【希望は絶望になって消えるのです】
生き残ったことに安堵したらいいのか、よくわからない。
嬉しいはずなのに、とても喜べないのはきっと状況がよくわかっていないせい。
“箱庭”だと言っていた。いったいなんの為に作ったものなのか、誰のために作られたものなのか・・・まぁ考えたところでわからないんだろう。
人魚は、なぜわざわざここに連れてきたのか。
なんで、連れてくる必要があったのだろう。
あの場所に居させたくなかったから?
手の届く範囲に、いてほしかった?
私には考え込むと周りを蔑ろにしてしまう、癖のようなものがあると前に友人に言われた。
オーシャンブルーの美しい尾ひれが視界をかすめる。
気がつけば、人魚がすぐ目の前まで来ていた。
「なにを、そんなに考えてるの?」
「なぜ、私をこんな場所に閉じ込める必要があったのですか?」
閉じ込める。
そう、その表現が正しい。陸が遠かったにしろ、私は人間で、こんな海の底にいるべきではないと人魚だって思うはずだし知っているはずだろう。
「だって、消えちゃうんでしょう?」
「・・・は?」
「消えちゃうのは、嫌だから。ここなら、消えることもないし、人間さんがどこかに行っちゃうこともないでしょ?」
にこりと無垢に微笑んで、そう言った。