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約束と呪い



「おはようカナリア」


「ベス……?」



目が覚めるとベスティアがいた。

顔は見えない、ただ縋り付いてくる感覚だけがある。

空っぽの内側を満たそうと体温を求めるよう子どものように、その手は力強くてどこか脆い。悲しいことがあった時、ベスティアはいつもこうやってカナリアに縋ってきた。

悪い夢でも見たのだろうか、わけは聴かずに抱きしめてやる。



「カナリアは……カナリアはさ、僕をどう思ってるの?」



朝から難しい質問である。

もしや告白の件の催促だろうか。だとすれば、寝起きの人間に問いかけても良い内容ではないが。その心配はなさそうだとカナリアは思った。直感ではあるが。

単純な思い付きだろうと辺りを付けまだ覚醒しきっていない脳を働かせてみるが、残念ながら纏まらない。思いつくままにカナリアは口を開いた。



「そうだな、家族で兄妹で師匠で家庭教師で」


「…………」


「大切な人。とても大切で、かけがえのないもの。ベスが思っている様な関係になれるかは、分からない。意識したこと、なかったから。でも、お父さんと貴方はわたしの大切な人だよ。それはずっと、なにがあっても絶対に変わらない」


「……うん」


「どんなに親しい人をつくっても、それが何人になっても、ふたりがそれ以下になるなんてありえない。大切で、代わりの利かない存在」


「うん」


「だからそんなに泣かないで、大丈夫。例え貴方がどんな悪戯をしても怒るだけ、ベスがわたしの手を喜んで離すまでは離したりなんてしないから」


「ほんとうに?」


「ほんとうに」


「約束だよ、カナリア」


「うん、約束。ずっとずっと昔からの約束、忘れたりなんてしないよ」



心配性ねと髪を梳くカナリアをベスティアは抱きしめる。

強く強くそれでも壊さないような力で、ゆっくりと少女の体温と溶け合った。

それは甘くて、だけどほろ苦くて、まるで呪いだと妖精は思った。



次回からお菓子の国へ行きます!

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