月組戦始まる
月組戦まで2週間となったある日、学園の体育館に月組生徒が一同に集められる。体育館壇上には学園長。
「よく集まってくれた月組諸君!今日は月組戦トーナメントの抽選を行う!各チーム代表は壇上にくるように」
各チーム代表が壇上に上がる、同時に数人の教師達がトーナメント表の書かれた大きなボードとその前には抽選するためのボックスを配置する。
「それでは三年代表から二年代表、一年代表と五十音順に呼ぶので抽選ボックスからボールを引いていくように」
教師の一人の仕切りにより次々とボールを引いていく、トーナメント表に名前が埋まっていく
一年代表は舞花だけだったので抽選をする事なく最後に空いた場所に名前が書かれる。どうやら一回戦初戦になったようだ。
「では諸君!残りの日数も鍛錬に励み良いバトルを見せてくれる事を期待している!只今を持って解散!」
ぞろぞろと体育館から人が出て行く中、舞花達に一人の帽子を被った生徒が近づいてくる。
「やあ、陽桜さん!久しぶりっス!」
「えと、木場さんだっけ」
「そうそう、一緒に校章もらった木場っス!」
「あれ以来ほとんど見かけなかったけど同じ校舎にいるはずなのに不思議だねえ」
「ほぼ2階の畳の間に篭ってチームで練習してたからっス!」
「畳の間?木場さんのチームは柔道家がいるの?」
「ハイ!…いや秘密っス!んじゃ初戦でまた会いましょうっス!」
木場が去っていく。
「…私達だけ一年生のみで、上級生のいる他のチームと比べて 対戦相手の情報が少なくて不利だったけど、今の木場さんのおかげで相手に木場さんと柔道家が一人はいるって事がわかったわね。けど女性でも柔道なら他の競技と比べて成績良ければ支援して貰えるのだから わざわざこの学園で夢を叶える必要はないと思うんだけど」
「柔道ならそこそこアタシがやってたから初戦の日まで特訓しようか」
ー月組戦 初戦の日ー
「やれることはやったし、後は神のみぞ知るってやつかねえ」
「ウチならきっと勝てますよお」
「…不安だわ」
それぞれの思いを胸に3人は試合会場となる学園の外にある闘技場へ、山の中に隠れるように建つドーム状の闘技場。ドーム内中央にはリングが設置されていて、その周りを囲むように千人収容できる観客席と、その2階には10室のVIPルームがある。既に観客席は人が埋まり、舞花達はリングの下で周囲を見ている。
「たかが学生の試合になんでこれだけの人が集まってんだい?」
「…ここに集まっている観客は、表向きはこの学園に出資してくださっている方々で、実際はは…」
孔明さん曰く、多種多様な戦い方をする若い娘の勝敗を予想し、大金を賭けて盛り上がっているらしい。お金持ちの考え方は理解出来ない。だがその資金のおかげでこの学園が成り立ってるようだから気にしないようにしよう。
「相変わらず孔明さんは物知りだねえ」
「…私の父から聞いたのよ、多分ここにも来ているでしょうね」
「ウチのお父さんも来ているかな?」
「家の名誉とか言ってるから薄々はと思っていたけど二人はお嬢様だったんだねえ」
ドーム内のライトが消えてリング中央のみライトがつく、静まりかえる場内。リング上には学園長の姿が。
「お集まりの諸君!長らくお待たせした!只今より月組戦を開始する、まずは選手紹介!青コーナーから陽桜舞花!雨乃孔雀!子犬見千路!リング上へ!」
名前を呼ばれリングに上がる3人
「次に赤コーナー! 遠山絹江!エリス中島!木場魅吉!リング上へ!」
遠山絹江と呼ばれた黒髪短髪目の下にソバカスのある少女が上がり、続いて金髪リーゼントのスカートを足首までのばした改造制服の外人のハーフとみられる少女が上がり、最後に木場魅吉が上がる。
「月組戦のルール説明をする、チーム戦だが リングで戦うのは1対1、ダウン後10カウントで立ち上がれず、KO、ギブアップにより負けた者はリングから退場、学園指定の武器の使用可、相手チームがいなくなるまで戦い相手チームを全て倒したら勝利。いつでもそれぞれのコーナーにいる仲間とタッチすれば選手交代できる。なお相手を殺したり、重症を負わせたチームはその場で失格とする。そして重要な事はチームの為に戦う事。まず各チーム最初に出る者を決めなさい。互いの代表が出揃ってゴングがなったら試合開始だ。健闘を祈る!」
学園長がリングを下りVIPルームに向かう。
「さて、試合が始まるね、誰から行く?」
「ウチ、ウチにやらせてくださいよお!」
千路が意気込んで先鋒にでる、相手は金属バットを持つ木場を出してきた。
カン!ゴングが鳴り響く、先手を打つのは木場、手に持つバットで千路の腹部を狙う。
「夢の為とはいえバットを凶器にするのは気が引けますが、乱闘の練習だと思ってやるっス!」
後ろに身を引きバットを躱した千路だがバットのリーチの長さに近づけない。
「チロ タッチだアタシと変わりな!」
「ウチで勝てますよお」
舞花が手を伸ばしタッチを求めるが、千路は拒否するとロープを使い木場の周りを勢いつけて馳け廻る、段々とその速度に翻弄される木場。
「いまです!グルグルチロパーンチ!」
一気に木場の懐に入った千路は木場のボディにパンチを決める、木場は苦しさで動きが止まる
その隙を見逃さず千路は必殺の一撃を放つ!
「チロアッパー!」
木場の顎を捉えた拳が上がる、木場は倒れ立ち上がらない。
「勝者 子犬見千路! 赤コーナーはすぐに次の選手を出しなさい。」
学園教師がレフェリーとして場を仕切る。
「アタイがイキマスヨ!」
金髪リーゼントの不思議な日本語のヤンキー娘エリス中島が次鋒で出る。
「チロ、タッチだアタシと変わりなって」
「姐さまが出るまでもないですよお」
またも千路はタッチを拒否する。
「ナメラレタもんだネー ブチころしてヤリマス!」
先の試合とうってかわり、エリスと千路はリング中央で殴りあう。その光景に観客席が盛り上がる。
「気合があればナンデモデキマス!」
「楽しいね!でも後一人戦わなきゃいけないから、決めさせてもらうね」
千路がしゃがみチロアッパーの態勢をとろうとすると、エリスの前蹴りがはいり後ろに仰け反る
「ずるーい!キックとか反則ですよお」
「アタイはボクサーじゃないからパンチだけウチマセン」
「折角楽しい殴りあいだったのに、こうなったら新技を出そうっと」
半歩下がってエリスと間をとる千路
「いくよ!新チロパンチ!」
左回転しながらかがみ込み下から拳を上げる、アッパーと同じように前蹴りで対処するエリス。その足を上げていない手で抑えて逆の拳でエリスの顔にフックを決める。綺麗にエリスの顔に入りエリスは倒れた。
「ボクサーが足を拳でオサエルナンテ…」
「ウチもボクサーじゃなくて、子犬見流拳闘術の使い手ですよお」
「勝者 子犬見千路!」
千路 二連勝