい、キャラ立ちしてていいですね♪♪あのニーナさんとの力関係もおもしろい(笑)。 これからの活躍に期待してます\…
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