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婚約破棄をした令嬢は我慢を止めました  作者:
婚約破棄編ー最後にわらった人ー
280/353

アーヴァ様のせいで①

短めです。


 



 感覚として長い時間を馬車で移動した気がする。

 何処へ連れて行かれるか、どんな目に遭わされるか、恐怖で堪らなくて震えた顔を見たかったであろう誘拐犯達とは裏腹に、ヴェレッドに抱っこをされたまま馬車から降りたファウスティーナは強く服を掴みながら絶対に涙を流さないと目に力を入れて外を見た。鬱蒼とした森の中に建てられた小さな屋敷。外観から手入れはされているが人がいる気配がない。誰かの持ち物にしては、建物が立派で騎士の給金で買うには彼等は若い。

 誰か、貴族が後ろにいるのだ。アーヴァにとても強い恨みを持つ誰か。愈々分かるというなら、アーヴァと面識もない子供を攫った相手の顔を絶対に見てやる。

 後ろに剣を向けられたまま先頭を歩く騎士に付いて歩き、屋敷に足を踏み入れた。明かりを持った別の男が玄関ホールに立っていた。



「連れて来たぞ」

「待て、話が違う。公女だけを連れて来いと言った筈だ」

「王弟殿下に知られればすぐに居場所を突き付けられる可能性があったんだ。仕方ないだろう」



「死体の処理は少ない方が良いというのに」苦々しく吐き捨てた騎士の言葉に戦慄した。結局、自分達は殺される運命なのだと。ヴェレッドの服を掴む手に力が入ると背中をそっと撫でられた。安心感は微かに生まれるが恐怖が強くて力は緩めそうになかった。

「おい」と声が飛んだ。



「公女を渡せ」

「お嬢様を殺そうとしてる奴に渡すと思う?」

「今はまだ殺さない。だがお前と公女は別に」

「お嬢様、口開けないようにしてね。舌噛むよ」



 抱っこをされている腕にかなりの力が入った――刹那、後方にいた男の手を的確に蹴り上げ剣を宙へ飛ばした。

 即、体勢を整え男の腹に蹴りを入れ、後ろへ飛ばした。



「きさ――」

「はは、シエル様や王様だったらもっと綺麗に片付けるのにね」



 先頭を歩いていた男と明かりを持つ男が一斉に襲い掛かる。ファウスティーナは一旦下ろされ、目を塞いでてと言われ、その通りにした。

 暗闇の世界で響く悲鳴と骨が折れる音と何かを切る音。

 早く終われ、終われ、と念じて。


「お嬢様」と肩を叩かれた。

 弾けたように顔を上げたら無傷の彼がそこにいた。



「怪我は!?」

「あると思う?」

「思いません!」



 騎士の男が持っていた明かりをヴェレッドに渡されたファウスティーナ。倒された3人に動く気配はない。

 先頭を歩いていた騎士と明かりを持っていた騎士は重なるように倒れており、床には血の水溜りが完成していた。付近に投げ捨てられた血痕が付着した剣がある。それで2人を切ったのだ。



「俺達を連れて来た奴の言う通りなら、坊ちゃんがいるんだよね? 探そうか」

「お兄様に会ったら謝らないと……」

「あの坊ちゃん、大人顔負けの頭の良さだから、案外気付いていたんじゃない?」

「誘拐されるのを?」

「誘拐とまではいかなくても、何かされるくらいは」



 やはり、会ったら必ず謝ろう。

 代理を頼まなければ、ケインは攫われる目に遭わなかったのだから。

 反対にファウスティーナが参加していたら、それはそれでかなり面倒な事が起きてもいそうである。


 他にも敵がいるかもしれない。

 手を繋がれて慎重に屋敷内を歩く。

 1つ1つ扉を開けて中を確認するしかなく、開ける前に人の気配がないかを感覚で決め、ないと判断すると静かに開けた。

 玄関ホールから入って順番に開けていくも誰もいない。



「1階が終わったら2階に行くよ。つうか、誰の屋敷なんだか」

「どこかの貴族とは思いますが」

「分かってるよ」



 また1つ、1つ、部屋を確認していく。


 最後、奥の部屋の扉を開けても人はいなかった。

 室内を見渡すと今までの部屋と違うのを知る。


 壁には絵画が多数飾られていた。

 美しい女性が赤ん坊を抱き、2人を見つめる優しそうな男性の家族の絵。

 赤ん坊が成長して可愛い女の子となった絵。


 時に女性だけの時もあれど、殆どが家族の絵が飾られていた。

 どこかの貴族なのだろうが何処の誰かが分からない。



「この絵に描かれている家族が住んでいた、ってことですよね」

「そうかもね」



 ファウスティーナには違和感があった。家族の絵を飾るには、部屋は屋敷に入って最奥にある。普通はもっと人が利用する部屋に飾るか、廊下に飾っておくべきだ。

 仕舞うように最奥の部屋に飾られているのは、家族の身に何か起きた予想が立てられる。



「此処も誰もいないし、2階へ移動しようか」

「はい」



 ヴェレッドに促され、扉に近付こうとした。

 が、急に体を後ろに引っ張られ、明かりを持っていかれた。

「ヴェレッド様?」と怪訝に顔を見上げたら至極面倒くさそうにしながら、扉の方向を睨んでいた。釣られて視線を動かして悲鳴を上げそうになった。


 息も絶え絶えな血塗れの姿で最初明かりを持っていた男が立っていた。





読んでいただきありがとうございます。



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