19 ぐるぐるぐるぐる
区切りが良かったので短いです。
沢山の感想、ご意見ありがとうございます。お返事はまた後日。
また、何名かからご指摘を頂いている主人公達の年齢ですが物語の都合上、今の所変更はありません。
ご容赦下さいませ(>_<)/
「ご機嫌如何かしら、ファウスティーナ様」
初対面。
初対面。
初対面。
大事だから脳内で3回繰り返した。ベルンハルドの誕生日パーティーで目が合っただけで実際こうして話すのはこれが初めて。なのに、まるで久し振りに会った知人の様に接するアエリアに衝撃を受けた。口端を引き攣らせるファウスティーナは少女姿の天敵その2にどう返すべきか思考を巡らせる。
アエリアの兄コンビもこの発言に驚いている。ファウスティーナの兄ケインも然り。ファウスティーナが言った通りならアエリアとは初対面の筈だから。
黙ったままでは駄目。意を決したファウスティーナは勝ち気な新緑色の瞳と真っ向から対峙した。
「お久し振りで御座いますアエリア様。相変わらず青白くて不健康な肌ですわね。体調が悪いならお帰りになった方がよろしいのでは?」
ぴくりと相手の眉が動いた。ベルンハルド好みの女性になる為に極力外に出ず、綺麗な肌を保とうと前のアエリアは極力日光に当たらないよう注意していた。透き通る程に綺麗な肌をよく不健康な病人みたいな肌だとファウスティーナは嫌味を言った。
「あらあ、ご心配して下さりありがとうございます。ファウスティーナ様って、普段からボケッとした顔をしている割にちゃんと見ていらっしゃるのね。その目はいつも飾りかと思ってましたの」
嫌味を嫌味で返す。表情は綺麗で貴族令嬢の手本にしていいのに言葉が辛辣過ぎて無理である。初対面(の筈)の相手に毒を吐く妹に両家の兄達は呆然としている。
先に動いたのはラリス侯爵家の双子である。
「アリィ、一体どうしたんだい」
「ヴィトケンシュタイン家の令嬢とは面識がない筈だよ。初対面の相手に失礼だよ」
ハッとなったケインもファウスティーナに注意をする。ケインの言う事は尤もだがファウスティーナは気にしてはいられない。アエリアの挨拶。もしも、もしも、自分が思っている通りなら、彼女は……。
「アエリア様。貴女は――」
アエリアがファウスティーナに対し、何かを言おうとしたら。
「きゃあっ!」
物凄く聞き覚えのある悲鳴が上がった。瞬時に視線を移したファウスティーナが見た先には、今日のお茶会用に用意したドレスを赤く染めたエルヴィラがいて。近くには、赤い飲み物が少量入ったグラスを持つ令息がいた。
(ん……? あれ? これ、知ってる。確か……)
今まで何度思い出そうとしても思い出せなかったお茶会の記憶が急激にファウスティーナの脳に再生される。この後の展開が目が回る速度で入ってくる。
視界が回る。
頭が痛い。
痛いし、熱くなってきた。
「ファナ!?」
ケインの驚きの声が聞こえる。
ぐるぐる、ぐるぐると世界が回り、立っていられなくなったファウスティーナは倒れた。
「ファウスティーナ!!」
最後に聞こえた声は……誰だっけ。
読んでいただきありがとうございます。