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渇いた夜に  作者: ナッツ外道
第1章
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砲撃

 ベヘルス家から街まで、アンを抱えたまま空を飛んで行こうと思ったが、リフが居ることを思い出して眼下の黒ずくめな鎧の男を見た。


 何だか凄い速度で滑走している…。のだが、気味の悪い嗚咽を漏らしている。


 「う…ぐぅ…これで、これでアン様は…はぐっ…!」


 …弩級のホラーにしか見えん。全身鎧の男が、おっさんを担ぎながら泣いている。


 しかし、街についてからはどうするべきか。このまま、憲兵の居るところまでベヘルスを連れて行ったとして、公爵とただのシーカーの言うこと、どちらを信じるだろう。音声で現場の声を録音しているし、屋敷のデータはノアに記録されている。屋敷の中には、未知の技術「マナ吸収マシーン」もあるだろうが、王宮だからこそ権力者を無碍にするとは思えない。


 そんなことを考えていると、今まで無言だったノアが急に話し出す。


 「…! 雪緒。後方から急速なマナ反応。収束していきます。」


 「え!?…なっ??」


 「間に合いません。」


 急激にブレる視界。身体の自由が利かなくなったと思ったら、反転する俺のすぐ横をとてつもない熱が通り過ぎて行った。


 「緊急回避。一時的に身体を操作しました。」


 ノアが避けてくれたらしいことに、一拍遅れて気がつく。


 「何があった!」


 「不明。後方の何者かによって、高圧縮されたマナを射出されたと推測されます。現状の確認を推奨します。」


 誰かからの攻撃を受けたらしい。


 「アンっ!…は、大丈夫そうだな。」


 目を見開いて、びっくりした~と言うアンを見てとりあえず安堵した。とにかく、このまま空を進むのはマズイのではと思い、森の中に降りる。上空の状況に驚いたリフが駆け寄ってくるが、アンが大丈夫なことを告げると安心したようだ。いつの間にか猿轡で口を塞がれているベヘルス。それを担いでいるリフと、一時森の中に身を隠す。


 「何なのだ、あれは。」


 「わからん。ノア。撃って来た奴からは、ここにいれば見えないよな?」


 「肯定します。敵はベヘルス家の高い位置から狙撃してきたものと思われます。」


 急に声がしたことに驚いた様子でリフは顔をこちらに向けた。と言っても、兜で表情は見えないのだが。


 「ああ。この声は、俺の魔導具だ。」


 「なるほど。」


 それだけで、通じたらしい。言っちゃあ何だが、魔導具はこいつしか知らないので、説明しなきゃいけないとなると面倒だと思っていた。


 「こいつはノアって名だ。索敵なんかが出来る。」


 「喋る魔導具…。名があるのか。」


 「そうだ。呼びづらいからな。しかし、このまま森を進めば大丈夫かな。向こうからは見えないようだし…。」


 甘かったようだ。


 「雪緒。マナ反応を確認。収束していきます。」


 「え!?だって見えないんだろ!?」


 「こちらの場所がわかるようです。第2射来ます。」


 「くっそ!」


 アンを降ろしてから、急いでベヘルス家のほうに身体を向けて盾になるようにする。すぐ後ろにアンとリフが居るので、マナの放出を身体の前面と足にだけ集中する。


 「雪緒っ!!」


 後ろからアンの声が響いた直後、光と熱の塊のようなものが木々をなぎ倒しながら俺に命中。俺に当たったことで、進路をわずかに変える事に成功した。俺のとっさの判断に反応したリフは、アンを守るように地面に覆いかぶさっている。しかし、鎧の背中部分の一部から煙を上げ、兜は転がっていた。


 「ぐ…くっ…。」


 全力のマナを放出したにもかかわらず、顔から下の左半身は、デッカい何かで殴られたような鈍痛を感じていた。足は衝撃で膝くらいまで土に埋まっている。地面の土は俺の目の前までが黒く焦げて煙を上げていた。ああ、くらくらする…。


 「雪緒。ダメージがマナを通っています。未知の高出力砲は、先ほどの間隔からだと次弾の装填まで残り30秒。即時撤退を推奨します。」


 「つ、次もありそうなのか…。」


 肺への衝撃で上手く呼吸が出来ない。


 「肯定します。全員を守りながらの撤退可能率22%。雪緒単身での離脱を推奨します。」


 「な…!?バカ野郎!!1人で逃げるなんてするわけねぇーだろ!!」


 「しかし、水の供給は最短で10キロ。水での回復は不可能です。このままの間隔で撃ち続けられれば、あと約3度の砲撃で雪緒は行動不能になります。威力に変化が無ければ、回避も不可能です。」


 「じゃあ、他の方法を考えろ!! いいか? 2度とアンを置いていくなんて言うな!!!」


 「了解。行動方針を修正します。個ではなく、隊での生存を優先。」


 こういうところで、こいつは感情を持たない存在なのだと再認識させられる。


 「…! アン!! 大丈夫か!?」


 振り返ると、アンが涙目で俺を見ていた。


 「雪緒!! 大丈夫!? どうしよう!?」


 煙を上げている地面はかなりの熱を持っている。アンに大丈夫だと言い聞かせて、こちらに来ないようにリフへ伝える。リフの顔も痛みで歪んでいた。


 とにかく、第3射の警戒だ。向こうにはこちらの位置がわかっている。ピンポイントで来たからには、そう思って間違いないだろう。


 「ノア。すぐに代案!」


 「雪緒単独での撃破。今すぐに目標に全速で突撃して下さい。」


 「よっしゃー!!」


 全力が出せるようにアンから10mくらい離れ、思いっきり飛び上がる。


 「マナ反応を確認。次弾来ます。」


 飛び上がったところに、さっそく3射目が来る。今度は腕をクロスさせて、全力で防いだ。が、さっきに比べてもの凄く軽い。しかし、空中で踏ん張ると足や背中にあった微量なマナが、衝撃をを受けて後方へ弾け飛ぶ。俺が感じるよりは、凄い威力なのだろう。


 「…は?」


 拍子抜けするが、好機だと感じて全速で敵へ突っ込む。すると、ベヘルス家の屋上からこちらを見て焦っているヤツが居る。横には赤く熱を帯びている砲台。


 「テメェーかー!!!」


 速度をそのままに、赤く熱っした砲台へ飛び蹴り。ベヘルス家の屋上と、その下の階半分が爆散した。運良く残りの屋上部分で倒れている男に近寄ると、頭から血を流している男は驚愕の顔で涙を流していた。


 「た、た、助けてくれ…っ!!」


 「俺の耳が悪いのか、お前の頭が悪いのか。」


 「ひ、ヒィ~~~!!!」


 痛かった分をお返しして、そのへんにあったカーテンでどう見ても三下の男を縛り上げる。ベヘルス家には、衛星砲に使われる高出力砲台の劣化版があったらしい。


 普通は衛星軌道上に周回しているマナを使って、レイス自体の自転で加速、収束して射出する。砲身はデグノ鋼と言われるオーバーテクノロジーの物質を使っているらしく、超硬度と熱の放出率に優れる。しかも高純度の冷却マナを自動生成する機構を搭載していて、1つで国家予算が傾く。古代と現代の、技術の結晶みたいなものだ。


 3発目の威力が極端に下がったのは、砲身が熱に耐えられなくてマナが飛散したことが原因らしい。贋物は贋物ということだ。といっても、おいそれと手に入る代物ではないらしい。ていうか、モロ違法だ。


 とにかく…疲れた。

長いこと間が開いてしまいました。

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