Part14 反撃の時間!
「それで、どうしましょう?」
「そうだなぁ......」
ひとしきり笑ってから、気持ちをリセットして目の前の問題に向き合う。
問題は、俺とリーシャに大怪我を追わせた憎きゴーレムをどう処理するか、だ。
「帰って運営の人に伝えるのが普通ですけど......」
「うーん、特例措置か何かで合格にさせてくれると良いけど......今回で最後、なんだろ?」
「はい......」
合格にならなければ、次の機会は当分無いのだ。
やっぱり、どう倒すかという話になる。
と言うかここで逃げるだなんて、消化不良も良い所だし。
「でも、ゴーレムだしなぁ。マジでどうしよう」
「私が時間稼ぎしますから、その間にお兄さんが中級魔法で......」
「んー、どうだろ。試しにバースト撃ってみたけど、あんまり効いてる感じしなかったから、エクスプロージョンでイケるか不安なんだ。あと、使ったらスタンプも無事じゃ済まないし」
「うーん......」
「それに、ゴーレムには自己修復機能があるだろ? 一瞬で決めないとマズいと思うんだ」
「じゃあ、ゴーレムのコアに火属性・貫通系統の中級魔法の一撃を――」
「なんだけど、ゴーレムって背中側にコア無かったっけか? そこまで貫通してくれるかなぁ」
「うーん......」
話せば話す程に厄介な敵だ。
森の奥地に出現する魔物相手だと、マナの出力レベルが200程度なら中級魔法でも致命傷を与えられないだろう。
コレ、普通の受験者なら無理だな。
「何とか背中を向けさせたらなぁ」
「地面が土なら水のスキルで泥場を作れますけど、石ばかりで......」
「そうだなぁ、、、うん?」
「どうかしましたか?」
「ああ、いい方法を思いついた!」
深く試案する余裕はあるはずも無く、俺の提案はすぐに実行された。
仕込みを終え、再びゴーレムの待つ小部屋へ。
とは言っても、ここに来たのは俺一人だ。
「取り敢えず、雑魚は先に片付けさせて貰いますよ、っと」
ステッキから炎を撒き散らし、雑多な魔物を処理する。汚物は消毒だ~!!
「おおっと、出て来たねぇ!」
ヒャッハーしている内に、本命が姿を現す。
俺が欠けさせた手首まで完全復活しちゃって、あらあらまあまあ。
「へぇい、そこの太っちょ! さっきはよくもやってくれたじゃあないかッ!」
「――グ――ゴゴゴ――」
「そんなお前をとっちめてやる方法を思いついたッ! それはァ!」
クルリ。タッタッタ、、、
「逃げるんだよォ!」
「グゴゴゴゴ!」
ひゃあ、そりゃ追ってきますわな。
だが、それで大丈夫。オールオッケーだ。
そうしてゴーレムをおびき寄せ、規定のポイントまで移動する。
やって来たのは幅の狭い通り道。
そこにはリーシャが、やや緊張した面持ちで待ち構えていた。
リーシャの前には光の珠があり、準備はしっかり整っている。
さあ、ここからはリーシャに任せて俺も準備だ。
息を吸い込んで、詠唱を始める。
「<日の力よ その光の迸りよ 我に力を貸し給う」
思惑通りに引き寄せられるゴーレム。
が、その足元が急に傾く。
洞窟の中には存在しない泥場。
それを実現したのは、バーストで石を砕いて砂にする方法だった。
「我が求めるは光槍なり 全てを貫く閃光なり」
重心が傾き、片足が浮いた状態。これが、唯一のチャンスになる。
「<ビロー・プッシュ>!」
浮いた脚に、リーシャがすかさず魔法を叩き込む。バランスを完全に崩したゴーレムは、大きな音を立ててうつ伏せに倒れ込んだ。
「天道の威光を体現し 我が障壁に孔を穿て>」
よし、詠唱完了! 行くぜオイ!
「お返ししてやんよっ、<ソーラー・ビーム>!」
組成式から発せられる極太のレーザーが、ゴーレムのコア目掛けて放出される。
近くに立っているだけでも、その熱は凄まじいものだ。石は熱を帯び、ドロドロに溶け落ちる。
背側の薄い外殻は数秒で溶け、後はコアだが......
「!? まだ壊れないのか!?」
マズい、このままじゃ魔法の持続時間が切れる!
「いっけえええええ!」
俺の願いが偶然届いたのか、必然的にそのタイミングが訪れたのか。
俺が叫んだ直後、ゴーレムのコアがひび割れ砕け散った。
核が砕ければ貰ったものだ。
ゴーレムの外殻は魔法の余熱で溶かし尽くされ、煮え立つ岩石はやがて塵と化し消えて行った。
「っしゃあ、してやったり!」
「上手く行きました!?」
「ああ、バッチリだ。さ、スタンプ回収しまして、っと」
スタンプをスキップで回収し、これにてミッションコンプリート。
ま、帰るまでが遠足って言うし? 一応時間を――
「って、うおお!? 超ギリギリ!?」
残り5分!? ヤバイ、全力疾走せんと間に合わん!
「リーシャ、もう時間が無いからダッシュで脱出するぞ!」
「はい、でも実は……もう立ってるのもしんどくて......」
「あ~......」
まあ、そりゃそうか。
ただでさえ2連戦だし、小さな身体で腕が千切れる怪我もしたのだ。
それでここまで持っていた気力に、むしろビックリである。
「よっし、じゃあここはお兄さんに......」
「? 何を――ひゃあ!?」
ひょい、とリーシャを持ち上げてお姫様だっこ。
うーん、久しぶりだわこの感覚!
「よっこらせ、っと! さあ行くぜよお姫サマ!」
「お、お兄さん!? 恥ずかしいですっ!」
「だーいじょうぶ大丈夫。誰も見てないからっ!」
バタバタと足音を立て、大急ぎで出口に向かう。
が、まだ魔物は居るもよう。
「ええい、こちとらマナ余りまくってるんだ! 喰らえぃ、口からファイヤー!」
手から炎を出す事は出来ないので、お遊びでやっていた芸当で切り抜ける。
そんなふざけた技で魔物が倒れていくのも気持ちが良い。
「フゥーハハハ! どうだ参ったかぁ~っ!」
「凄いすご~い! あはは!」
疲れで気が変に高揚しているのか、リーシャも大はしゃぎだ。
と、<トーチ>以外の明かりが行く手を眩く包んでいるのが見えた。
「! 外です!」
両手が塞がっているせいで時計は見られない。
だが、体感時間ではかなりギリギリ。
既にもうタイムアップしてる可能性も......いや、今はひたすらに走るのみ!
「ぬおおおお、間に合えぇぇぇ!」
雄叫びを上げながら外に飛び出す。
そしてリーシャが二人分のスタンプカードを差し出して、タイマーストップ!
ど、どうなった......!?
試験員が時間を言うまでの時間が、やけに長く感じた。
タイマーに向かう視線が俺達に向き、その口から告げられた時間は――
「29分56秒。 おめでとうございます、30点の獲得です!」
『「よっしゃああああ!」「やったあああああ!」』
二人で頬を引っ付け合う。
普段の俺なら、いや、俺じゃなくとも人前でこんな行動は恥ずかしい。
それでもついやってしまったのは、それだけ嬉しかったからだろう。
正直、費やした時間なら高校受験の方が上だ。
何故ここまで嬉しかったのか。
自分でも、よく分からない。
◇◇◇◇◇
「結局、お兄さんはマイナス5点だったんですね、第二試験」
「はは、お恥ずかしい限りで」
場所は技能センターの受付。
試験場から帰還した俺達は、合格の余韻に浸りながらソファーでのんびり雑談していた。
なお、血はあらかた拭き取って、服も別のものに着替えている。
点数は、俺が62点でリーシャが70点だった。
特にリーシャの年齢での合格は珍しく、第三試験で30点獲得は初めてとのこと。
それだけで受付の人は驚いていたのだが、ゴーレムを倒したと報告すると完全に固まってしまった。
「でも、お兄さんでマイナス5点なんて、試験官は何方だったんですか?」
「あー、それが――」
と、このタイミングでこちらに一つの足音が近づいて来た。
「やっと見つけた! おーい、ハルト君!」
「あれ、省吾さん?」
「お兄さん、この方は」
「ああ、第二試験の試験官さんだ。それで、どうしたんです?」
「あー、いや、君に少し聞きたい事があってね。何と言えばいいかな......」
そういって頭を掻く省吾さんは、なにやら話しづらそうだ。
「? だから何なんです、って」
「その、うーん。いや、やっぱりスパッと言った方がいいかな」
「?」
「単刀直入に聞くよ。君は、第二試験で戦った相手の事を覚えているかい?」
「えっ」
何だそれ、この前も似たような事経験したぞ。
いやー、謎なんだよなー、なんで自分だけが覚えているのか。
「何言ってるんですか。ホラ、あの子ですよ。確か......」
............
――あれ、誰だったっけか。
「え? アレ......?」
いや、確かに居た。省吾さんではない、別の誰か。その誰かと俺は激戦を繰り広げた。
そこまでは分かる。なのに、具体的にどんな相手だったか思い出せない。
その名前が、声が、背格好が。どうしてか、抜け落ちてしまっていたのだ。




