【落ちてきた。】
「・・・。」
見渡せば青い海。周りを見れば、ひんやりとしたほの暗い洞窟。
人影一つ見当たらず、この不可解な状況を誰かに聞こうにも聞く人がいない。
私がいたのは、海のど真ん中にある岩山・・・そこにポカリと空いた洞窟の中だった。
その洞窟は人が3・4人入ればいっぱいいっぱいになってしまいそうな、けれど私が寝起きするには十分な奥行と高さがあった。
私はこの場所に誰かに連れ去られた覚えも、ましてや自ら来た覚えもない。
気が付けばこの場所に、ポツリと立っていた。
「・・・どうしようか。」
悪巫山戯にしては度が過ぎている・・・。
途方にくれ吐いた言葉に、返してくれる人は誰もいなかった。
目の前は真っ暗・・・ではなく目を閉じていただけだった。
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
ふと、私の髪がさらりと揺れた・・・風ではなく、誰かが私の髪に触れたようだった。
「・・・!」
ハッと息を飲んで、勢い良く身を起こした。
揺蕩っていた意識もすぐに冴えた。
・・・身を起こして思ったけど、ギャグマンガみたいに額を相手と打ち付けなくてよかったなと思った。
「・・・だれ?」
寝起きのせいか、それとも驚きのせいか、かすれた声しか出なかった。
目の前にいたのは、綺麗なきれいな人魚だった。