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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

【ぐっばい僕らの常識】月影零の過去

作者: 薄桜
掲載日:2018/04/01




「久しぶりだね、師匠」



そう、もう冷たくて動かない師匠に語りかける。



「ボク、シェアハウスに入ったんだ。みんな面白いし、自分の部屋もあるし、美味しいご飯だって食べられる。毎日楽しいよ」



師匠の周りには、沢山のスチータスの花が。



「だから、安心して眠ってね」



今まで座っていた椅子から立ち上がり、師匠が入っている棺桶に蓋をする。


師匠は、ボクが幼い頃にたくさんの事を教えてくれた恩人だ。



ボクは物心つく前から家族に蔑まれ、罵倒され、暴力を振られていた。理由は、ボクが家族の中で一人だけ瞳の色が深紅だから。


不気味とか、お前は家族じゃないとか、悪魔の子とか、そんな事も言われたっけ。


笑えるよね。ただ瞳の色が違うだけなのにさ。


ご飯もあまり食べさせてもらえていなかったから、お腹がすいたときは森に行き果物を食べていた。自殺した人間を見つけ、ボクがネクロフィリアに目覚めたのもその森。


ネクロフィリアに目覚めてから、最初は死体に興味が湧く程度だったけど、そのうちだんだん死体が好きになっていって。


十代になった頃には、毎日森や路地裏を歩いて死体を探すのが日常になっていた。でも、そんな簡単に人が死んでいる所を見れる訳がなくて。探しては見つけられずに帰り、探しては見つけられずに帰りを繰り返していた。


けど、十代半ばの頃。やっと殺人現場を見られた。正気の無くなった瞳、綺麗な血液、辛そうな表情、その全てに興奮した。


しかし、ボクが見つけたのは殺された直後だったらしく。死体の横には、二十代ぐらいのナイフを持った男が血だらけで立っていた。



「あ? なんだお前」

「この人を殺したのってお兄さん?」

「そうだが。見てわからねえか」

「ふうん……ねえ、師匠になってよ。人の殺し方を教えて」



なんであの時、師匠になってくれと頼んだかはあまり覚えていない。多分、人の殺し方を教えてくれるなら誰でも良かったんだと思う。


最初は師匠なんて面倒だからと嫌がっていたけど、毎日つきまとっていたら諦めたように師匠になる事を承諾してくれた。


師匠は人の殺し方だけじゃなく、武術や勉強、この世界の事も教えてくれた。ボクが異常性癖だと指摘してくれたのも師匠だ。まあ、師匠も似たような性癖を持っていたけど。


――――そして、数ヶ月後。ついに家族を殺すことが出来た。あの時のみんなの顔は、今でも忘れられない。



「お前、自分が何をしようとしているか分かっているのか!」

「あなたを産んだのは誰だと思っているの!?」

「お兄ちゃん、酷いよ……!!」



殺されそうになっても変わらず横暴で。



「ご、ごめんなさい! 今までの事は謝るわ。だから、許してちょうだい? ね?」

「ふざけないでよ。……吐き気がする」



かと思ったら手のひら返し。

ついさっきまで罵倒していた相手に、そろそろやばいと思ったのか知らないけど簡単に頭を下げる。


怒りを通り越して、滑稽だよ。



――――その後。家族を首を持って帰ったら、師匠はたくさん褒めてくれた。凄いぞ、流石だって。頭もなでてくれて。すごく嬉しかった。


……けど。突然ボクの頭を撫でていた手が止まり、師匠は悲しそうな笑顔を浮かべる。



「……なあ、零」

「何?」

「俺を、殺してくれないか?」

「……は?」

「俺はもう、生きるのに疲れたんだ。お前も家族を殺せるまでに成長した。もう、悔いなんてないんだよ。だから」

「……師匠は、本当に死にたいの?」

「ああ」

「……分かった」



本当は、師匠を殺すなんて嫌だった。もう親代わりみたいなもんだったし、何よりボクを救ってくれた恩人だから。


でも、師匠が望むことにはすべて答えたい。例えそれが、師匠を殺す事であったとしても――――。




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