暴走
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見張りの男に剣を構える。
相手からは迫力は感じられないが代わりに神経を研ぎ澄ましているのが分かる。
この人は強い。素直にそう感じる。俺の剣の腕は騎士団でかじった程度。正面からでは勝負にならないだろう。しかし、こっちは弱いながらも魔力を纏っている。単純な力と速さなら勝てる筈だ。先ずは奇襲を掛ける!
一気に側面に回り込みながら横に切りつける。だが見張りの男には届かない、俺に合わせ向き直ると半歩下がりかわす。俺は更に踏み込みこんどは上段から斬りかかるがこれも避けられる。そのまま離れずに連続で斬りつけていくが相手には届かない。再び力を込めて上段から切りつける!
「!!」
気付くと態勢を崩されている。力を込めた一撃は相手に受け流され、側面に回り込まれている。相手は上段から斬りつけて来る。この試合で相手が放つ最初の一撃をまともに受けて吹き飛ばされる。
「君は力や速さは確かにある。しかし、剣の腕はまるでダメだ、
型は半端で駆け引きや先読みをしない子供の剣技だ。君は基礎をしっかり覚えてからもう一度来たほうがいい。」
この見張りの男は強い。発する言葉も的確だ。だが、俺は変わったんだ、俺は強くなるんだ。こんなとこで負けるわけにはいかない。
腕輪が僅かに光始める。
『何を遊んでるんだ?さっさと倒せよ。』
(五月蝿い!黙ってろ!)
光が徐々に強くなる。
『こんな奴に負けるのか?』
(黙れと言っている!!)
黒い霧が体を包み込む。
『そんなことだと…、 また奪われるぞ。』
(!!!)
見張りの男は目の前の少年が黒い霧に包まれた瞬間、今まで感じたことが無い程の恐怖にかられた。今まで数多くの戦いをし、鍛練に鍛練を重ねてきた身であっても目の前の恐怖に体を震わせずにはいられなかった。剣を構えなければ。そう思っても体が動かない。
「お前は下がっておれ。」
そう言うとラファエル老師が自分の前に来て剣を構えた。そして青い霧を纏った。少年のとは違い恐怖は無い。
「魔力に飲まれた者を止めるには叩いて起こすか別の魔力で中和するかじゃ。ただこれ程の魔力を引き出せるとは…」
そう言うと老師は刀を手を抜き構えた、老師の刀はドワーフのダンジョン50階そうで採れる希少鉱石、白銀で出来ておりあらゆる魔力を切り裂くと言う業物だ。
少年は力と速さに任せて正面から老師を斬りつけた。老師はそれを受け流し態勢を崩させる、しかし少年はそのまま蹴りあげる。老師には当たらない。再び老師を切りつける、老師は受け流すと同時に肩に刀を突き刺した。
老師は返し技の達人だ、相手の力が強い程老師の技は冴える。突き刺した肩周りの霧が吹き飛ばされる。だが少年は止まらない。気にせず殴りつける、老師は避けようと体を捻るが腕を掠める。
「かすめただけで腕をやられるとはの…、」
老師の腕は力無く垂れ下がり大量の血が流れ表情が曇る。少年の肩はみるみるうちに再生している。
少年は変わらず正面から襲い掛かる。老師は構える、しかし今は片手しか使えない。次の瞬間大きな音をたてて少年が地面に叩きつけられる、老師は更に少年の胸に峰打ちを放つと黒い霧を打ち払い少年は動かなくなった。
「老師。…今の技は?」
「地面に向けて受け流しただけじゃよ、わしの力も加えたがの。」
老師は簡単にいうがあれだけの力を受け流すのは老師の腕前だからこそだ。しかし、その腕を持っても初見では返せないだろう。勝機が有ったのは少年の攻撃が三度同じ攻撃だったからだろう。
「老師、何があった?」
そう言うと五人の男が現れた。その中の一人は剣聖様、後の四人は剣王様だ。
「これは剣聖様、少年が入門試験の最中に魔力に呑まれましたので無力化しました。」
「あの凶悪な魔力をこの少年がか…」
「剣聖様にお願いがあります。この少年、わしに預からせてはもらえませんか?」
剣聖は困った顔をして言った。
「先ずは少年が起きてからだ…。」