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こんな異世界、お兄さんは認めません!  作者: アカポッポ
第三章 『6.05 常明学園襲撃事件』
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Part5 再びの来客


 コンコン。


「ハルトー......って、死んでる!?」


 中学校から帰宅したアリスは、ハルトの部屋のドアを開いた瞬間悲鳴を上げる。

 そこには、椅子に座ったまま力無く腕と頭をぶら下げるハルトの姿があった。


「ふしゅううううう~............」


 はい。ワタクシ死んでおります。

 

 ソラが何も言わずに去って行った事を目にして以来、もう何にもやる気が起きません。

 朝食は全然喉を通らないし、パパーンやママーンに心配されるし。でも二人は仕事だから俺は一人になるし。

 昼は自分でテキトーに作って食べる事が多いけど、その気も起きませんし。もちろん勉強する気なんて起きませんし。


 あぁ、腹減った。でもそれ以上に――


「うぅぅ......ソラよぉ、ドコ行ったんだぁ......」


 ああ、流れ落ちるよ涙。とめどなく。

 ずっと泣いてて、顔がふやけてしまいそうです。

 俺の気持ちを代弁してるのか、お空も泣いておりまする。


「な、何泣いてるのよ。私......だって......わたしだって悲しかったんだからぁ゛~~~!」

「! お前も泣いてくれるのか......。すまねぇっ、すまねぇっ......」


 まるでドラマのワンシーンみたく、勢いよく立ち上がり涙を散らしながらアリスの方へ向かう。

 空中をキラキラと涙が舞う、あんな感じ。

 そうして飛びつくように、熱い抱擁を交わした。


 ありがとう同志よ、今はこの溢れんばかりの気持ちを分かち合おうぞ!


『「あ゛ぁ゛~~~! 会いたいっ、会いたいぃ゛~~~」』


 ボロボロと涙を流し、俺達二人は大きな口を開けて喚き声を上げる。


「ハルト、少し......って、お嬢様まで何をされているのですか......」


 そこに、珍しく戸惑った様子の真耶が現れた。

 が、ゴホンと咳払いして気を改める。


「ハルト、客人ですよ。貴方に会いたいと」

「断るぅ......」

「は?」

「今は泣きたいんだ、放っといてくれぇ~~~」

『「お~いおい、お~いおい」』


 再び泣き始める俺とアリス。その様子に、真耶は右手を額に当てて俯く。

 

 ずっとオアズケを喰らっていた俺に対して妹がチラリと姿を見せ、また去って行った事でおれの哀しみが臨界点に達した。

 この哀しみはしばらくおさまる事を知らない。


 悪いがまた今度にしてくれ。


「高校生ぐらいの方で――」

『「行くしかないだろ!」「行くしかないわね!」』


 さっきまでの暗い気持ちはどこへやら。

 真耶から見たら、俺達の目はシイタケみたいになってたハズだ。

 心の底から沸き起こる歓喜に突き動かされ、俺とアリスはスッと立ち上がる。


「何を――って、お待ちください!」


 伸ばされた真耶の手に捕まる暇など与えずに、俺達の身体は部屋の外へと向かっていた。

 ちなみに、


「......もう少しお嬢様の泣き顔を見たかった」


 などと一人取り残された真耶が供述していたが、まあどうでも良い話である。


 部屋を出た俺達は、ドカドカと足音を立てて応接室へと向かう。


 ――ああ、帰ってきてくれた。


 昨日何も言わずに出て行ったのは、何かの間違いだったんだ。今日こそはいっぱい触れ合うぞ!


『「待ってたぞ!」「お待ちしておりました!」』


 そして応接室の前まで来た俺とアリスは、笑顔いっぱいで歓声を上げる。

 声をかけられた人物も笑顔で振り向き――


「ご歓迎頂き有難うございます! 私――」

『「お引き取りください」』

「出会って三秒で手の平返されました!?」


 その顔が見えた瞬間、俺の中に沸き起こっていた感情は完全に消え失せた。

 と言うのも、そこに居たのは普通の女子の恰好をした高校生。

 肩にかかったボリューミーな一つ三つ編みに青の太縁メガネをしていて、どう見てもソラじゃないのだ。


 俺達二人の冷めきった表情を見て、その女子高生は両手をワタワタさせている。


「せ、せめて一言だけでも......」

「はぁ、俺いいよ。あんまり他人と話す気力ないからさ。アリス話しとくか?」

「嫌よ、私だって宿題しないといけないんだから」

「よし、じゃあお帰りいただくしかないか」

「そうね、看守さんに連絡を」


 食い下がる女子高生に対し、ものの十秒ほどの会話を挟んで追い返そうとする。

 しかしアリスが電話を掛けようとしたその時、女子高生は思わぬ事を口にした。


「ここなら九条 ソラさんの情報が得られると思ったのですが......」

『「その話詳しく!」』

「随分とゲンキンな方達ですねぇ、嫌いじゃありませんケド」


 再び目を輝かせる俺とアリスに、女子高生はやや引き気味。

 んな事知るか。こちとらただの女子高生に興味は無いが、ソラ本人かソラの事を知ってる女子高生には興味津々なのだ。


 まあ、まずは話を聞くとしよう。

 女子高生と向かい合うようにして、俺とアリスは隣り合ってソファに腰を降ろす。


「まだきちんと自己紹介してませんでしたね。私、こういう者です」


 そう言って、女子高生は名刺を取り出す。

 開いた手帳とカメラのイラストがあしらわれたその名刺に、俺とアリスは顔を近づける。

 その名刺には、『主代高等学校 二年 報道部所属 高梨仁奈』と書かれていた。主代の上にはルビが振られていて、ぬしろと読むらしい。


「高梨 仁奈と申します。お気軽にニーナさんとお呼びくださいっ!」

「ど、どうも。北条 ハルトです」

「......藤宮 我道の娘、アリスよ」


 威勢の良いニーナに若干気圧されながら、俺は簡単に自己紹介する。

 アリスはお嬢様モードに移行しているのか、やや硬い返事の仕方だ。

 が、そのアリスの表情が少しおかしい。

 表に出すまいと努めているが、やや笑顔が引きつっている。


「? どうしたアリス?」

「どうした、って......」


 理由を聞こうとするも、アリスは口元をモゴモゴさせて黙るばかりだ。

 その様子を見ているニーナは、何故かニマニマと笑っている。


「オモシロ高校の生徒が来た、と?」

「......ええ、そうよ。顔に出てしまったわね、ごめんなさい」

「い~えぇ? むしろ誇りに思ってますから!」

「オモシロ高校? どういう事だ?」

「やっぱりハルトはハルトね......」


 大きな溜息を付いてから、アリスは話を始める。


「この高校の別名よ。主をヌと読まずにオモと読んで、オモシロ高校」

「なんだそのネーミング」

「何と言うか、凄くヘンな高校なのよ。特定の人物が校内で炭酸飲料を飲むと酔っぱらうとか、男子が劣情を抱くと鼻血が出るとか」

「はぁっ!?」


 何だその、一昔前のラノベのテンプレを詰め込みましたー、みたいなの。


「いやいや、科学的に考えて可笑しくないか?」

「何でも、敷地内だけに作用する宝具があるらしいの。他にも、疑似的な対人戦闘を実現する謎のシステムがあって」

「へ、へぇ............」

「そんな場所だから、集まるのも変わった人ばかり。文武共に優れた成果を出す一方で、個性の強さでも結構有名なの」

「あー、だから嫌そうな顔したのか」


 変人ばかりが集まるか。言われてみれば――


「? 私の顔に何かついてますか?」

「いや、付いてるというかその眼......」

「コレ? ああ、カラコンです!」


 このニーナも、結構尖った見た目をしている。

 なぜか右目だけが赤色なのだ。


「職業柄、まずは顔を覚えて頂くのが一番ですから! 作戦成功、です!」

「記者ってそういうもんなのか......?」


 むっふー、と鼻を鳴らすニーナ。

 ここ数日、意味不明さで衝撃を受ける事が多いなぁ。ソラも男装してたし。


「ん、と言うかソラもこの高校に通ってるのか?」

「ソラさんは私とは別の高校に通ってますよ?」

「そ、そうか」


 なら良かった。というか、他校の生徒にまで名前知れてますよ、ソラさんや。


「それで、本題に入っても宜しいでしょうか。とは言っても、そのソラさんの取材なのですが」

「ああ。大丈夫だ」


 あ、そう言う事か。

 昨日ソラが言っていた『私の事を嗅ぎまわってる人』とは、ニーナのような人間の事だろう。

 なるほど、うっかり女の子だとバレないように話さなくては。


「まず、北条 ハルトさん。貴方はソラさんがお兄さんと言っていた人物ですね? なぜ苗字が違うのか、気になるのですが......」


 ! いきなりぶっこんできたな。

 だがしかし、それの口裏合わせは済んでいる。

 兄妹のタッグを舐めてもらっちゃ困るぞい?


「ああ、それなら――」


 無難な返し方で切り抜けようと、そうした時。


「あれ? そう言えばハルトって妹を探しに来たんじゃ......」


 思いもよらぬアリスの発言に、俺の口は止まるのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 目がしいたけのようになるって何(*≧∀≦*)笑っ!! なんというか‥‥ハルトくんは相変わらすというか(^^; それにアリスちゃんも混ざっちゃって、こっちの二人の方が兄妹みたいですね(/▽\…
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