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「ひとつ、ふたつ、みっつ」
小さな女の子は、白い、白い、真っ白な雪で作った団子が3つ並べにっこり微笑んだ。
「よーし!」
そう言いながら団子を持って、何かを探すようにキョロキョロ辺りを見ていた。ふと、近くに大きな木を見つけ走って影に隠れ座り込み誰かを待っている。
「この辺かな?あっちかな?そっちかな?」
女の子が隠れているなか、知らない声が聞こえ不思議に思った女の子は、少しだけ顔を覗かして見ることにした。
白い真っ白な服を着た老婆がうろうろとして、立ち止まったかと思ったら積もった雪を堀上、キラキラと輝いている綺麗な玉をバスケットに入れていた。
「わー!綺麗!」
幼い子供にとっては、何をやっていると言うよりもあのキラキラとした物は、なんだろう?と言う事が気になり走って、老婆の近くへと向かった。
「ねぇ、お婆さん。ごきげんよ」
「おや、これは、これは、可愛らしいお嬢さんごきげんよ」
老婆は、にっこりと微笑み女の子を見た。ルーシャは、老婆の近くへ行き答えるように微笑んだ。
「雪が降る中、お嬢さんが一人で雪遊びですか?」
「違うよ。クリスと一緒に遊んでいるし、お嬢さんじゃないわ。わたしは、ルーシャ」
悴んだ手を暖めながらルーシャは、言った。すると老婆は、ルーシャにストールを巻き頭を撫でた。
「寒いでしょうに…少しだけこの老人の家に暖まるかい?」
「でも、クリスが探しているから…」
「クリス様も一緒に…ね?」
知らない人に着いて行ったらダメだと親から言われたが、老婆は、怖い人には、見えない。それにバスケットに入っている物も気になる。ルーシャは、少しだけ考え
「温かいココアある?」
「あるよ。どうするんだい?」
「…………少しだけなら…ココアが飲み終わるまでなら良いよ」
少しだけ。ほんの少しだけならとルーシャは、老婆が差し出す手を握り着いて行くことにした。
歩くこと5分ぐらいたった頃赤い屋根の家が見え老婆は、鍵を取りだし扉の前で立ち止まった。どうやらこの家は、老婆の家らしい。家に入ると暖かい空気に包まれ、着ていたコートと老婆が巻いてくれたストールを脱ぎキョロキョロと辺りを見ていた。
振り子がない壊れた古時計に木で出来た椅子とテーブル、作りかけの手編みのマフラー、可愛らしい人形。
「ルーシャちゃん、そこへお座り」
「はーい!」
ルーシャは、椅子へ座り老婆を見る。白い服に白い髪白い肌。まるで、雪のような人。そして、バスケットに入っている綺麗な玉は、薄い水色と白色が輝いている。
老婆は、温かいココアと美味しそうなクッキーと持ってテーブルに置きにっこり微笑み
「お食べ」
「美味しそう…ありがとう!お婆さん」
ココアを飲み、クッキーを食べた。ナッツの香ばしい味とフルーツの甘い味。ルーシャは、驚いた顔をして老婆みた。
「美味しい!」
「そりゃあ良かった」
クリスにも食べさせたいと思ったルーシャは、少しだけ考え
「お婆さん、好きを少しだけ持って帰っても良い?」
「ええ、良いとも」
ルーシャは、ハンカチを取りだし畳んでいたのを広げテーブルの上に置きクッキーを3、4個並べて包みポケットへと入れた。
やはり気になるあのバスケットに入っているキラキラとしたもの。ルーシャは、勇気を出して聞くことにした。
「お婆さん、あれは何?」
「あれかい?あれは、季節玉と言ってね、 神様からの贈り物なんだよ。これを全部集めて、大きな玉にして、この先にある神殿に持っていって、神様に返してやるんだ」
「神様のからの贈り物?」
お婆さんは、玉を取りだしルーシャに渡した。渡された玉は、ひんやりとして、まるで、雪玉を持っているような感覚だ。
「氷みたいに冷たい…」
「そうだろ?神様は、世界に季節をくれたんだよ。これは、冬の季節玉なんだよ」
季節玉と言う不思議な玉。冬の季節玉があるのなら春、夏、秋もあるのだろと思ったルーシャは、椅子からおり老婆の所へ行き
「一人でこれを集めているの?わたしも手伝う」
「ありがとうでもこれは、決められた人しか出来ない役目でね…特に子供は、出来ないだよ」
「どうして?」
老婆は、ルーシャの胸を指した。ルーシャは、首を傾げ不思議そうに胸を見る。
「この季節玉は、心が綺麗な人しか見えないだよ。今、こうして見えていても大人になれば心も汚れるし、過ちもするかもしれないんだよ」
心が純粋で綺麗な大人になると言う保証は、ない。神殿には、大きなドラゴンがいる。ルーシャは、少しだけ考え
「なら、大人になってまた此処に来ればいいということね」
自分なりの考えをルーシャは、言った事に老婆は、驚いたが直ぐに笑いルーシャの頭を撫でルーシャに綺麗な石が付いたペンダントをつけた。
「ルーシャちゃん、このペンダントを大切にするんだよ。ルーシャちゃんが純粋で綺麗な心を持った大人になったらこの石がお前さんを導いてくれるからね」
「ありがとうお婆さん。大人になったら必ず返しに来るからね」
そう言って手を降りルーシャは、家へ帰るため来た道を辿りながら歩いていた。ふと、遠くから聞こえる自分を呼ぶ声。聞き覚えがある声ににっこり微笑みルーシャは、走って聞こえる方へ向かった。
「ルーシャー!どこにいるんだよぉー!僕の負けだ!だから出てきてくれよー…!もうダメ疲れた…それにもう歩けない…」
ルーシャを読んでいるのは、一人の男の子。男の子は、座り込みため息をはく。それを見たルーシャは、ゆっくり忍び足で男の子の後ろへ立ち思いっきり息を吸って
「こらー!クリス!なにサボってるんだぁー!!」
「うわ!ごめんなさい!お母さま」
クリスと言う男の子は、驚き立ち上がり今でも泣きそうな顔でびくびくしていた。それを見たルーシャは、堪えきれず笑ってしまった。不思議に思ったクリスは、振り向くと探していたルーシャがいるが、母親はいない。
「なんだー…ルーシャか…って!何処に隠れていたんだよ!探したんだぞ!」
「かくれんぼだもの当たり前よ。でもクリスは、降参したからクリスの負けね」
クリスは、力尽き座り込みため息をはいた。ふと、ルーシャから甘い香りがすることに不思議に思った。
「もしかして家に隠れてたんじゃあないか?もー!家は、無しって言っただろ?ルーシャの負けだよ!まーけ!」
「じゃあクッキーがいらないのね。このクッキー驚くほど美味しいからクリスにもあげようと思ったけど、あーげない」
「ごめんごめんごめん!ごめんなさい!冗談だから僕にもクッキーちょうだい!お願い!僕の負けだから、ね?良いでしょ?」
ルーシャは、にっこり微笑みハンカチに包んだクッキーをクリスの手に置き
「ウフフ…よろしい!」
「ありがとうございます。ルーシャ様」
クリスは、ハンカチを開きクッキーをぱくぱく食べ満足そうな顔をする。すると鐘の音が鳴り帰る時間になると言うことを知らした。ルーシャとクリスは、手を繋ぎ家へと帰ることにしました。
次の日にもう一度あの老婆に会おうと家へ向かいましたが二度とたどり着くことは、ありませんでした。