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プロローグ
プロローグ
むかしむかし、具体的には20年ほど前。
人間がモンスターの脅威に晒され続けていた時代。
この世界で最も安全な森に少女が迷い込んだ。
少女は酷く痩せこけていて、歩くのも覚束ない様子。
人間嫌いで有名な森の守神ですら憐れに小見手を貸すほどに酷い状態だった。
少女は言う。
「生贄を捧げれば願いを叶えてくれる神様がいる」
少女は言う。
「私をあげるから世界を平和にしてほしい」
少女は口にする。
「父がお腹を空かせているから」と。
美しいと思った。
清らかで宝石のような心に守神は心を奪われ、願いを叶えることにした。
守神は森を出ると国に蔓延るモンスターを追い出し、各国に一冊の本を授けた。
本は魔導書と呼ばれ、モンスターから国を守護してくれるという。
人々は守護に感謝した。一夜にして訪れた平和に歓喜した。
こうして世界は、ひとりの少女と引き換えに平和を手に入れた。
20年経った今でも世界は平和のまま、実話はおとぎ話となりつつある。
守神が未だに平和に手を伸ばしているとも知らないで、