1.始まり
俺の名前は閃田翔太。薄楽中学校に通っている14歳の中学2年生だ。
10月10日朝8時。いつものように通学路を歩いて登校している。もう秋に差しかかりさわやかな風が気持ちいい。
登校中はいつも石蹴りをしながら歩いている。それがささやかな趣味なんだ。大人にバレたら怒られるんだけど。
でも今歩いている、大通りへと続く線路の沿道は人が滅多に通らないので気兼ねなく小石を蹴りながら歩けるんだ。
遊び方は様々だ。出来るだけ少ない回数でゴールまで蹴り歩く、とか。道路の白い線から外に出ないように蹴る、とか。
......今日は気分がいいし、ちょっと強めに蹴っちゃおうかな?どうせ誰もいないしいいよね、なんて考えながら思いっきり石を蹴ったら横道から出てきた男の頭に当たってしまった。
やばい!調子に乗りすぎた!どうしよう、やっぱり傷害罪とかになるのかな......。ああ、なんであんなに強く蹴っちゃったんだ俺。
けれど、頭に当たったはずの男は何事もなかったかのようにピンピンしてる。
「......危ねーな。俺じゃなかったら怪我のひとつでもしてたところだぞ、おい」
え?いや、いやいや。確実に今頭に当たったよね?それもかなりの勢いで。たとえ怪我をしなかったとしても痛いよ絶対。
「聞いてんのかガキ。ったく、最近のガキはしつけがなってねえなあ」
「おじさん!頭!頭痛くないの⁉︎」
「あ?痛くねーよ。もういいよ、俺は寛大な心で許してやるからさっさとどっか行っちまえ」
「な、なんで?絶対痛いって!あんなの当たったら!」
「そう思うんなら蹴り飛ばすんじゃねーよ......。はぁ、しょうがねー。なんで痛くなかったか見せてやるよ」
そう言うと男はさっきの石を手にとって掌に乗せた。何をするんだろうか?
「誰にも喋るんじゃねーぞ、ほらこういうことだ」
その時、信じられないことが起きた。男の掌に乗っている石が浮かび上がり出したのだ!
「こんな感じで俺は物をある程度自由に動かしたり、まあ他にも色んなことが出来るんだ。ほら、これで分かっただろ?さっさとどっか行けよ」
どこかへ行け?......そんなことが出来るわけない、目の前でこんな不思議なことが起きたんだ。
「おじさん!その技、俺にも教えてくれよ!」
「は?嫌だ」
「いいじゃん!俺も自由に物を動かせるようになってみたいんだ!」
「あー......分かった。だが二つ条件がある。一つ目は俺が、まあいわゆる超能力ってやつだ、それを持っていると誰にも言うな」
「はい、誰にも言いません」
「二つ目、お前も自分が超能力を持っていることを誰にもバレるな。この二つが条件だ」
「超能力のことを誰にも言わず、誰にもバレないようにする......分かりました!」
「本当かよ、まあいいや。じゃあこっち来い」
男は俺に手招きをして呼び寄せ、俺の頭に手を置いた。そして何やら力を込めると、頭の中が一瞬暗くなった。
「ふう、これで終わりだ。あとは自分で勝手に練習しろ。あ、言っとくが条件を破った瞬間お前が死ぬようにしといたから。じゃあな」
「ちょっ、ちょっと待っ、うぅ......」
ああ、なんだかクラクラする。ダメだ、男を追いかけられない。
「な、名前だけでも教えて下さい!」
「......根黒、根黒大樹だ」
根黒大樹、それが俺の人生を大きく変えた男の名前だった。




