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こんな異世界、お兄さんは認めません!  作者: アカポッポ
第三章 『6.05 常明学園襲撃事件』
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Part4 お手並み拝見


「へぇ~、流石お屋敷って感じだね」

「ホントにな。俺も最初来た時は驚いたよ」


 俺とソラは、藤宮家の和式庭園にいた。

 ずっと屋内で話しているのも息が詰まるから、という理由で外に出ていたのだ。


「で、教えてくれるんだよな? ソラの属性」

「まあまあ、そう慌てないでよ」


 俺の使う属性が火だと言う事は、俺のこれまでを話す中で既に言っている。

 じゃあソラの属性は? という話を切り出すと、外で見せてあげると言われた。


 横並びの状態からトントンと二歩前に出て、ソラはその場でピタリと止まる。


「私の属性は......」

「属性は? ――ッ!?」


 もったいぶらずに早く答えて欲しいと、そう思っていた矢先、急に視界がガクンと揺れた。

 突然の出来事に驚き、思わず尻もちを付く。

 そして足元を見ると――右足が地面に食い込んでいた。


「!? まさかソラの属性って......」

「その通り、土でございます!」


 クルリと振り返って意地悪そうに笑うソラが、自信たっぷりに回答した。


「外で見せるって、こういう事だったのか」

「そうそう。ちょっとビックリさせようと思って」

「ああ、マジでビックリもんだ。まさか土属性だなんてさ」

「何その含みのある言い方」

「いや、俺でも知ってるよ。土属性が不遇扱いされてる事ぐらい」


 土属性は、不遇属性。

 その理由は地味だからと言う事では無く、単純に活用しづらい属性だからだ。

 土属性には、相手に向けて何かを飛ばす魔法は無い。攻撃に使える魔法には落石系統・地震系統があるが、いずれも相手の足元で発動しないといけない......つまり、一言で言うとトロいのだ。


 スキルで土や石を生み出しても結局は自力で投げる必要があり、イマイチ威力に欠けてしまう。

 だから良い属性とは言われないし、自ら土属性使いだと名乗り出る者も少ない。


「でも、土属性が不遇じゃ無くなるケースがある。それが――」

「実力者が使う場合、だろ?」

「その通り、兄さん」


 魔法は足元で発動させないと駄目、スキルで土を生み出しても駄目。

 そんな土属性だが、共鳴術を会得すると一気に状況が変わってくる。

 風や火、水はその場に常にあるとは限らない。

 だが、俺達が陸地で暮らしている以上、土はどこにでもあるのだ。


 土属性の共鳴術は地殻変動の力を利用したもので、さっきソラがして見せた地面の隆起は元より、極めると地割れさえ起こせるのだとか。

 戦いの場所が陸地で共鳴術を自在に操る事が出来れば、相手に逃れる術はない。

 建物に逃げても地盤ごと崩されたら終わりだし、空に逃げるのも簡単ではない。


 一般的に不遇扱いされるが実力者が使うと大化けする、それが土属性なのだ。


「『土属性を自称する奴は実力者、間違っても喧嘩を売るな』。ホントに、ビックリもんだよ」

「まーね。兄さんには負けないんじゃない?」

「ほっほーお?」


 言ってくれよったな、我が妹よ。

 ずっと尻もちついてるなんて、情けない姿晒してられませんなぁっ!


「お兄ちゃんをッ! 舐めてもらったら――ってアラァ!?」


 足を引き抜き食って掛かろうとしたが、今度は全身が首までズッポリ陥没する。

 やべぇ、ここまで出来るのか。

 

「ほらね」

「ぐぬぬ......」

「ホレホレ~、抜け出せますかなぁ~?」

「クッ、このッ!」


 頭を振り、せめて腕だけでも出そうと必死にもがく。

 だが土は重く、簡単には這い出られそうに無い。

 それにソラのニタリとした顔よ。腹立つのり~。

 

 と、気張っている俺の声を聞いて一つの足音が近づいて来た。


「さっきから何の声......あ、ソラ様! と、ハル......ト」

「おう、アリス」

「何それ、どうなってるの?」

「ちょいと土の中に埋められてさ。今抜け出そうとしてる」

「そ、そう。ちなみにそれは、ソラ様が?」

「あ、ああ。話も終わってね、ハルトと腕試ししてたんだよ」

「ハルトも弱くはないんですが......お強いのですね!」

「はは......」


 アリスが来た事で、ソラは低めの作り声で対応している。アリスのソラへの態度は相変わらずだ。

 と言うか腕試しじゃないし。ただ不意打ち食らっただけだし。訂正頂きたい。

 アリスが弱くはないって言ってくれたのは嬉しいけど。


「ソラの属性は土だ。で、共鳴術も使えるんだと」

「へぇ~......。他にも見せていただけますか?」

「うーん、そうだなぁ」


 そう言ってソラは手から直接エルゲージを出すと、それを地面に突き刺した。

 すると、淡い水色の波紋のようなものが広がっていく。


「これは......テリトリーか!?」


 テリトリーは、自分のマナを地面などに流し込むスキルだ。

 範囲内にあるマナ的な反応を感知し、見えないように細工されている魔法陣も探知できる。

 また、マナの流れを妨害して魔法陣を崩壊させる事も可能だ。


 とは言え、テリトリーを安定して展開するのは難しいと言われている。

 マナを流したままだとすぐに発散してしまう為、流したマナと体内のマナを常に対流させる必要があるのだ。


「その通り。でも驚くのは早いよ? よっ、と」

『「!!!」』


 俺とアリスは驚嘆の声を上げる。

 ソラは展開したテリトリーの中に、マナで模様を描いたのだ。

 属性の紋が無いから発動はしないが、その見た目は魔法陣そのものである。


「す、凄い......」

「ソラ、これは?」

「見てのまんま。テリトリーの中に魔法陣を作る、“マーキング”っていうスキル。この前出来るようになったばかりだけど、これで相手の足元に魔法陣を描けるようになる」

「土属性の欠点が消える、って事か。ハー......」


 驚きで、開いた口が塞がらない。

 そもそも、テリトリーの展開だけでもマナの操作力のレベルは300以上が要求される。

 その発展形となれば、一体どれだけのレベルになっているのか......。


 それにこの光景を見ていて、何故妹の事を考えると向上するのがマナの操作力なのか、分かった気がする。

 そもそも能力が向上する理由については、まだチンプンカンプンだが。


「まあこんな所かな。......ところでハルト、君はいつまで埋まってるの......?」

「何か脱出するのが面倒になって。土の中・・すごくあったかいナリ・・・」

「なんて言うか、ブレないわね、ハルト」

「この人は昔からこんなんだから」


 溜息を付くソラとアリス。


「でもそろそろ抜いて欲しいなー、って」

「はいはい。僕は抜く作業するから、アリスちゃんは先に入っておいて」

「はい。夜半については、また後程」

「う、うん」


 あ、やっぱりまだその話続くんだな。

 いやー、修羅場 修羅場。


 埋まっていた身体自体は、地面ごと隆起させるとスッポリ出てきた。

 表面の土で包むように地面に埋まっていたから、案外服も汚れて無いみたいだ。

 シャツを脱いでバッサバッサとはためかせ、ズボンを叩けば大体の土は取れた。


「ふぅ。それにしても、こんなに器用だとは」

「私だって、結構やるんだよ?」

「ああ。ホントにビックリした。チンピラ撃退した、ってもの納得だわ」


 なんて言ったらドヤ顔するんだろうな、と思ってソラの横顔をチラリと確認すると、それはドヤ顔と言うより安心したような顔だった。


「? どうした、そんな顔して?」

「え? な、何でもないよ。ささ、もう遅いし入ろー入ろー」

「ちょちょ、そんな押すなって!」


 グイグイと背中を押され、俺とソラは藤宮家の中に入っていく。


 ちなみに。


「あ、遅くにすみません。九条 ソラです。はい、まだ外に出てて。それで、言いにくいんですけど、外泊の方をしたいな、と......え? OK? あ、分かりました......」

「どうだったよ」

「何か凄い上機嫌でOKされた。ウチの寮長さん、ホント甘いんだから......」


 などと言うやり取りがあって、今晩のソラは結局藤宮家に泊まる事になった。

 アリスは大喜びしていたが、流石に女子中学生と男子(?)高校生が一緒に寝るのはマズイだろうと我道さんからNGを喰らってしまい、結局添い寝は叶わなかったそうだ。

 真耶が廊下で人知れずガッツポーズしていたのは、ここだけの話。


 そして場所は変わり、再び藤宮家の使用人部屋。

 その内の俺の部屋に入るなり、溜息をつくソラ。


「どうしたんだ?」

「兄さんの部屋で寝るとか、凄く不安なんだけど」

「ダイジョーブ、ソノベッド ツカッテナイヨ」

「......やっぱなんか野郎臭い。真耶さんにシーツ変えて貰おうっと」

「チェッ、バレたか」

「ホント度し難いよね、兄さんは」


 この後は風呂に入ってすぐ寝るらしく、俺は元の世界に帰るよう強く言われる。

 明日は七時ぐらいにここを出るらしい。


「じゃ、お休みなミヨ」

「はいはい、お休み兄さん」


 互いに手を振り、就寝の挨拶をする。

 そうして鏡をくぐり、元の世界に帰って来てから俺は深く息を吐いた。

 沢山話して疲れたし、今日はもう寝る――


「――と思っていたのか?」


 なんて、お行儀の良い事する訳ないだろ!

 いやだって久々の再開だし?

 『七時までここに居る』ってんだから、それを無駄にする訳には行くまいよ。


「さーて、風呂入って歯磨いて、妹の寝顔堪能しますか! ぬっふっふ」


 などと一人テンションを上げながら、嬉々として寝支度を整えていく。


 ――が、しかし。


「やばい、超眠い。風呂に長時間入りすぎたか......?」


 風呂から上がった後、強烈な眠気に襲われた。

 時刻は10時過ぎ。元の世界と同じなら、ソラの就寝時間は11時頃のはず。


「まあ、11時半にお邪魔するとして、あと1時間半あるしな。今夜は眠れないし、少しばかり仮眠でもするか......」


 目覚ましをセットし、布団に倒れ込む。 

 今夜はどうしようか。

 寝顔観察して、寝言聞いて、ああ、蹴られるのも悪くない。その、後は......――


「――澄ました顔で一旦帰って、翌朝私の見送りをしよう、何て考えてるだろうなあ、兄さんは」


 兄の行動を予想し、独り息を吐くソラ。

 もちろん、他の人の姿は無い。


「背中に仕組んだ<スリープ>の魔法陣も効いてくる頃......そろそろお暇しようかな。もし明日まで居たら、兄さん絶対連絡先聞いて来るし。アリスちゃんには申し訳ないけど......」


 部屋を後にするソラ。

 明かりを消し、暗くなった室内を見てポツリと漏らす。


「じゃあね兄さん。この世界、いろんな事があるから......兄さんには、そのままでいて欲しい」


 翌朝、俺は八時過ぎに目を覚ます。

 警備員さんによると、ソラは前日の夜10時半に屋敷を出て行った、との事だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ソラの方が、ハルトくんより一枚も二枚もうわてですね(^^)笑 能力の説明がわかりやすかったです(*^▽^)/★*☆♪ ハルトくんを実際に陥没させてみたり、魔法陣について話してたり。 実力…
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