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こんな異世界、お兄さんは認めません!  作者: アカポッポ
間章 ただそれだけの話
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妹の連絡先を入手するだけの話③

 ニーナにソラの友人達の住所を教えて貰ってから、小一時間後。


「はぁー、アッツいなぁ……」


 バスと電車を乗り継ぎ、今俺とニーナが居るのは常明学園の周辺地区だ。

 あの後、真耶に言われて教えられた住所を調べてみたが、どれも普通の民家、もしくはアパートがヒットした。

 特に疑う余地は無し、だったら早速行動しようという事で藤宮家を出たのだが……外は予想以上の猛暑だったと言う訳である。


「ほーらー、時間が勿体ないですから! 早く歩いてくださ~い」


 数十メートル程先の地点で発せられるニーナの声が、ガンガンと頭に響く。

 梅雨の時期にも関わらず、今日は良く晴れている。そのせいで昼過ぎになると結構暑い。

 普段屋内で勉学に励んでいる俺にとって、この日差しは結構堪えるのだ。

 と言うか元気過ぎないかニーナのヤツ。汗一つかいてないってどういう事だ。


「そもそも、何でお前が付いて来てるんだよ」


 暑さに耐えながら、俺はニーナに追いつく。


「いやー、ハルトさんの情報が得られたりしないかなー、なんて思ってたり?」

「さっきからゴマ擦るような笑顔浮かべてるのはそう言う事か。でも、何も出ないからな?」

「そんな事言わずに。ホラ、今さっきで歩き始めて3kmですよ。何か話してくださいよ?」

「人の情報をゲームのボーナスポイントみたいに言うな!」


 ホント何なんだコイツ。一緒に居ると反って体温が上がりそうなんだが。


「まーまー、そう邪険にせずに。それに、私が居た方が今会いに向かっているシュウさんとも話が付けやすいかもしれませんよ?」

「と言うと?」

「ハルトさん自身はシュウさんの住所知ってないですよね? となると、突然会いに来たら、『何で俺の住所知ってるんだ』って思われません?」

「まあ確かに……そうかもしれないが」


 態度は腹立つのに、言ってる事が正しいのが余計に腹立つな……


「そこで! オモシロ高校 報道部の私の名前を出せば、万事解決! という訳です!」

「ホントかよ……」


 何だその『オモシロ高校なら大丈夫』、みたいな展開。有難いっちゃ有難いが逆に怖い。


 などと雑談している内に、シュウが暮らすアパートの前まで着いた。

 ちなみにシュウから回っている理由は、教員の一人として連絡先を知らされてるかもしれない、という予想からだ。

 暑いのも嫌なので、早速入ろうとする俺達。


「おや? ハルトじゃないか」


 その時、探しているシュウ本人に呼び止められた。右を向くと、アパート共用の公園からシュウが姿を現す。


「先日ぶり。ちょっとシュウに用事があってさ」

「俺に? そもそも、よくここが俺の住んでるアパートだって分かったね?」

「あー、それなんだけど」


 おっと、早速聞かれるのか。

 なら一度、さっきニーナが言ってた事を試してみますかね。

 意地悪が過ぎるって? 別に良いじゃないか、ニーナ相手だし。


「知り合いに主代高校の生徒が居てさ。今、俺の後ろに居る子なんだけど……」

「ども、主代高校二年 報道部所属の高梨 仁奈と申します!」


 横から出てきてスッと名刺を渡すニーナ。意外に堂々としてるな。

 だが! ニーナの威勢がどれだけ良くても、結局シュウの認識が覆る訳では――


「フム、確かにオモシロ高校の子だね……」


 エ、ちょシュウさん? 何で真剣な表情で名刺見てるんです? 

 少し引いたような溜息まで吐いてさ、まさかそんな事がある訳――


「まあ……そう言う事なら、知っててもおかしく無いかもしれないね」


 マジで通るんかーい!

 この高校のネームバリュー何なんだ、一体!?


「それで、俺への用事って?」

「え? あ、ああ。実は俺、ソラの連絡先知らなくてさ。シュウなら知ってるかなー、って思ってきたんだけど……」


 予想が外れた事を隠す為に、曖昧な笑みを浮かべながらシュウに聞いてみる。

 するとその表情を見て何か察したのか、シュウはフムと声をあげた。


「済まないけど、俺が知ってるのはソラ……君が暮らす寮の部屋の番号だけでね。でも、ハルトが知りたいのはソラ君個人の番号だろう?」


 ホントに察し良いな。シュウさんマジ優シュウ。


「ああ、そうだけど」

「なら、分かった。今から寮に電話してみるよ」

「マジか、有難い」

「ただし、ソラ君が電話に出たら、その後はハルトに交代するからね?」

「ヘッ!? 待ち待ち、心の準備が……」

「そこは本人の口から話して欲しいんだが……ソラ君と言い、本当に何があったんだい?」


 狼狽える俺の様子を見て呆れ声を出すシュウ。

 数秒後に受け付けの人が出たのか、何やら話し始める。が、二言三言やり取りした所で電話を切ってしまった。


「駄目だ、出掛けているらしい」

「そうか、電話までかけてくれたのに悪いな」


 とは言いつつも、内心ホッとしてたりする。

 いや、だってちゃんと話せるか不安だし。

 そう言えば、電話に出る前に俺の事を勘ぐってたな。聞かれない内に、話題を切り替えよう。


「ところで、シュウはさっきまで何してたんだ?」


 話題の転換先は、ずばりシュウの事だ。

 俺の視線の先にはコンクリブロックと、その周辺に空き缶が散乱している。

 お酒や炭酸飲料の缶ではなく、どれもエナドリやスポドリなのが真面目な雰囲気漂わせるなぁ。


「ああ、これかい? 風の共鳴術の練習でね。風の中に粒状にした自分のマナを混ぜ込んで、対象を切ろうとしていたんだ」

「ああ、ヒュウランがこの前やってたアレか」


 先日の襲撃事件の事がふと頭を横切る。

 ソラを助ける為学園に駆け込んだ、そのすぐ後。

 ヒュウランが俺に対して初めて仕掛けた攻撃がアレだった。


「詠唱無しで斬撃繰り出すんだもんなぁ。あのレベルになるとスキルと言うより魔法って感じだけど」

「いや、この前の襲撃時、あの三人は天候を操作して巨大な雹を降らせてる。あれと比べたら、まだまだだよ」


 そう話すシュウの表情は、真剣そのもので。

 顔をしかめた苦々しい表情が語るのは、将に自らの未熟さを悔やむ様子だった。


「そっか、あんな事があったからシュウも備えてるのか……」

「! 違う違う、そうじゃない!」


 だが、俺が感慨深げに話した途端、シュウはらしくもない慌てっぷりで俺の言葉を否定した。


「え、違うのか? 演技してるような表情には見えなかったけど」

「あくまで指導員としての技能を保つ為さ。生徒を指導する立場の者が怠けていては、示しがつかないからね」

「そう……なのか?」


 改めてシュウの後ろの様子を伺ってみる。

 ブロックは今にも崩れそうな位にボロボロ。

 転がっている空き缶の数も、10個以上はある。

 かなり熱を入れてるように見えるが……?


「私の目にも、単純な指導目的にしては随分と力を入れているように見えますけどねぇ?」


 その様子を見てニーナもおかしいと思ったのか、俺の横から声をあげる。


「最近、他の用事が立て込んでいたからね。久しぶりにすると勘が鈍っていて、困ったもんだよ」


 そうシュウが返すも、ニーナはふーん、と言って含みのある笑顔を作る。


「それより、この後ハルトはどうするんだい? ソラ君の連絡先、諦めてないんだろう?」

「ああ。次はサキトかヒカルに当たろうかなって」

「そうか、分かった。ところで俺もハルトの連絡先を知らなかったし、教えて貰っていいかな?」


 確かに言われてみれば。今後も何かと会う気がするし、交換しておいて損は無いんじゃないか。


「じゃあそうするか。俺の連絡先は――」


 こうして互いの連絡先を交換した後、シュウの居るアパートを離れる。


「さてと、ここからの距離なら、次はサキトか。高校生って遊び盛りだからなぁ、自宅に大人しく居るのか微妙だけど」

「案外大丈夫じゃないです? ハルトさんみたいな出不精も居る訳ですし!」

「うんソレ一瞬俺も思ったけどさ、何で口にするかな!?」

「私なりのフォローです、効いてるでしょう!」

「別の意味で効果バッチリだよっ、と!」

「アタッ!? 何するんですかハルトさん!?」


 ニーナの額をこつくと、ブーブーと文句を垂れて来る。ああもうやかましい。オタクの傷を抉るんじゃないよ。

 そんなニーナをテキトーにあしらっていると、サキトが暮らすアパートには割とすぐに着いた。

 部屋の前に立つも、中から目立った音は聞こえてこない。

 留守なのかと思いもしたが、取り敢えずインターホンを押してみる事に。


[ガチャリ]

「…………」


 すると、半分ほど開けたドアから一人の人物が姿を現す。

 サキトを二回りほど小さくした感じで、多分弟クンなんだろう。

 口を開かず、仏頂面でコチラを睨んでいる。


「えっとお兄ちゃん居るかな?」


 少し高めの声で、なるべく威圧感を出さないように気を付けつつ話しかけると、弟クンは開口一番大きな溜息をついた。


「んだよ、ニィのダチかよ。アイツなら、少し前にメガネかけたヤツと一緒に公園に行ったから」

「眼鏡……ああ、ヒカルか」

「ッタク、高校入ったらツルむやつコロッと変えやがって。あんなメガネの何が面白ぇんだか。……んで、オマエ何!」


 アク強いなぁ、この弟クン。

 サキトの倍ぐらい口を悪くした感じだ。エンガみたいな威圧感は無いけど。


「いや、サキトが出掛けてるって分かったら良いんだけど――」

「そーかよ。ケッ、ヒトんちにカノジョ連れてノコノコ現れやがって。おめでてぇヤツだな!」

「んなっ!? 違――」

[バァン!]


 説明の余地無く、弟クンは勢いよくドアを閉めてしまった。ホント愛想悪いな、この子……。


「あー、ハルトさん? 私ハルトさん程度の人とは釣り合えないって言うか――」

「口に出して否定するなし! てか、そのフリ方かなり心に刺さるんだが!?」

「アナタの心に刺さる言葉を! 高梨 仁奈でございますっ!」

「やかましいわっ!」


 何か色々疲れてきた……

 もうやだ、さっさとソラの連絡先入手して帰りてぇ、トホホ。


【お知らせ】 


 先程、第一章の差し替えを行いました。

 当初は第一章から第三章までまとめて差し替える予定でしたが、読み直してくださる方もいらっしゃるかもと思い、その負担を考慮して章ごとに差し替えようと思います。

 第一章の具体的な変更点は、以下の通りです(細かい部分の修正は除く)


ハルトに大きな人生目標が無い事の追記(Part1)

ハルトの位置からウォリッジの顔が見えなかったように修正(Part2)

両親共働きで、平日は家にハルト以外居ない事の追記(Part3)

砂漠に居る間、ハルトが暑そうにしていなかった記述の追記(Part4)

真耶の髪型の細部を変更(Part5)

Part6のタイトルを変更

魔術の説明の内、設定集の内容と矛盾している箇所を修正(Part7)

『エルフ問答』の説明を具体化(Part9)

マヤにネコミミがある説明と、一連の流れを加筆(Part10)

Part10が延びたため、二部分に分割(part11)

異世界で使われている情報端末の名称を、スマホからスタホ(スタイル フォン)に変更(Part11)

マヤとレイヴンに面識があるように変更(幕間1)

マヤのネコミミを見えなくさせている髪飾りの効果が、あと三か月で切れる事を追記(幕間2)

アングラニアが地球のイギリスに当たる事を示唆(幕間3)

マヤにクラッキング技能がある設定を削除(幕間3)


 第二章については今週中、第三章は日曜日を目途に差し替える予定です。

 その際は、後書き・活動報告にて詳細をお伝えします。

 

 今後とも、当作品を宜しくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] オモシロ高校の名刺で事情通るんだ(笑)。 今度、高校の内部潜入したら面白そう♪(/ω\*) 「あなたの心に刺さる言葉を!」の入れ方が秀逸! ハルトくんとニーナさんの掛け合い、一番好きかもし…
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