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こんな異世界、お兄さんは認めません!  作者: アカポッポ
第二章 受難のBランク試験
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Part14 反撃の時間!

「それで、どうしましょう?」

「そうだなぁ......」


 ひとしきり笑ってから、気持ちをリセットして目の前の問題に向き合う。

 問題は、俺とリーシャに大怪我を追わせた憎きゴーレムをどう処理するか、だ。


「帰って運営の人に伝えるのが普通ですけど......」

「うーん、特例措置か何かで合格にさせてくれると良いけど......今回で最後、なんだろ?」

「はい......」


 合格にならなければ、次の機会は当分無いのだ。

 やっぱり、どう倒すかという話になる。

 と言うかここで逃げるだなんて、消化不良も良い所だし。


「でも、ゴーレムだしなぁ。マジでどうしよう」

「私が時間稼ぎしますから、その間にお兄さんが中級魔法で......」

「んー、どうだろ。試しにバースト撃ってみたけど、あんまり効いてる感じしなかったから、エクスプロージョンでイケるか不安なんだ。あと、使ったらスタンプも無事じゃ済まないし」

「うーん......」

「それに、ゴーレムには自己修復機能があるだろ? 一瞬で決めないとマズいと思うんだ」

「じゃあ、ゴーレムのコアに火属性・貫通系統の中級魔法の一撃を――」

「なんだけど、ゴーレムって背中側にコア無かったっけか? そこまで貫通してくれるかなぁ」

「うーん......」


 話せば話す程に厄介な敵だ。

 森の奥地に出現する魔物相手だと、マナの出力レベルが200程度なら中級魔法でも致命傷を与えられないだろう。

 コレ、普通の受験者なら無理だな。


「何とか背中を向けさせたらなぁ」

「地面が土なら水のスキルで泥場を作れますけど、石ばかりで......」

「そうだなぁ、、、うん?」

「どうかしましたか?」

「ああ、いい方法を思いついた!」


 深く試案する余裕はあるはずも無く、俺の提案はすぐに実行された。

 仕込みを終え、再びゴーレムの待つ小部屋へ。

 とは言っても、ここに来たのは俺一人だ。

 

「取り敢えず、雑魚は先に片付けさせて貰いますよ、っと」


 ステッキから炎を撒き散らし、雑多な魔物を処理する。汚物は消毒だ~!!


「おおっと、出て来たねぇ!」


 ヒャッハーしている内に、本命が姿を現す。

 俺が欠けさせた手首まで完全復活しちゃって、あらあらまあまあ。


「へぇい、そこの太っちょ! さっきはよくもやってくれたじゃあないかッ!」

「――グ――ゴゴゴ――」

「そんなお前をとっちめてやる方法を思いついたッ! それはァ!」


 クルリ。タッタッタ、、、


「逃げるんだよォ!」

「グゴゴゴゴ!」


 ひゃあ、そりゃ追ってきますわな。

 だが、それで大丈夫。オールオッケーだ。

 そうしてゴーレムをおびき寄せ、規定のポイントまで移動する。


 やって来たのは幅の狭い通り道。

 そこにはリーシャが、やや緊張した面持ちで待ち構えていた。

 リーシャの前には光の珠があり、準備はしっかり整っている。

 さあ、ここからはリーシャに任せて俺も準備だ。

 息を吸い込んで、詠唱を始める。


「<日の力よ その光の(ほとばし)りよ 我に力を貸し給う」


 思惑通りに引き寄せられるゴーレム。

 が、その足元が急に傾く。

 洞窟の中には存在しない泥場。

 それを実現したのは、バーストで石を砕いて砂にする方法だった。


「我が求めるは光槍なり 全てを貫く閃光なり」


 重心が傾き、片足が浮いた状態。これが、唯一のチャンスになる。


「<ビロー・プッシュ>!」


 浮いた脚に、リーシャがすかさず魔法を叩き込む。バランスを完全に崩したゴーレムは、大きな音を立ててうつ伏せに倒れ込んだ。


「天道の威光を体現し 我が障壁に孔を穿て>」


 よし、詠唱完了! 行くぜオイ!


「お返ししてやんよっ、<ソーラー・ビーム>!」


 組成式から発せられる極太のレーザーが、ゴーレムのコア目掛けて放出される。

 近くに立っているだけでも、その熱は凄まじいものだ。石は熱を帯び、ドロドロに溶け落ちる。

 背側の薄い外殻は数秒で溶け、後はコアだが......


「!? まだ壊れないのか!?」


 マズい、このままじゃ魔法の持続時間が切れる!


「いっけえええええ!」


 俺の願いが偶然届いたのか、必然的にそのタイミングが訪れたのか。

 俺が叫んだ直後、ゴーレムのコアがひび割れ砕け散った。

 核が砕ければ貰ったものだ。

 ゴーレムの外殻は魔法の余熱で溶かし尽くされ、煮え立つ岩石はやがて塵と化し消えて行った。


「っしゃあ、してやったり!」

「上手く行きました!?」

「ああ、バッチリだ。さ、スタンプ回収しまして、っと」 


 スタンプをスキップで回収し、これにてミッションコンプリート。

 ま、帰るまでが遠足って言うし? 一応時間を――


「って、うおお!? 超ギリギリ!?」


 残り5分!? ヤバイ、全力疾走せんと間に合わん!


「リーシャ、もう時間が無いからダッシュで脱出するぞ!」

「はい、でも実は……もう立ってるのもしんどくて......」

「あ~......」


 まあ、そりゃそうか。

 ただでさえ2連戦だし、小さな身体で腕が千切れる怪我もしたのだ。

 それでここまで持っていた気力に、むしろビックリである。


「よっし、じゃあここはお兄さんに......」

「? 何を――ひゃあ!?」


 ひょい、とリーシャを持ち上げてお姫様だっこ。

 うーん、久しぶりだわこの感覚!


「よっこらせ、っと! さあ行くぜよお姫サマ!」

「お、お兄さん!? 恥ずかしいですっ!」

「だーいじょうぶ大丈夫。誰も見てないからっ!」


 バタバタと足音を立て、大急ぎで出口に向かう。

 が、まだ魔物は居るもよう。


「ええい、こちとらマナ余りまくってるんだ! 喰らえぃ、口からファイヤー!」


 手から炎を出す事は出来ないので、お遊びでやっていた芸当で切り抜ける。

 そんなふざけた技で魔物が倒れていくのも気持ちが良い。


「フゥーハハハ! どうだ参ったかぁ~っ!」

「凄いすご~い! あはは!」


 疲れで気が変に高揚しているのか、リーシャも大はしゃぎだ。

 と、<トーチ>以外の明かりが行く手を眩く包んでいるのが見えた。


「! 外です!」


 両手が塞がっているせいで時計は見られない。

 だが、体感時間ではかなりギリギリ。

 既にもうタイムアップしてる可能性も......いや、今はひたすらに走るのみ!


「ぬおおおお、間に合えぇぇぇ!」


 雄叫びを上げながら外に飛び出す。

 そしてリーシャが二人分のスタンプカードを差し出して、タイマーストップ!


 ど、どうなった......!?


 試験員が時間を言うまでの時間が、やけに長く感じた。

 タイマーに向かう視線が俺達に向き、その口から告げられた時間は――


「29分56秒。 おめでとうございます、30点の獲得です!」

『「よっしゃああああ!」「やったあああああ!」』


 二人で(ほお)を引っ付け合う。

 普段の俺なら、いや、俺じゃなくとも人前でこんな行動は恥ずかしい。

 それでもついやってしまったのは、それだけ嬉しかったからだろう。

 正直、費やした時間なら高校受験の方が上だ。


 何故ここまで嬉しかったのか。

 自分でも、よく分からない。


◇◇◇◇◇


「結局、お兄さんはマイナス5点だったんですね、第二試験」

「はは、お恥ずかしい限りで」


 場所は技能センターの受付。

 試験場から帰還した俺達は、合格の余韻に浸りながらソファーでのんびり雑談していた。

 なお、血はあらかた拭き取って、服も別のものに着替えている。


 点数は、俺が62点でリーシャが70点だった。

 特にリーシャの年齢での合格は珍しく、第三試験で30点獲得は初めてとのこと。

 それだけで受付の人は驚いていたのだが、ゴーレムを倒したと報告すると完全に固まってしまった。


「でも、お兄さんでマイナス5点なんて、試験官は何方だったんですか?」

「あー、それが――」


 と、このタイミングでこちらに一つの足音が近づいて来た。


「やっと見つけた! おーい、ハルト君!」

「あれ、省吾さん?」

「お兄さん、この方は」

「ああ、第二試験の試験官さんだ。それで、どうしたんです?」

「あー、いや、君に少し聞きたい事があってね。何と言えばいいかな......」


そういって頭を掻く省吾さんは、なにやら話しづらそうだ。


「? だから何なんです、って」

「その、うーん。いや、やっぱりスパッと言った方がいいかな」

「?」

「単刀直入に聞くよ。君は、第二試験で戦った相手の事を覚えているかい?」

「えっ」


 何だそれ、この前も似たような事経験したぞ。

 いやー、謎なんだよなー、なんで自分だけが覚えているのか。 


「何言ってるんですか。ホラ、あの子ですよ。確か......」


 ............

 ――あれ、誰だったっけか。


「え? アレ......?」


 いや、確かに居た。省吾さんではない、別の誰か。その誰かと俺は激戦を繰り広げた。

 そこまでは分かる。なのに、具体的にどんな相手だったか思い出せない。

 その名前が、声が、背格好が。どうしてか、抜け落ちてしまっていたのだ。

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