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こんな異世界、お兄さんは認めません!  作者: アカポッポ
間章 ただそれだけの話
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妹の連絡先を入手するだけの話①

 やあみんな! 北条 ハルトだョ☆

 『みんなって誰だよ』って? そんなの知らんよ、自分で考えな。条件反射トークですよろしくお願いします。

 スローだけどまったり出来ない浪人生ライフ、今日もカフェイン決めつつ頑張り――


「あ、ハルト! おは――」

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ーーー!」

「ッ!?」

「フッ、フッ、フウゥゥゥ……おはようございます、藤宮 アリス様」

「い、一体どうしたのよ……?」

「はは、何でもありませんよ」

「……どう考えてもおかしいんだけど……」


 ある休日の朝、藤宮邸にて。

 使用人室の廊下に並ぶ窓から外の様子を眺めていたところ、アリスに話しかけられた――ので、壁に激しく頭を打ち付けた所存。

 うん、自分で言ってて訳分からんな?


「と、取り敢えず出血止めないと……」

「……」


 戸惑いつつも近寄って、アリスはツゥと血が流れる俺の額に手を当てる。

 治癒魔法の<ヒール>を唱えると、傷はたちどころに塞がった。


「マッタク、突然何してるのよ。壁紙にもシミが出来るじゃない……」


 そう愚痴を漏らしつつ、身体を寄せて綺麗なハンカチで俺の額を拭くアリス。

 優しい香りが俺を包む。

 ああ、この感覚はまるで妹に手当てして貰っているような――


 待て自分、今何を考えた?


 妹、イモウト、younger sister……

 ! 駄目だアリス、それ以上いけない!


「ちょっ、な、何!?」


 勢いよくアリスの手首を掴み、俺の額からその手を離す。


「アリ……いえ、藤宮 アリス様。俺はもう大丈夫ですから」

「いや、どう見ても大丈夫じゃ――」

「俺 is 大丈夫ッ! サラダバー!」


 アリスの右手を振り切り、自室に駆け込む。


「ちょ、ちょっと! ハルト!?」


 そしてドンドンと叩かれるドアを背中に、俺は床にへたり込んだ。

 『大丈夫じゃない』? そんなの、俺が一番分かってるさ。


 ――事の発端は、常明学園の襲撃事件が起こってから数日経った後の事。

 起訴猶予処分が確定し、軟禁状態からも解放されて俺はゆっくりと身体を労わっていた。

 が、疲労が取れれば眠りも浅くなり、夢も見やすいと言うもの。

 そして学園での一件があって以降、あの夢を度々見てしまうのだ。


 そう、トイレの掃除用具入れで体験した、ソラとのアブナイ出来事の夢である。


 最初は変な夢見たなー、程度にしか思っていなかった。が、こうも連日見ると意識してしまうのが、思春期の男子と言う生物。

 内容は日増しに過激になるし、もう四六時中気になってしまうのである。


 だが更に悪い事に、そんな状態でも現実の妹とは会えない分、妹成分は急速に枯渇して行く。

 ソラに会いに行けば良いのだろうが、今の異常な思考回路ではソラに性的な目線を向けてしまうかもしれない。

 純粋な気持ちで愛でたい俺にとっては、とても辛いのだ。


 そんな理由でソラに会えず、かつ悶々とした日々を送っているが故に、何にも手がつかない。

 勉強も出来ないし、食事も喉を通らない。

 身体はやつれ、精神はすり減って行った。


 嗚呼、何と苦しきものか、妹愛よ。

 清らかな心で接したいと願っているのに、実際は醜く悲しい欲望が心の中で渦巻いている。

 こんなに苦しいのなら悲しいのなら・・・・・・・・・・・ 妹愛などいらぬ!!

 そうして俺は、一つの行動を敢行した。


 起きている限り、妹を想起させる対象を遮断する……断食ならぬ断妹である。


 シスコンにとっては、断食よりも辛い決断。

 だが、一度妹をこの脳からシャットアウトし、以前の健全な思考回路を取り戻すにはこれしか無い。


 と言う訳で今の俺は、その断妹の真っ最中。

 アリスは妹を想起させる人物、だからNGだ。

 どうしても話さないといけない時は、頭を打ち付ける等の痛みを以って雑念を追いやり、対応する。


 それと、リーシャからお昼のお誘いがあったが、それも断った。

 すまないリーシャ。でも君も妹っぽいからNGなんだ。どうか許してほしい。

 

 だが、断妹する事で気付かされる、一つの真理。

 世界は、こんなにも妹要素で満ちていると。

 ――ああ、今分かりました。世界は妹で出来ていたのですね。


「あ、真耶、いい所に。そう、ハルトがまた私を避けるのよ。今日は部屋に籠っちゃったし……」


 と、色々振り返っていると部屋の外からアリスと真耶の話し声が聞こえて来た。

 心配してくれているのだろうか。ふふ、済まない。だがこれは孤独な闘い――


「ちょっ!? ダメよ真耶!」


 と、アリスの慌てた声が聞こえたかと思うと


「<ウインド・スラスト>」


 ドアが猛烈な風に押し飛ばされた。

 そのまま倒れたドアに挟まれる俺。


「な、何が起き……ぐぇ」


 そして倒れたドア越しに、真耶の体重が俺の背中に加わった。あ、思った以上に軽い。


「ハルト。最近の貴方は、お嬢様を悩ませているそうですね」

「いや、別にアリスを悩ませたかった訳じゃ――」

「お嬢様を悩ませる人間は、私が許しません!」

「それ自分が入ってないだろぉ!」


 珍しく怒気の込もった声を張り上げる真耶。

 と言うかそんな事言ったら、ソラもアリスを困らせてなかったか? アレどうなんだ。

 いや、困ると悩ませるのは違うのか?

 ……何だか屁理屈を言われた気分だ。


 よっと、と声を上げて、真耶は外れたドアを壁に立てかける。

 頭を摩りつつ、立ち上がる俺。


「そのドア、どうするんだよ?」

「また後で直しておきますから。それで、お嬢様を悩ませた言い訳は何ですか」

「それは……」


 そう言われてもなぁ……。

 妹の事で毎日悶々としてるだなんて、俺も言いたくない。


 それに、シュウ以外にはソラは男性で通ってる。

 ソラとしても、勝手にこの秘密を明かされると嫌なはずだ。

 真面目な話、真耶には相談出来ない訳で。


「……お嬢様、少し外していただけますか」

「え? 真耶、大丈夫なの?」

「ええ、私が話をつけておきますから。お嬢様は涼しい部屋で、お勉強なさってください」

「わ、分かったわ。後はお願いね?」


 さっきの荒業を見ていたせいか、若干狼狽えながらこの場を後にするアリス。

 その足音が聞こえなくなるのを確認してから、真耶は小さく溜息を吐いた。


「で、どんな内容ですか。話辛そうにしている様子から察して、別世界絡みだとは思いますが」

「いや、別にそう言う訳じゃ無いんだが……」


 何か嘘をついて誤魔化すか? でもこの手の嘘、付くの苦手なんだよなぁ……

 などと思案していると、また真耶が溜息を付く。

 そして、ゆっくりと口を開いた。


「ソラさんの……妹さんの事ですか」

「なっ!? 何でその事だって、しかもソラが妹だって分かったんだ!?」

「見ていれば分かりますよ。毎日毎日妹が妹がー、と騒いでいた輩が、ソラさんと会った途端に『ソラがソラが』。初めて再開した時の浮かれっぷりも、露骨に顔に出ていましたからね」

「そ、そうか」

「ソラさんを見ていても思いましたが、貴方達兄妹は隠し事が下手です。根の良さ……いや、甘さのせいでしょうか」

「そこ『甘さ』って言い直す必要あったか?」


 最後に若干トゲのある言葉を添えるの、如何にも真耶らしいな。

 ふとそう思いながら、俺は佇まいを正して真耶に向かい直す。


「分かった、話そう。また話聞いて貰って悪いな」

「お嬢様の為ですから。それで、内容は」

「実は――」


 そして、俺は学園トイレでの出来事と、その後の心境の変化を話した。

 嫌悪感を感じないよう、出来るだけオブラートに包んだ表現で話したつもりだったが――


「……妹を性的な目で見るとは、相変わらず度し難い男ですね」


 俺を見る真耶の目は、完全に冷え切っていた。


「ぐ、そう言われると思ってたけどさ……でも何と言うか、本能的に抗えないというか」

「ええ、十分理解してますよ。そんなものです、男と言う存在は」


 フッと真耶の表情が暗くなる。

 もしかして地雷発言だったのか? 早々に話を戻そう。


「まあ、なんだ。俺だってソラを下賤な目で見たくない。でも電話やメッセでやり取りしたくても、連絡先を知らないからどうにも出来ないんだ」

「なら、知り合いの方からソラさんの連絡先を間接的に教えていただくのは」

「あー、、、んー……」


 良い考えだとは思ったが……ソラの知り合いの連絡先? シュウすら知らんぞ。

 俺の知り合いで、その辺り知ってそうな人物なんて居たっけか……?


「――あ」


 声が漏れた。

 知り合いに学園の関係者が居らず、その外へと思考を向けた瞬間に、ある人物の顔が浮かんだ。

 まだ数回しか会っていないのにすぐに浮かんだのは、その人物の強烈な個性故だろう。


「……ニーナ。オモシロ高校 二年 報道部所属、高梨 仁奈だ」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 最初の一文でハルトくんがキャラ崩壊したかと思いました(゜゜;)(。。;) 事情がわかればよかった、いつものハルトくんですね。安心しました(^^; (いや、よかったのかな??笑) それにして…
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