経緯
「獣王の事を知っているのですか?是非教えて下さい。」
俺は獣王の事を何も知らない。クルフは無駄なことは何も話さないからだ。
「すまないが獣王の事を知っている訳では無いのじゃよ。しかし、王を名乗れる者は神が産んだ四人の王だけじゃ。そして王達は自らに与えられた使命を果たす為に精霊を産み出しダンジョンを作らせ人々に試練や恵みを与えておる。王から祝福を受けた者など聞いたことが無いの…。」
「とても信じられる話ではない。君は何処でその祝福を得たのだ?」
俺は転生者の所だけ隠して全て話した。自分の生い立ち、獣王のこと、そしてここに来た理由も。老師とイーリスからは俺がここで寝かされている経緯を聞いた。
「…そんなところじゃよ。のぅイーリス、わしはダイン君の話は信じれると思うがどうかの?獣王の魔力は確かに恐怖を振り撒いておった。あれほどの魔力はわしも初めて見た。それに七歳の子供には厳しい状況じゃ、大人が助けてやらねばならん。」
「確かに魔力は本物でしょう。しかし、だからと言って話全てが本当とは限りません。それに老師はダイン君をどうするつもりです?」
「ダイン君は聖域に入りたくて来たのじゃ。規則に従い修行させる。魔力の使い方も一緒にな。それに少年の嘘が解らぬほど落ちぶれたつもりはないぞ。」
「ふ~…。まぁ、その辺の判断は剣聖様にお願いしましょう。」
「あの…」
俺の意思を考慮しない話し合いに少しイラつきもするがここで修行するのは悪くないと思う。自分の強化は優先するべきだ特に魔力は自分で練習するにしてもよく分からない。
「俺もここで修行させて貰いたいです。あと、出来ればシュバイン領には俺の事を伏せてもらえるとありがたいんですが…」
「約束は出来ないが可能な限りそうしよう。他には何かあるかい?」
「いえ、特にありません。」
イーリスは頷き別れの挨拶をして道場から出ていった。
「すみませんでした。俺のせいでケガをさせてしまって。」
「気にする事は無いケガも魔法で治してもらったしの。ダイン君は今まで苦労してきたんじゃ、ここではゆっくりしていくといい。」
まさにお爺ちゃんって感じだしテレスはかわいい、居心地も良さそうだし少しゆっくりさせてもらおう。
「さて、わしも剣聖様の所へ行ってくるかな。イーリスだけじゃ不安だからの。テレスや後は頼むぞ。」
そう言って老師も出ていった。道場に残ったのは俺とテレスだけになった。テレスの表情はいつも変わらない仏頂面だ、顔はかわいいのに勿体無い。
俺が何かしゃべらなきゃと思い言葉を探してるとテレスが立ち上がった。
「ケガが治ったらさっさと出てって。邪魔だから。」
やっぱりあまりゆっくりは出来ないかも知れない。