女神の生まれ変わりじゃないから、結ばれない2
女神の生まれ変わりではないと王族には嫁げない。
知らなかった新事実を告げられたエルヴィラは制止する母の声を聞かず、食堂を飛び出し部屋に戻った。ベッドに飛び込み枕に顔を埋めて涙を流した。姉のファウスティーナ宛に贈られた、ベルンハルドの肖像画をこっそりと盗み見た瞬間、途方もない愛情を感じた。実際に会って確信した。この人は自分の運命の人だと。でも現実は姉の婚約者。何度周囲からファウスティーナの邪魔をするな、部屋に行ってはいけないと言われてもエルヴィラは聞かなかった。ベルンハルドは運命の人。きっとファウスティーナよりも自分を見てくれる。現に会いに行くとベルンハルドは嬉しげに歓迎して、どんな話だって聞いてくれた。途中、ファウスティーナの話もされたが嫌われたくなくて嫌な気分になりながらも付き合った。
好かれているのはエルヴィラ。
誰よりも好いているのはエルヴィラ。
確信しているのに誰も信じてくれない。
最も顕著なのは兄ケイン。
昔からケインは妹達、特にエルヴィラには厳しかった。
ちょっと勉強が嫌になって母とお茶をしている時、仮病を使って部屋に閉じ籠っている時、欲しい物があって父に強請った時。どんな時でもケインは味方になってくれない。いつだって逃げるな、我慢しろ、勉強をしろとしか言わない。
遊んでだってくれない。
「お母様はわたしが遊んでもお勉強を休んでも何も言わないのにっ、なんでお兄様だけは……っ」
自分に厳しい分、ファウスティーナには優しかった。家庭教師との勉強を終えたファウスティーナとお菓子を食べたり、勉強を教えたり、時には庭で遊んでもいた。偶に父がいることもあった。2人を左右に置いてスケッチブックにペンを走らせる父とそれを見つめる2人。自分だって娘なのに、そこに自分の入る場所はなかった。可愛いクマのぬいぐるみを抱えて見ているだけだった。
母だけがエルヴィラにとって救いだった。味方だった。
その母は、毎日ファウスティーナを叱っていたんだ。姉は叱られて当然の出来の悪い人だと思っていた。ベルンハルドの婚約者になれたのだって女神の生まれ変わりだから。そうでなかったら自分がベルンハルドの婚約者になれていた。そう信じていたエルヴィラにとって、今日知らされた事実は到底受け入れられるものではない。
「ああああああああああああああ……!!」
声を上げて泣いた。
ベルンハルドとはお互い想い合っているのに結ばれない。
女神の生まれ変わりではないと結ばれないのなら、自分がそうでいたかった。
泣きながらエルヴィラは考える。どうすればベルンハルドと一緒になれるか、結ばれるかを。
幸いにも彼はファウスティーナよりも自分を好いてくれている。ケインの言っていたことは嘘だ。自分が嫌いだから意地悪を言っただけ。
女神の生まれ変わりではなくてもベルンハルドと結ばれる可能性を考えないと想いは報われない。
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