第一章のあらすじ
【Part1】
大学受験の浪人生である主人公、北条 ハルトは、高校生に上がったばかりの妹、北条 美夜子を愛でながら勉学に取り組んでいた。
しかしあるGW明けの夕方、北条家の食卓に謎の男Aが出現する。
【Part2】
突然の出来事に警戒感を強めるハルトの両親だが、男が仮面を脱ぎ去った瞬間、警戒感を緩めてしまう。
そして、ハルトも魔法の力で金縛りにされる。
男が来た目的は、「魔法の才能がある子を迎えに来た」というものだった。
その対象はハルト......では無く、妹の美夜子。
美夜子を引き連れ、北条家を出ていく謎の男A。
かくして、妹の居る生活は終わりを告げた。
【Part3】
妹が居なくなってから数日。
妹を探しても見つからず、途方に暮れていたハルトの元に謎の男Bが現れる。
その男の話では、ハルトの妹は異世界に連れて行かれたのだと言う。
謎の男Bに誘われ、ハルトも異世界へと足を踏み入れる。
【Part4】
謎の男B――他称“パース”――に連れられて、ハルトが転移したのは砂漠のど真ん中であった。
ハルトはそこで火属性の賢者、愛称“デービス”と出会う。
事情を説明しつつ、デービスの話を聞かされつつ、魔法の力を得るハルト。
と、時間も遅くなってきたので一旦の帰宅をパースに要求したハルトだったが、今度は見知らぬ森の中に転移させられてしまう。
【Part5】
ハルトが森の中に転移して早々、パースは地図を渡し、「異世界出身である事、我々に会った事を口外しない事。口にすればペナルティがある事」を伝えて去ってしまう。
愚痴を漏らしつつも何とか森から脱出しようとするハルト。
そこで、彼は二人の少女アリスとマヤに出会う。
森の外まで案内して貰おうと考えるハルトだったが、実はその二人も森の中で迷っているのだった。
【Part6】
マヤの機転で、森を出る経路を確認した三人。
日が傾き森が暗くなってきた頃、ハルトは魔法で周囲を照らすよう要求される。
妹の事を想像して力を落ち着かせる、と言う変わった方法で魔法をコントロールしたハルト。
しかし、魔法に対して全くの無知である事も露呈する。
【Part7】
森の中を進みつつ、ハルトはマヤから魔法について解説を受ける。
※設定は『フギンの本棚』を参照のこと
と、ややこしい内容をタラタラと説明されたハルトは、一旦の休憩を求める。
木にもたれかかり、休憩しようとするハルト。
だが、木に見えたものは魔物で、庇ったマヤが捕まってしまうのだった。
【Part8】
現状では維持は出来ても救出は出来ないと踏んだアリスは、ハルトに杖を託してその場を後にする。
抵抗するマヤの加勢をするハルトだが、途中でマナ切れを起こしてしまう。
だが、ハルトを襲う直前で魔物は動きを止め、その隙を突いて二人は脱出。
ハルトの魔法をぶつける事で魔物は消滅し、難は去った。
だが、ここで衝撃的な事が起こる。マヤが使っていたのは日本語だったのだ。
更に、ハルトはそのマヤから突然剣を突きつけられる。
【Part9】
何故日本語を使うのか、というハルトの疑問を他所に、マヤはハルトに対して己が人間である事を証明するよう訴える。
マヤの話によれば、魔物が襲わないのは特殊な体質を持っているせいであり、通常その体質を持つ者は人間と相容れない存在、エルフなのだと言う。
説得を試みるハルトだが、マヤには届かない。
『俺は異世界人なんだ』。ワラにすがる思いでそう言った瞬間、ハルトはペナルティで気を失う。
【Part10】
ハルトが目を覚ますと、そこは自宅のベッドの上だった。
急な展開に混乱するハルトだが、再度異世界に行くと更に驚くべき物を目にする。
マヤの身体から、猫の耳と尾が生えていたのだ。
獣の耳と尾は、魔法が失敗した事による結果。
隠そうとするマヤだが、ハルトは逆に隠さないようお願いする。
ハルトの気持ちを汲み取り、マヤは耳と尾を隠さずに暮らす事を約束する。
【Part11】
エルフでは無いとマヤが納得した理由を尋ねると、その証拠に挙がったのはスマートフォンによく似た端末『スタイルフォン』の存在だった。
加えて、アリスの苗字まで日本語になっている事が分かり、ハルトは二つの世界が似ている事を痛感する。
他方、マヤと入れ替わり顔を出したアリスから、マヤがハルトを心配していた事実を聞く。
人の温かさに触れたハルトは、異世界でも何とかなりそうだと思うのだった。
【幕間1】
時は遡り、森の中での一幕。
ハルトが意識を失った直後、マヤの前に“レイヴン”と呼ばれる女性が現れる。
彼女の出現により、なし崩し的にハルトの言い分を受け入れたマヤ。
加えて何が目的か問いただそうとしたが、その答えを聞く事は出来なかった。
そして、レイヴンは自身の力で変貌させたハルトと共に消えてしまう。
【幕間2】
森の中を歩く内、マヤは捜索隊と合流する。だが、彼女の内にはまだ不安が残っていた。
自宅に帰ると、そこには平然と佇むレイヴンの姿があった。
彼女は力を使い、ハルトがこの家の者に受け入れられるよう、認識を一方的に改ざんする。
超常的な感性に戦慄を憶えたマヤは、眠れぬ夜を過ごす。
一方、帰還したレイヴンは“ウォリッジ”(謎の男Aの名前)と、双子の姉弟“フギン”・“ムニン”に迎えられる。
フギン・ムニンが去った後、レイヴンとウォリッジは世界が交わらないよう、ハルトと美夜子の経過を観るよう確認する。
【幕間3】
Part10にてマヤと入れ替わるように部屋に入ってきたアリスが、屋敷を案内すると言って出た。
アリス一家――藤宮家の邸宅は書庫だけでなく和・洋の庭園等もある、とても広いものだった。
だが、それらはどれも元の世界で見た物ばかりで、言語まで被っている。
余りにも酷似した二つの世界の有り様に、ハルトは疑問を感じるのだった。