エピローグ
神官達への挨拶回りも終わり、休憩しようとシエルにお気に入りの場所へ案内された。大きく広がる葉が陽光を遮り陰となる木の下で心地よい風を受ける。地面には、服が汚れないようにと大きめの布が敷かれてある。
「個性的な子もいるけど、基本良い人ばかりだから気を張らずにね」
「はい」
「後、教会にいる間、君を世話してくれる使用人を紹介しなきゃね」
「公爵家から侍女を連れて来ても良かったのでは……」
始め、教会で生活すると決まった際にリンスーが「私もお嬢様と行きます!」と意気込んでいたが、何故か教会側が必要ないと突っ撥ねた。訊ねても美しい微笑を見せられ、つい微笑み返してしまう。人を笑わせる不思議な魅力溢れる人だ。気持ちの良い風を受けていると小さく欠伸を漏らした。王妃教育と違って、気を張る必要もない。不意に頬に暖かいものが触れた。見るとシエルが頬を撫でていた。
「眠いのかい?」
「少しだけ……」
「眠いなら寝ていいよ。時間はたっぷりある。それに、此処には君に何かをしろと強制する人はいない。自分の好きなように時間を使えばいい」
「ん……」
微睡に浸りながら思う。時間があれば勉強、マナーレッスン、ダンス、様々な教育を受けさせられた。勉強は元から好きだし、体を動かすのも好きだったから苦とまでは抱かなくても、求めるだけ求めて一切誉めてくれなかった母がいないだけで気持ちがとても楽になれていた。兄は自分よりも過剰な期待を抱かれているのに、平然とやり遂げ、更に叱られてばかりいる妹を助けてくれる。前回の記憶を持っていても、敵わない、叶わないことがあると知った。
ケインには絶対に勝てないこと。
ベルンハルドが無意識の内にエルヴィラに惹かれていること。
運命には誰も勝てない、抗えない。
ならせめて、誰も不幸にならないようにするのが、前回沢山の人を不幸に巻き込んだ自分に出来る最大限の罪滅ぼし。
(でもその前に、まずは教会での生活に慣れなくちゃ……!)
心の中で片腕を上げたファウスティーナは、そっと瞼を閉じて眠りに就いた。
過去編に長らくお付き合い頂きありがとうございました! 本当にありがとうございました……(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
敢えて書いていないシーンもありますが……これにて過去編終了です。
次回から本編に戻ります。
夜か夜中に最初を更新したいと思います。
今後もよろしくお願い致します。




