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渇いた夜に  作者: ナッツ外道
第1章
8/16

異世界ではじめての街

 アトゥムに入ってから2時間ほど、おおよその街の感じはわかった。ビルの並ぶ街の南側に対して、中心地は雑多な出店や民家が目立つ。それより先は、いわゆるスラムになっているという。


 ビルと言っているが、四角くて高い建物だと思ってもらうとわかりやすい。というのも、中を見る感じだとエレベーターに相当するようなものや、明るい室内といった文明を匂わせるようなものに対して、窓がないのである。


 いや、ガラスがないと言ったほうがいいだろうか。窓枠はあるのだが、肝心のガラスが入っていないので怖い。落ちないように格子状の棒があるにはあるのだけど、高い建物も低いものも全てに窓がなかった。ビルは高いもので10階くらいはありそうなので、落ち着かない。


 なんだろう。タイとかフィリピンなどのアジア圏にありそうな感じというか、なんだか偽物っぽいというか…。手動で回る観覧車みたいな。


 歩いている人も、スーツのようなフォーマルな格好の人は居なくて、なんだかラフな服装の人が多い。Tシャツ一枚でOKな、とても過ごしやすい気温だ。


 ノアに「窓がない」というと、街全体を障壁で覆っているので強い風が吹くことがなく、安全面ではまぁ問題ないそうだ。といっても、このような建物の造りはこの国独自のものらしいから、なんとも言えないそうだが。伝統的な建物ということだ。なんか強度とか大丈夫なのでしょうか。


 街にある建物の外観は、すべて白で統一されている。白土と呼ばれる、水とマナを混ぜることで建材としても使える粘り強い強度になるものを使っているらしい。


 「街の障壁ってさ、雨とかどうなるの?」


 「完全に遮断します。」


 「じゃあ、作物を育てたりはしないんだ。」


 「ここではしません。ここアトゥムは小さい商業都市です。食べ物など生活に必要なものは、すべて外部から入ってくるようです。」


 そんな街の事情を聞きながら、俺たちが今歩いているのはビルのある商業区。街をぐるっと回っているときに話した事が原因で、ここにあるモノを探しに来た。探しにといっても、ノアがいるから場所は分かっていたのだが。


 〜10分前〜


 「ノア、衝撃的な事実に気付いたんだけどさ。」


 「なんでしょう。雪緒。」


 「俺って、今日野宿?」


 「理解不能。質問の意味がわかりません。」


 「いや、だって宿はあるかもしれないけど金がないじゃん。」


 「キャッシュディスペンサーで、引き出せばいいのでは?」


 そういうものまであるのね。…でもそれってさ。


 「もしかして…。」


 「ハッキングします。」


 やっぱりね。だと思いましたよ。コイツって、犯罪ツールとしては100点だよな。


 「やむなし…か。だって、いきなり異世界に連れてこられたんだし…しょうがないよね。ね。」


 「生きること、健康状態を維持することを推奨します。」


 「まぁ、この世界に長居する気もないし。いいか。」


 いや、全然良くないんだけども。ということで、現在に至るというわけだ。そんな会話があったにしても、俺は他に方法がないものかと考えながら歩いていた。


 それにしても、やっぱり注目されてる気がするんだよな。格好が変なのかな。


 今の俺の格好は、会社帰りだったからジャケットの下に着ていた白シャツと、スーツの下。靴下に皮のサンダルという出で立ちである。サンダルは鎧の男リフからもらったものだ。靴を履いていない俺を見ると、特に何も聞かずにくれたのだが、あいつってどう考えてもイイ奴だったよな。怖いけど。


 「ノア、なんかすれ違う人から見られてる気がするんだけどさ。俺ってそんなに変?」


 まわりからさらに変な目で見られないように小声で話す。ノアの声は、まわりの人には聞こえないらしい。俺の耳あたりの骨を振動させて声にしているんだと。だから、俺にしか聞こえない。


 「それは雪緒の容姿に特徴があるからでしょう。黒い髪と黒い瞳は、レイスではとても珍しい部類です。」


 「そういうことか。」


 「また、黒は災厄の象徴の色としても有名です。」


 一言多いよね。


 「雪緒。お金を引き出す前に、一つやらなければならなくなりそうです。」


 「ん?なにが…。」


 その時、俺たちの上から何かがぶつかるような大きな音が響いた。見上げると街の障壁に何かが衝突したらしい。


 見上げる人々から悲鳴というか叫び声が上がる。


 「なんだよ。アレ。」


 「古代の遺産、魔導仕掛けの何かです。地中深く眠っていたものが、なにかの拍子にマナを得て動き出すことがあります。多くのマナを求めて動くため、人が集まる場所に出没することも稀にあります。」


 「…人を襲うと?」


 「人というより、マナを多く保有するものに集まります。この場合、街にあるエネルギー源『魔光炉』が目的であると推測されます。」


 魔光炉とは、要はエネルギー施設だ。


 「…それって、街がめちゃくちゃになる?」


 「肯定します。」


 「…人が死ぬ…?」


 「肯定します。間違いなく死人は出るでしょう。」


 …なるほど。この場合、助けないという道はないんだろうな。なんつーか、俺って超人だからな〜…。


 「ノア。俺があいつに勝てる確率は?」


 「マナを展開する場合。勝率は99.89%です。」


 「…100%ではない理由は?」


 「私のデータにない未知の魔導因子を保持している場合や、未知のテクノロジーを組み込んでいる場合、私の予測外の事が起こる場合を想定したことによるものです。」


 「納得した。思いっきり殴れば壊せるかな?」


 「肯定します。」


 「戦うことによるデメリットは?」


 「戦闘後に街の勅令憲兵や軍事機関から、取り調べを受けることになる事です。」


 「そんくらいはしょうがないか…。よし、いくぞ。」


 「了解。」


 ちょうど街の入口に近い商業区にいたので、1割ほどマナを展開してから走りだした。自重しないと人とぶつかっただけで殺してしまいそうだからな。マナを全開にするのは…言うまでもなく、ということだ。


 街は混乱して逃げ出す人が大勢いる。避けるのも面倒になってきたので、空中を移動しながら街の入口を目指す。


 勅令憲兵と思われる団体が街の門を閉めているのだが…どうしよう。すぐ近くに降りた俺を見て、中でも年配の憲兵が声をかけてきた。


 「…もしかして、あんたあの魔導獣とやりあうつもりか?」


 「あ、ああ。あれってほっとくと危ないんだろ。」


 「しかし…軍令憲兵を待ったほうがいい。悪い事は言わん。」


 その瞬間、轟音と共に門が内側にひしゃげる。


 「うぁあぁあああっ!! 隊長!持ちませんっ!!」


 隊長と呼ばれる俺と話していた男は、門を見てからもう一度俺に振り返る。


 「…勝てるのか?」


 「ああ、99.89%な。」


 「? …あ、ああ。では、門を解放するぞ。ヤツが街に入らないように頼む。」


 上から降ろすタイプの門が、憲兵の操作によって上がっていくが、ひしゃげてしまっているのでうまく上がらないようだ。


 下から覗くと、ヤツは助走をつけてこちらに突進しようとしている。このままだと、突破された勢いでケガ人・死人が出そうだ。


 「すまん。非常事態っぽいから。」


 「へ?」


 マナを3割ほど展開してひしゃげた門を持つと、一気に無理矢理押し上げた。門の収納スペースにうまく入らない部分が、まわりを削りながら収まる。


 すごい速度で突っ込んでくるヤツに体を向けて、3割のマナを展開した状態で待ち構える。


 「ノア。このままでも、いけるよな。」


 「肯定します。」


 ここで全開にすると、まわりの人を吹き飛ばしちゃうからね。


 なぜ、俺がこんなに落ち着いているかというと、この街に来るまで結構色々と試して、自分の強さを認識出来たからだ。3000メートルほどの高さから加速して垂直落下するという暴挙の際にも、まったくダメージを受けなかった、という事が大きく影響している。


 それに加えて、ノアの説明では俺にダメージを与えられるのは核兵器並みの衝撃だけだという。


 街に来る前にはじめて魔物に出会った時には、マナのすごさを知らなかったので失態を見せてしまったが、今ならなんでも来いっていう感じである。


 そして、前を向き直すとまっすぐ俺に向かってくる魔導獣の顔がすぐそこに。俺の胴体に噛みつこうと大きく口を開いた。


 近くで見ると、金属っぽい材質のライオンって感じだな。大きさは、立ったら5メートルくらいありそうだ。これに噛まれたら痛いだろうな〜…。


 目の前で見たら、ビビってきた。


 なので、5割ほどにマナを強化して、ヤツの鼻っ柱を思いっきり殴ってやった。


 轟音…顔が潰れて、内容物が飛び出した…。


 猛スピードでぶつかったトラックのように縮んでしまったそいつは、縮んだ分の中身を思いっきりぶち撒けたのだ。血のような液体が、俺の身体中に飛んでいる。惨状。


 え〜…なんだよもぉ〜…。



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