表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海に落ちた。  作者: fyin
8/10

【さようならお星さま】




 きっと、人魚は私を出す気はないんだろう。

初めて話し相手ができて、初めて親しい人間ができて、初めて失おうとした。

きっと、怖いんだろう。失うことが。

得てしまえば、失うことの怖さを知ってしまう。



 そこまで執着してしまうほどの、価値があるような人間ではないのにね。




「星、みたい」



 ぼんやりと点々と光る水晶を見ながら、そうつぶやいていた。

存外耳の良い人魚は、それを拾っていたようだ。



「星、好きなの?」



 ふわりと寄ってきて、そう首をかしげて聞いてきた。




「好きですよ。でももう、見せてはくれないでしょう?」



 わかりきったことを聞くのは、なんとも無駄なことでしょう。

けれど好きだといえば、何かが変わるかもしれないときっとどこかで期待はしていたんだろう。




「だめだよ。だめ。」




 人間さんは弱いから、きっとここから出たら死んでしまうから、だめだよ。

そう言って、確かめるようにそっと私の髪を撫でた。


失うのが怖いから、閉じ込めたの。そうか、そう。



 臆病で弱いのは、あなたの方でしょう?



 もう見れない星空を思い描くように、暗い天井を見上げて目を閉じた。

途方もなくどうしようもない空想に、はっと自嘲した。




「馬っ鹿みたい。」




 さようなら、お星さま・・・なんて、ね。

涙すら流さないよう、嗚咽も一緒にのみ込んだ。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ