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こんな異世界、お兄さんは認めません!  作者: アカポッポ
第三章 『6.05 常明学園襲撃事件』
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Part6 もうだめぽ


「あれ? そう言えばハルトって妹を探しに来たんじゃ――ムグゥッ!?」


 反射の如くスピードで、アリスの口をふさぐ。

 今それを口にしようとするんじゃない。

 君のような勘のいいガキは嫌いだよっ!


「どうかされました?」

「え!? あー、いやこの子ね、持病があって時々お薬飲まないといけないんだよ。まだ飲んでないのに今気づいたから、それを飲ませた所で」

「は、はぁ」

「水飲ませて来るから、ちょっとお待ちを~。アハハハハハ」


 モガモガ言ってるアリスを連れて応接室を出て、そのまま正面ホールを通過。階段下のトイレまで連行する。


「プハァッ。な、何するのよっ!」

「いいかアリス。俺は確かに妹を探しに来た。でも、妹とソラは別人なんだ」

「そ、そうなの? じゃあ何でソラ様はハルトの事を兄って呼んだのよ?」

「ソラは同じ故郷で暮らしてたんだ。弟分みたいなヤツだったから、ついつい兄と言ったんだろ」


 ――というのが、昨日ソラとした口裏合わせの内容だ。が、アリスはやや納得していない様子。

 

「大体、ソラが妹な訳ないだろ! 妹ならアイツが女になってしまうぞ!」

「! そ、そうよね! ソラ様が女の人な訳ないわよね!」

「そうそう! 女な訳ないって!」


 スマン、我が妹よ。何かこじれてしまった。


「じゃあ俺は応接室に戻るから」

「あれ、私はもういいの? ソラ様の事知ってるんだったら聞きたいんだけど......」

「そ、そうか? あんまり知ってる感じじゃ無かったし、時間の無駄になるかもだぞ? アリスだって宿題あるんだろ?」

「う、うん」

「だったら戻っておいてくれ。もし新しく分かった事があれば、後で話すから」

「そう、なら分かったわ」


 ゆっくりとトイレから出て、アリスが二階の自室に入っていく所まで確認する。

 ふぅ、ひとまずこれで大丈夫だ。

 俺は応接室まで戻って、ニーナの取材に応じる。


「ソラさんが貴方をお兄さんと言った理由について、聞かせていただけますか」

「あ、それはアイツと昔からの知り合いだったからです。まあ弟分みたいなヤツでして。その時から兄呼ばわりされてましたから、その名残みたいなもんですかね。ここ数年は疎遠だったので、こっちの高校に通ってるのは知らなかったです」

「ふむ、なるほど。ちなみに、幼少期のエピソードにはどのようなものが?」

「それなら――」


 俺はいくつかの話をあげてみる。

 もちろん、これらは全てソラと話して決めた作り話だ。

 話の途中、適度に相槌を打つニーナ。

 だがその声は平坦で、手帳に書き込む手もあまり動いていないように見えた。


「......確認しますけど、ここ数年は会われていないんですよね?」

「あ、ああ」

「ふーん............」


 何だか妙に疑りぐり深いな。記者を目指す者のサガだったりするんだろうか。


「失礼しますわね」


 と、そこに部屋の角をノックして入って来たのは、アリスの母親のアイラさんだ。

 トレーに乗せていたティーカップを、俺とニーナの前に置く。

 そうか、真耶はアリスの宿題を看るからアイラさんが役を買って出たのか。


「ありがとうございます。この紅茶はお母様自身で入れたのですか?」

「ええ。本来なら使用人が入れた物をお持ちしたいのですが、生憎今は手が離せない状況でして。お口に合えば宜しいのですが」

「そんな! ありがたく頂戴します」


 ニーナがカップに口を付けるのと同時に、俺もアイラさんが入れた紅茶を顔に近づける。

 鼻をくすぐる優しい香りに、口に含んだ時の後味の良さ。お菓子が無いから、スッキリ目に入れたのだろう。とても良い腕前だ。

 ついつい、笑みがこぼれてしまう。


 と、俺のその様子を見てアイラさんが微笑む。


「ふふ、良かったわ」

「え、何がです?」

「アリスから、ハルト君の様子を見て来るように言われたのです。でも、大丈夫なようですね」

「? は、はい」

「良かった。アリスが、ハルト君が今朝からずっと――」


 ちょちょちょ、ストップしてアイラさん!

 いやまあ確かに、今朝からずっと落ち込んでたけどさ! でも今それ話したら、ソラが昨日来た事がバレるじゃないか!


「あら、ハルト君?」

「ちょっとこちらに来て貰いますかっ!?」


 このままではいけない。取り敢えず外に連れ出して、事情を説明しなくては。

 それにしてもこの親子、抜けてる所も優しい所もそっくりさんか、ああもう!


「何か気に障る事でも言ってしまいまして?」

「気に障るというか。とにかく、ソラが昨日ここに来た事は話さないでください」

「ではあの女の子には......」

「ええ。ソラに会った事は伏せます。それと、無関心なように装います」

「我慢は良くありませんよ? 正直に話せば、ソラさんにまた会えるかもしれませんし」

「……」


 苦虫を嚙み潰したような表情の俺を見て、アイラさんは心配そうに尋ねる。

 

「そりゃ俺だって気になりますけど、ソラの頼みですし――」

「聞~き~ま~し~た~よぉ~?」

「!!!」


 振り返ると、ニマニマとした笑みを浮かべたニーナが立っていた。手には黒い棒のようなものを......って、コレ録音機だ。

 やばい、押さえられた。


「聞きましたよ録りましたよっ! やはりソラさんに興味があるのですねっ!?」

「ぐ、こ、これは......」

「今更隠せませんよぉ? 第一、最初に会った段階で興味津々なのはバレてましたから。それに、ハルトさんの話す内容が噂に聞いた話とほぼ一致しておりました! 数年間も会っていないのに、この一致率はおかしいです! 昨日の内に連絡を取って、口裏合わせをしましたねぇ!?」

「!!!」


 しまった、キッチリと合わせたのが反って証拠になったのか。迂闊だった。


「ま、あのニュースの様子からその可能性は考えておりましたが。高校が違うせいで情報の伝播が遅れ、ソラさんに遅れを取ってしまった事だけが悔やまれます......。しかしその様子、連絡は取れたのに興味があるとは、変な話ですねぇ? 身近に居るというのであれば、私から得られる情報など期待される訳ありませんし。ならこれは......昨日直接こちらに来たものの、連絡先を教えて貰えずに帰ってしまった、と言った所でしょうか!?」

「!!! な――」

「口にせずとも分かります! 何で分かったんだ、って顔に書いていますから!」


 な、なんて奴......

 こっちで仕組んだ事から俺の表情まで、何から何まで利用して迫ってくる抜け目の無さがある。

 さすが報道部といった感じか。って、感心してる場合じゃないな。


「貴方も気になるのでしょう? ソラさんがどうしているのか。なら、ここは手を組みませんか? 私と一緒に調査するのはどうでしょう?」

「............」

「人間は好奇心で動く生き物です。好奇心を捨てるだなんて、人間である事を捨てたようなもんですよぉ?」

「ぐぐぐ......」


 煽るように俺の周りをぐるぐると回り、どうですか、どうしますか、と聞いてくるニーナ。


 確かに、気になる事はある。

 あの感じで女性だとバレずに暮らして行けてるのか、という点もそうだし、何か隠し事がある様子や少し変な感じもした。

 しかしソラの頼みだしなぁ。それを無碍にする訳には......うーん、どうすれば......。

 

 本心と義理の間で揺れ動く俺の心。が、ここで一つの事に思い当たる。

 もしこのまま協力しないと言った場合、果たしてどうなるだろう?


 ニーナの性格の事だ、単身で調査をするだろう。

 そして、このやけに鋭い勘が働けば、ソラが女性である事がバレてしまうかもしれない。

 ならここは調査に協力するフリをしつつ、女性である事がバレないように工作するのが最善では?

 そうだ、これはソラの為なんだ。

 だったらちょっとぐらい調査に協力しても、何の問題もないな!?


「分かった、一緒に調査しよう」

「ほうほう、素直になりましたねぇ? 良い事ですよー、ふふふ」


 何だろう、ウザイなこの絡み方。


「では合同調査の日程は明後日としましょう。待ち合わせ場所はどこが良いですか?」

「そうだな......この屋敷の使用人用の裏口を出た所で」

「ふむふむ、分っかりましたー。なら、時間は10時ぐらいと致しましょう」

「ん、10時? ニーナも学校あるんじゃ――」

「ではまたその日まで。さらばーっ!」

「ああオイ、ちょっと!」


 俺が呼び止める間も無く、ニーナは西洋庭園の階段を駆け下りて行く。

 ......そして、入口の門で看守に捕まっている。

 そんな姿を遠目に見つつ、溜息をついた。


 何だか、俺の周りも騒がしくなってきたなぁ。

 元々妹を探す為に入った異世界。

 気付けば、何かイベントがあるのはこちらの世界ばっかりだ。


「フラリと来てフラリと去るつもりだったのに、変な話だよなぁ」

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