勇者になって、どうするの?
スキル等の説明は3話以降となります
「はぁ~、今日も一日何もせず日が暮れてしまった・・・」
そんなことをつぶやく根っからのニートであるこの男は高校を卒業したきり丸二年ひきこもっている。
「そろそろ時間か」
男がそうつぶやくと、下の部屋から声が聞こえてくる。
「天におわす神様よ!どうかわたしを転生させてください!」
いつも夕方のこの時間になると階下の中学生らしき少年がこうやって奇声をあげている。
最初のうちは、中学生なんだしそんなこともあるだろうと流していたが、さすがにこうも毎日やられるとストレスを感じてくる。
「毎日ほんとうるせぇなぁ・・・頭おかしいのも大概にしとけよな。さて、まとめサイトでもみて飯まで時間つぶすか」
そういってパソコンの電源を付けたとたん、部屋の明かりが消えた。
いや、部屋だけではない。まだ夕暮れだというのに外も真っ暗だ。そんな状況でも階下の奇声だけが響いている。
「なんだなんだ!?停電にしては外まで真っ暗なのはおかしいし・・・まさか目が見えなくなったのか!?目があああ目があああ!」
一人大慌てしながら叫んでいると、足に何かがぶつかった。
小さな箱のようなものだ。
「くっそ!目が見えないってのはほんと困った・・・ん?」
突然視界に強力な光が差した。
余りのまぶしさに目がくらんだが、徐々に慣れてきたので目を開ける。
「どこだここは・・・?」
目の前に広がっているのは、刈り揃えられた芝生。そして太陽が2つ。
「えぇ!?なんで太陽二つあんの!つうかここどこ!これはもしや・・・」
「転移?転生?いや、死んだ感じはしないから転移か?」
そんなことを呟いていると不意に背後からドスのきいた声がかけられた。
「おい坊主、お前今ここに突然現れなかったか?」
そこにいたのは巌の様な、筋肉の塊だった。そんな男がこちらを訝しんでいる。
「え、あ、その、すいませんでしたー!!!」
二年も引きこもりを続けていた人にとって、こんな初対面の仕方はさすがに厳しかったらしく混乱の余り土下座した。それはもうきれいな土下座である。
「おいおい、坊主どうした。男が簡単に頭下げるんじゃねぇよ。さてはお前さん、噂に聞く転生者だな?」
「転生者・・・?」
興味深い単語が出て思わず顔を上げる。そこにはまだ厳つい顔があったが、初対面ほどのインパクトはなかった。
「あぁ、知らないってことはやっぱりそうなんだろうな。よし、じゃあ転生者に会った時には言わなきゃならん事があるんだ」
男はドスのきいた、不慣れそうな敬語でこう続けた。
「勇者になってこの国を救っていただきたい。そうすれば報酬はお望みのまま。そして、ようこそベルーフへ!っとこんな感じだったかな」
その言葉を聞いてもさっぱり意味が分からなかった。勇者?国を救う?ベルーフ?
「まーだ固まってやがるのか、よし。取りあえずついてこい。ギルドにいくぞ」
そういって腕引っ張られ半ば引きずられるように太陽の沈む方角へと連れられて行った。