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渇いた夜に  作者: ナッツ外道
第1章
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やっと落ち着きました

 魔導獣と呼ばれる何かを破壊してから数時間。勅令憲兵と呼ばれる警察組織のような人たちからは賞賛され、街の混乱も収まり始めていた。


 軍令憲兵と呼ばれる人たちにも、尋問というか詰問をされるのかと思っていたのだが、最初に話しかけてきた勅令憲兵の隊長と呼ばれるおっさんに「ありがとう、身分証明だけいいか?」と言われた際、ノアから言われた通りにしたところ、特に何事も無く無罪放免(?)となったのだった。


 ~1時間前~


 「身分証明だけいいか?」


 「雪緒。この場合『マナデータ』と伝えて下さい。」


 俺にだけ聞こえるように、ノアが言ってくる。


 「え?あ、ああ。…あ~、おっさん。マナデータなんだが。」


 「そうか。では、悪いが待機所まで来てもらってもいいか?規則なんでな。」


 ということで、待機所とやらでノアに言われた通りにまた左手で機械にタッチした。


 「ユキオ・シモヤマ。25歳。シーカーか。あんなに強いシーカーは初めて見たな。エデルからだと結構な長旅だったようだ。荷物は宿か?」


 「…あ~、今日来たばかりでまだ宿には入ってないんだ。荷物はさっきの騒ぎの時になくしてしまってな。」


 「そうか。そいつは気の毒だ。まぁ、さっきの魔導獣でだいぶ金は入るんじゃないか?」


 「…いやいや、あはは。」


 「とりあえず、証明は確認できた。さっきは死なずにすんだよ。ありがとう。」


 という感じで、何事も無く勅令憲兵の待機所をあとにした。ノアによると、身分証明にあたるものは『カード』と『マナデータ』の2つだそうだ。


 カードはその名の通り発行型のカードで、本人のマナを通すと情報が表示されるらしい。マナデータは、本人のマナそのもののデータを役所に届けて情報化したもので、出生時や本籍を変える場合などにデータを更新する。また、会社などの組織でも大きなところではマナデータの職業欄を変更出来るらしい。その際には、役所との手続きが大変みたいなのだが。


 カードはなくしてしまう心配があるが、データの書き換えなどが簡単。マナデータは生体データとも言えるものなので、そう簡単に変えられないみたいなのだが、その代わり無くすことのないものってことだ。


 マナデータには、名前・本籍・現住所のほかに職業、免許の有無などをデータ化する人が多いらしい。色々と手続きがめんどくさくても、マナデータのほうが圧倒的に便利な気がする。


 カードには主に、銀行関連の事や証明・証書発行などのディスペンサー対応という役割が普及している。マナデータを読み取るリーダーは、高価な魔導部品を使うため汎用化が難しいらしい。盗まれたり、買い換えたりが面倒だということだ。


 「で、ノア。お前がデータの改ざんをしたのはわかったのだけれども、なんで俺の職業が『シーカー』というものなんだ。」


 「シーカーは、ダンジョンの探索を生業とする特殊な職業です。傭兵や雑事をこなすシーカーもいますが、基本的には探索して得た物や情報を売る事で生計を立てます。」


 「…なるほど。妥当だな。」


 レイスでは、普通に働いている人が99.9%以上だという。しかし、現在この世界がここまでの発展をしてきたのは、ダンジョンで得た未知の技術や情報のおかげだ。ノアに使われる『テクノス』や、その他のイムホテプ文明の遺産。これらのほとんどがダンジョンから出てきたものだという。


 なぜ、1万年以上も前のものを研究したり使ったり出来るのかというと、ダンジョンの中では物体の時間経過が違うらしい。ダンジョンの中では、まったくと言っていいほど物が劣化しないのだ。


 「それってさ、ダンジョンの中にいたら不老不死ってこと?」


 「否定します。調査では特殊な加工を受けた古代の物のみが、時間の影響を受けないと推測されています。また、ダンジョンの中では常に一定の魔導獣がマナを求めて彷徨い、破壊される度に精製され続けています。生き続ける事は困難でしょう。」


 そいつは御免こうむる。あんなのがうじゃうじゃいるのでは、不老不死どころか即御臨終である。


 そんな話をしている現在。ノアに言われて来たのは、役所だった。軍令憲兵が魔導獣騒ぎの検分を終えているだろうということで、報奨金が受け取れるらしいのだが。


 「書類とか出てきたら書けませんぜ。」


 「問題ありません。私が雪緒の手を動かします。」


 「は!?そんなことも出来るの??」


 「雪緒の了承を得て行いますが、雪緒の身体を動かすことは可能です。」


 言いたい事はあったが、とにかく役所で書類にサインをしてから報奨金のデータを確認し、あると便利だと言うことでカードを作った。生涯で初めては無料らしいが、普通発行にはお金が掛かる。俺の歳で初めて作る人も珍しいというようなことを、役所のおっさんに言われた。


 んで、報奨金の額は8,500テイル。1テイルで100円くらいだと。なので、あいつを一発殴っただけで85万円ほど儲けてしまった。簡単なお仕事です。


 テイルは1・5・10・100と紙の札で、その下には1・10・50オルムという硬貨があるという。


 俺はとにかく返り血?を浴びている服を着替えたくて、500テイルをさっそくディスペンサーで引き出すと服屋へ行くことにした。顔と手は憲兵の待機所で洗ったのだが、服は黒く汚れてなんともいえない臭いをしている。カビっぽいような感じだ。


 とりあえず黒いTシャツ2枚、カーキの裾を紐で縛れるパンツ2枚、下着と靴下を5枚ずつと動きやすいブーツを購入。ブーツは茶色でハイカットのものを選んだ。一見して完璧に軍人の休日だが、動きやすさと、とりあえず着るものということでいいだろう。


 黒のリュックとマネークリップ、小銭用の財布も一緒に購入して、飯を食うために外に出た。服などは、しめて300テイルほどだった。



 ノアからこの街のうまい店、という情報を検索してもらってから、その中でも庶民的な店で魚料理を食べたのだが…非常に美味かった。


 香辛料の効いた、スパイシーな揚げた魚。その下には、葉野菜をはじめとする大小に切られた野菜が敷き詰められ、さらにその下にはパスタが粒上になったような炭水化物的なものがある。


 これをナイフとスプーンの先がフォークになっているやつで食べた。ものを食べる道具は、コレが一般的らしい。これが一人前で6テイル。安い気がする。


 そして、安全を一番に考えて少し高めの宿にチェックイン。お湯の出ない宿もあるらしいので、一泊75テイルはしょうがないだろう。日本だったらビジネスホテルくらいの値段だしな。


 「ノア。明日なんだが、とりあえず近場のダンジョンを見てみたいんだけど。」


 「了解しました。ここからだと、馬を使って6日ほど北上したところにべヘルス領管轄のダンジョンがあります。」


 そういえば移動手段って馬なんだよな~。あの鎧の男も馬だったし。


 「OK。そこにいってみるか。じゃあ、風呂も入ったしおれは寝る。おやすみ。」


 「…おやすみ。とは挨拶です。なぜ私に?」


 「…うるせーよ、もー…そんなのいいだろ。お前が居て、俺が居て、寝るんだから。おやすみだろ。お前も寝ろ。おやすみ。」


 「…おやすみ。雪緒。私に睡眠の必要はないですが。」


 そんなノアの声を聞きながら、俺はすぐに眠ってしまった。いつもならそんなに寝つきのいいほうじゃないのだけれども。


 誰かに「おやすみ」を言うのって、母さんが死んで以来だな~とか思いながら。


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