勇者になって、どうするの?4
「すみません、質問続けてもいいですか?」
食べ終わってしまい、手持無沙汰になったので声をかける。
「あぁ、悪い悪い。ゴラトも来たし二人で答えてやるよ」
「スキルってなんですか?」
「うーん、スキルなぁ。それは勝手に常時発動する能力って感じだな。稀に自分の意志で発動できるスキルもあるらしいが詳しくは知らん」
パッシブスキルということなのだろう。しかしブレイブは意味が分からん。そして問題はその後の数字だ。
「スキルの後に数字が付いてるんですが、これはそのスキルの段階を表してるんですか?」
「そうだ、I~Xまである。基本的にはIIIくらいまでしか上がらんようだが転生者は高い数字が出るらしいな」
そこでゴラトが補足してくる。
「ちなみにスキルはギルドで洗礼を受けたときじゃないと、付与されない。基本的にな。勇者は特別なギルドがないのでもともとスキルがついてるそうだ」
ふむふむ、わかったようなわからないような。
そこでふと思い出した。
「ダレンさんはなんで俺が勇者だってわかったんですか?」
「あぁ、それは簡単だ。フリードがあの嬢ちゃんを助けるとき何をしたか覚えてるか?」
「えっと、確か右手を突き出して何かを唱えたような・・・・・・」
「そう、まさにそれだ。魔法を使える奴は多いわけじゃないが珍しくもない。ただ魔法には長い詠唱と、発生の時に魔法陣が浮かび上がる。しかしお前の詠唱はたった一言で、かつ魔法陣も発生しなかった。大祖リンクフリードも同じことができたらしい。そういうことができる奴らを勇者と呼ぶんだ」
この俺が勇者・・・・・・、なんだか実感がわかない。
「それでな、転生者にはこの国を救ってもらうってのがあるんだが、勇者に関したらそれはもう義務と言っていい。地下のダンジョンの話を覚えてるか?」
「えーと、はい。確か魔王とか魔物が地下に逃げ出したんですよね?」
「そうだ。地下から地上に通じる穴は無数にあって、たまに今日みたいに魔物が出てくることがある。それで年に何百人もやられている。この辺りは少ない方だが、北の方では頻繁に魔物が出て生活がままならんらしい。そこで必要なのが冒険者だ」
冒険者か、さっきも聞いたな。
つまり冒険者になってダンジョンを制圧しろって事か。
「もう後は分かるな?転生者は軒並み強い、つまり冒険者向きってことだ。そして強い冒険者がいればダンジョンを制圧してその一帯は安全になる。まぁ最初に国を救ってくださいといったが、国というより街の用心棒見たいな感じだな」
勇者と言われてもどうしたらいいのかわからなかったが、これでなんとか道筋が見えてきた。
ブレイブというスキルのおかげか不思議と不安や恐れはない。
とりあえず冒険者になって、生活してみようか。
「冒険者には専用のギルドがある。もしなるつもりがあるなら連れて行ってやるよ」
「いや待てよダレン、ギルドの登録するときってステータス公開しなきゃいけないだろ。それはまずいんじゃないか?兄ちゃんのステータスは知らんが、勇者って事が周りに知れると面倒なことになるだろ」
「勇者であるだけならまぁ問題はないだろうが・・・・・・」
そこでダレンがチラリとこちらを見た。
おそらく規格外のステータスが露見することを心配しているのだろう。
ダレンが考え込んでいると、ゴラトが名案が浮かんだとばかりの声で言った。
「正規ルートじゃなくて、あいつにたのんで冒険者になればいいんじゃないか?」
「あ~その手があったか・・・・・・しかしあいつか」
ダレンはあまり気乗りしなさそうだ。
苦々しい顔をしながらダレンはこちらに質問してきた。
「フリードよ、時に質問なんだが。・・・・・・お前、男もいけるクチか?」
突然何を言い出すんだこの男は。
それが冒険者になるのと何の関係があるんだろうか。
「いや、突然すまん。冒険者になる方法の抜け道として、ある男の協力が必要なんだが・・・・・・そいつの趣味がまぁ・・・・・・アレでな」
「冒険者になるために自分を売るというのはちょっと・・・・・・」
そう引き気味に答える。
男に興味はないのだ。どちらかといえば今日助けた少女のような青い果実の方が・・・・・・。イカンイカン。
「別にそこまで興味があるわけではないので冒険者はやめておきます。身の危険を感じますし」
そうか、とダレンは少し悲しそうに言った。
「まぁもしなる気になったら声かけてくれれば案内するからよ」
一息ついたところでゴラトが声をかけてきた。
「ダレンすまん、そろそろ仕事戻るわ。お前らまだ飲んでいくか?」
「いや、もう結構な時間だ。フリードを宿に送って俺も帰るよ」
「わかった、じゃあこれが伝票な」
「おう、酒と飯うまかったぜ。じゃあな」
そういえばごちそうになっていたのだった。自分もお礼を言わなければ。
「ゴラトさんごちそうさまでした。今度はちゃんとお金払って食べに来ますのでよろしくお願いします」
「いいってことよ。それより兄ちゃんはこの先大変かもしれねぇががんばれよな。応援してるぜ!」
そういうと仕事へと戻っていった。
それを見て俺たちも店の外にでた。
どうやらこちらの季節は秋らしい。夜になると若干肌寒い。
「さて、じゃあ宿に行くぞ」
「あの、すみません。俺お金持ってないんですが・・・・・・」
「心配するな、俺が話を付けるから一か月くらいはツケで泊まれる。その間に何か稼ぎ口を見つけられなかったら俺が仕事も紹介してやる」
なんとも心強い。転生して最初にあった人がここまで面倒見がいいというのもやはり運の高さが関係してるんだろうか。
「すみません、何から何までありがとうございます」
「いいってことよ。ま、いつか偉くなった時には浴びるほど酒を奢ってくれよ」
人好きのいい笑顔を浮かべながらそういうダレン。
最初に会った時の巌の様なイメージとは全く違う。いや、たしかに厳つい顔なんだが、怖くない。
「はい、わかりました」
俺も笑顔でそう返す。
「よしよし。なら早いとこ宿に向かうぞ」
「はい!」
そういって夜の街の喧騒に包まれながら俺たちは宿へと向かっていった。
次辺りに戦闘シーン掛けたらいいなと思ってます