八十八呪 招待
自分の事を化け物という謎の女が勝手に消えて、五分後の事だった。
ブルルッ、とマナーモードにしてあった携帯が小刻みに動き出した。仕舞っている場所を見ずに手だけを動かして、取り出す。
画面を見ると非通知設定で表示されている。そのことに多少疑問に思うが、無視して通話ボタンを押す。
「もしもし?」
『初めまして――夜眞棊郁斗』
聞こえてきたのは女性の声だが、聞いたことが無い声だ。
「……誰?」
当然、その言葉を口にする。
電話相手が少しだけ笑うのが聞こえた。
『私は、黒幕兼ゲームマスターです』
何故、今日会う人は自己紹介をしっかりとしないのだろうか?
そんなんで話が通じるわけがなかろうに。
『あらあら……もしかして全く気付いてないのですか? 少し前に炎の魔人を差し向けてあげたじゃないですか?』
「っ!?」
『後、人払いと存在無視……これだけ言えば分かりますよね?』
確かに、炎野郎と戦う前に異変を感じた。しかし、その原因など戦闘中に考えている暇もなかったので、すっかり忘れていたが。
『とりあえず、『LO』の製造者ということでお願いします』
『LO』――それは服用するだけで能力が強化される夢のアイテムだ。ただし、一定時間過ぎると、元々の能力が弱くなるデメリットがある。
「……その製造者が何の用だ?」
『決まってるじゃないですか。ゲームの御誘いです。私はゲームマスターですよ?』
「…………」
ゲーム。
言葉で言うのなら簡単だ。だが、仮にもコイツは――。
『別に構いませんよ、断っても。他の人を招待するだけですから』
そう言い放ってくると、呑気に考え始めた。
『そうですね~。大天使でも吸血王でもいいんですけどね~。そもそも誰でもいいんですけど……あっ、死神は駄目ですね。一秒も掛からず終わせちゃいますからね』
どう頑張っても話に着いていけない。重要ワードが中二過ぎる。
『貴方以外で適任な人は……ああ――雪野聖がいましたね』
「なっ!?」
コイツ今、なんて言いやがった?
『何を驚く必要があるのですか? おかしな人ですね』
「……聖先輩をどうするつもりだ」
『別にまだ、どうするとも言っていませんよ? 早とちりはいけません』
携帯を握る手に力が入る。
聖先輩が巻き込まれると分かっているのに落ち着けるはずがない。
『ですが、『もし』どうにかするのだとしたら――彼女を買って色々しますけどね。ああ、それじゃあだめですね。彼女たちも買って言うこと聞かせないと私の命令を聞いてくれそうにないですからね』
「お前……本気で言ってるのか?」
『えっ? 当然じゃないですか。彼女たちは奴隷ですよ? 人権をはく奪された人間……あれ、それって人と呼べるのでしょうか?』
「…………」
いや、ちょっと待って。
なんで、コイツ――聖先輩たちの立場を知っているんだ?
『あらあら、私としたことが迂闊な発言でしたね。反省しなければ……』
「お前は……一体?」
『さあ……何者でしょうかね?』
さらに力が入る。そのため、携帯が悲鳴を上げるようにミシミシと音を立てる。
「てめぇ……いいかげんにしろよ」
『私はただ、口に出しているだけですが? 貴方こそいいかげん冷静になってお話しません?』
そんなのは無理に決まっている。
『……勘違いしてらっしゃるから言いますけど、雪野聖を招待する前提は貴方――夜眞棊郁斗が参加を断った場合ですよ』
「…………」
『ですから、今度こそ問いましょう――ゲームにご参加しますか?』
俺は女の質問に返答する。決まりきった言葉を。
「当然だ――この野郎」
長らく投稿できず、もうしわけございません。
実は、ネットが急に使えなくなり四苦八苦しておりました。今は何とかなっておりますが、へたするとまた間を開けてしまうかもしれません。




