エイプリルフール版!~○○○に誘拐されました?~
※4月1日でもないのにエイプリルフール版!
※まだ4月だから気にしないでね
※もしも○○○に誘拐されたら……
その日はファウスティーナのお願いで王都から3キロ程離れた場所にある植物園へ朝から馬車を走らせていた。車内に座って窓に手を当てて外の光景を眺めるファウスティーナ。ファウスティーナ付の侍女リンスーは実家から連絡があって暫くお休みとなったので不在。代わりによくファウスティーナの着替えを手伝う侍女シャンプーが同行。また、ケインの従者であるリュンも同行している。リンスーは普段からファウスティーナのとんでも行動に慣れている為驚きはするが冷静に対処出来る。が、慣れていない人では可哀想だろうということで。
見送ってくれた兄ケインをジト目で見返したファウスティーナだった。
「早く着かないかしら」
「王都を出たばかりなので暫くは掛かりますよ」
「とても楽しみだわ」
「どんな植物をご覧になりたいのですか?」
「虫を食べる植物があるって本にあったから、それを見てみたい!」
「それは食虫植物のことでしょうか? ですが、あれはお嬢様が見ても喜ぶ植物ではないですよ」
綺麗な花が好きなファウスティーナの趣向に食虫植物は合わない。見た目からビックリしないか心配である。ファウスティーナの言う本とは冒険物語で、その中で主人公が虫を捕らえて養分にする植物を見つけたとあったらしい。
実物を見てファウスティーナが悲鳴を上げないか心配するリュン。
早く早くと到着を待ちわびるファウスティーナであったが――
突如、馬車が激しく揺れた。
体勢を崩して隣に座るシャンプーの所へ飛んだファウスティーナは、受け止めてくれてありがとうとお礼を言いつつ、急停止した馬車に不安を抱いた。
「な、なに? 何があったの?」
「外の様子を見て参ります。お嬢様達は此処にいてください」
リュンが扉に手を掛けた時。
荒々しく扉が開かれた。
太陽の光を遮るようにして男が立っていた。
さらさらで傷みもない黒髪。高級な生地で仕立てられた黒服。身形からして貴族風な男の顔は真っ白な仮面を着けているので素顔は窺えず。ただ、唯一見える紅玉色の瞳がそっと室内を見回した後――ファウスティーナを捉えた。
「……」
シャンプーに庇われるように強く抱き締められているファウスティーナは、男性の瞳から逸らせないでいた。
母や兄、妹と同じ色の瞳。ファウスティーナと違って同じ色の瞳をした人はいる。同じだけなのに……。なのに……。
「おいで」
「……!!」
男性がファウスティーナへ手を伸ばした。ファウスティーナを守ろうとリュンが前へ出るが、男性がもう片方の手に持っていた白い布を口元に当てられた。誤って息を大量に吸い込んでしまった。
「く……」
くらりと視界が歪む。
立っていられなくなったリュンは座り込むようにして倒れてしまった。
唯一の出口は男性が塞いでいる扉だけ。恐怖で身体が強く震えてもシャンプーはファウスティーナを決して離さないと抱き締める。
「お、おじょ、様には指一本っ」
「君も彼と同じで暫く眠ってて」
リュンに当てた布をシャンプーにも当てた。息を止めようとしたが遅く、吸ってしまった。リュン程大量に吸っていなくても布に染み込まれた薬は、大事なファウスティーナを守る腕の力を弱めてしまった。悲鳴も上げない、動けず固まっているファウスティーナをシャンプーから引き離した男性は外へ出ると扉を閉めた。
「俺とおいで」
仮面の目元から自分を見下ろす紅玉色の瞳。
家族以外にも同じ色をした人はいる。
……いるのに、知っている人と同じだと見えるのはどうしてか。
声を発しようにも、何を言えばいいか分からない。
「無理に喋らなくていい。あと、2人の心配はいらない。1時間も経てば動けるようになる。ああ、でも、リュンはもう少し掛かるかな」
誰もリュンの名前を出していないのに男性は彼がリュンだと知っている。
ファウスティーナはやはり声を発したくても出来なかった。
男性が人差し指をファウスティーナの唇に当てた。
「黙って俺と一緒においで。今のファナなら、俺が誰か解るでしょう?」
読んで頂きありがとうございます!
本当は4月1日当日に、今回からファウスティーナ誘拐編の始まりとかしようとしてました。全然間に合いませんでしたが……。
犯人が誰かは名前出してませんがバレバレですね(笑)
続きは皆様のご想像にお任せします( ´∀`)
本編は夜に更新です。