いざ月組へ
入学式翌朝
「…さま、姐さま、朝ですよぉ!」
誰かの声が聞こえ目が覚める。
「ん?ここは…?イテテ…」
舞花の身体を激しい痛みが襲う、昨日の戦いのモノだろう。
「あの後、気を失ったのか…うーん!心地良い痛みだねえ」
大きく身体を伸ばし舞花は寝ていたベッドから降りる
「あれ、ここどこだ?」
「ここは学園寮ですよ!ウチは姐さまと同室の子犬見千路です!」
「この学園寮は二人で一部屋なのか…って広っ!」
舞花が室内を見る、広さは20畳くらい 机、本棚、ダブルベッドが一つずつ部屋の中心から対称に用意されているが、空きスペースはまだまだある、二人で使うには広すぎる部屋だ。
「うーん広すぎて落ち着かないねえ…そういえば入学式の結果てどうなったの?」
「ウチと姐さまは合格です、このお部屋は月組生用のお部屋で月組入りが決まったので、姐さまを休ませる為に治療後すぐにここへ運び込んだんですよお」
気を失った舞花を看病するからと理由付けて強引に千路は舞花と同室になる権利を得ていた。
「そうか千路が運んでくれたのか、ありがとう」
「ウチは姐さまについて行くと決めましたしこれくらいお安い御用ですよお」
ふと千路の顔をみるとサイドツインテールの髪がボクシンググローブで包まれている。
「変わった耳当てだねえ…」
「いつでも戦えるように常に身に付けているんですよお」
「そうなんだ、いつ戦いになるか 分からないものね」
「そうですよ、闘姫学園に入った以上 気を抜く時間はないのです。…あっ!そうだ そろそろ学園長室へ行かないとお」
「学園長室?」
「新月組生への校章授与式するみたいです」
ー学園長室ー
学園長と書かれたプレートの置いてある高級な机を挟んで 長い黒髪の奇抜な白い着物姿の年齢不詳女性が黒革の大きな椅子に座っている。その向かいには今回の合格者と見られる6人が立ち並ぶ。
「おはよう!私が学園長の姫流院梅香だ!まずは自己紹介がてら 君たちの名前と叶えたい夢を聞こう、端のキミから頼む」
野球帽をかぶった生徒が帽子を取り一礼する髪型はボウズだった。
「一年 木場魅吉女子プロ野球リーグを設立するのが夢です」
肩にかかる長さのボブカットに白い手袋をした生徒が一礼する。
「二年 西城葉虎単独公演のワールドマジックツアーを行う事が夢です」
「一年 陽桜舞花 女子プロ団体を設立して全盛期以上の人気を得る事が夢です」
「一年 子犬見千路 子犬見家の名誉の為に来ましたが今の夢は舞花姐さまと同じ女子プロです」
「一年 雨乃孔雀 雨乃家の名誉の為に来ました」
中分けショートボブの生徒が一礼する
「一年 影井雫暗殺者になる為の人脈とバックアップを希望します」
「あ、暗殺…!?」
他の生徒が動揺する
「今年の月組生は面白いのが集まったな、しばらく大人しい生徒しか来なくて退屈してたが、今回は楽しめそうだ。さあ これが月組校章だ、これを付けたら月組校舎へ向かうがよい!」
学園長は一人一人に校章を手渡してくれた。
ー学園長室前の廊下ー
「いやー暗殺者を目指すって人を見るのは初めてっスよろしくっス!」
魅吉が雫に手を出し握手を求める
「失礼、私はそういう馴れ合いはしない」
雫は一人 月組校舎を目指し歩いていった。
「暗殺者だから一匹狼って奴なんスかね、格好良いっス」
「ところでさ月組校舎ってどこにあるの?」
「二年の私がご案内致しましょう、こちらですよ」
葉虎の案内で皆が校舎へ歩きだす。
「先輩聞きたいんですけど 月組に入ったら何をすればいいんですか?」
「月組生は一年生から三年生までの全48名の中から3人1組のチームを作り月組戦を行う」
「チーム戦?チーム分けってどうなってるんですか?」
「月組在校生からのスカウトか自分でチームを作るのよ、後はチームに入れなかった者同士でチームを作るか」
「スカウト?どうやって実力を見抜くんですか?」
「昨日のバトルで立会人としてついた黒子を覚えてる?あの黒子は月組生や教師なのよ、だから月組生のお眼鏡にかなえばスカウトされるって事ね。月組校舎が見えてきたわ」
目の前に月組校章と同じ三日月を形どったエンブレムの付いた3階建ての大きな校舎が見えてくる。
「こんな広い校舎を48人だけで使えるの!?勿体無い」
中に入るとトレーニングに必要な機器が並んでいる
そこでは月組生と思われる人がトレーニングしていた
「一階は丸々トレーニングジムなのか、圧巻だねえ」
「二階は手合わせの出来る リングや畳 マットなどの試合場になっていて三階はプールと食堂になっています」
「先輩 随分詳しいんですね」
「陽組生はこの校舎の清掃担当ですからね、嫌でも詳しくなりますよ」
新入生を見てトレーニングを止めた生徒が近づいてくる
「西城葉虎さんよね、私達のチームに入ってくれないかな」
「とりあえず話を聞いてみましょう…舞花さんそういう事だから私はこの方達の所に行ってくるわ、それじゃあ」
葉虎が去っていく、振り向くと木場魅吉もスカウトされて去っていく、千路もスカウトと話しているようだ
「ゴメンなさい、ウチは組む人を決めているので…」
千路が舞花の元へ来る。
「姐さま、ウチと組みましょう!」
「チロと組んだらスカウトを断らなくちゃいけなくなるから…」
「で、姐さまにはスカウト来たんですか?」
「ぐっ…」
何故か舞花と孔雀にはスカウトが来ない。
「何故アタシにスカウトが来ない…」
「うーん、お顔の所為だと思いますよお」
「顔!?アタシが悪人面に見えるというのか!」
「あー、姐さま起きてから お顔見てないんですね。ハイこれ」
千路が手鏡を渡す、覗きこむ舞花
「なんじゃこりゃ!」
そこには酷く腫れ上がった顔の少女
「どうみても敗者の顔ですよお でもウチは姐さまの強さに惚れたので気にしません!」
「うーん、アタシにスカウトが来ない理由はなんとなく理解したけど あそこの孔雀にも来ない理由はなんなんだろうねえ」
「恐らくですけど、そのお顔の姐さまと引き分けたからじゃないですか」
「ちょっと待て、それならアタシに負けたチロにスカウトが来た理由は?」
「さっきの方の話だとウチの反応速度と破壊力に惹かれたって言ってましたね」
「う、確かにチロの強さは惹かれるかもな…」
「惹かれるかもなんて、ウチは姐さまについて行くって決めたんですからー」
舞花の肩に後ろから千路がおぶさってきた
「仕方ないねえ 後一人見つけてチーム作ろうかねえ」
「…お待ちなさい」
孔雀に呼び止められる
「…聞くつもりはなかったのですけど、私にスカウトが来ないのは舞花さん貴女の所為なの?」
「いや、知らないよっ!アタシだってスカウト来なかったんだから」
「…理由になってません!私がチームを組めない責任をとりなさい!」
「理由になってないのはアンタだろ…責任たってどうすれば…」
「…私と組んで暴れましょう、そしてスカウトしなかった見る目のない人達を後悔させてやるのよ!」
「昨日は冷静な奴だと思ったのにとんだ豹変ぶりだねえ、チロ 孔雀と組んでいいかな?」
「ウチは姐さまに従うので構いませんよお」
孔雀の勢いに負け、チームが結成された
キリがいいなという所で切るので
更新速度や文章の長さにかなりバラツキがでると思いますがご了承ください。