七十五呪 魔人
「うっ!?」
能力をフルに使ったのか、恐ろしいほどの勢いで立ち上る炎の噴流に思わず顔面を両手で覆い隠す。炎に伴い、この場の温度が一気に上昇するのを感じる。
その状態が暫く続く。
正直、このままで大丈夫なのか心配になってくるほどである。
すると、今まで上空にしか向かっていなかった火柱から炎が周りへと飛び散り始めた。
同時に、男子生徒の雄叫びも聞こえてきた。
「うおおおおおっ!!」
それに呼応するかのように炎の勢いも強くなる。
正直、近づくのすらままならないが、このままだと被害がとんでもないことになる。
「くそっ!!」
俺は今使っている呪いを強くしながら、火柱に向かって行く。そして近づいたところで左手を前に突き出した。
左手が炎に触れ、炎に呪いが広がっていき――消えた。
呪いの方が。
その事態に目を見開いたが、驚いた瞬間に俺は吹っ飛ばされた。
「ごはっ!?」
俺が炎野郎に喰らわせた回し蹴りよりも威力があったんじゃないかと思うぐらいの威力である。現に俺の体はそんじょそこらの攻撃ではあまり効かない。下手をすれば今のはスーツ野郎と同等以上かもしれない。
だが、だれが攻撃を? いや、そんなのは明白だ。
炎野郎だけである。
だけど、あんな威力を出せるのか?
俺のその疑問はすぐに解決した。
立ち上がっていた炎が徐々に弱くなっていき、炎野郎の姿が露わになった。しかし、その姿は先程までの奴とは全く違っていた。
二メートルはありそうな巨漢になっていた。
「……うううっ」
だが、目は赤くなっているし、何より奴の体に纏っているかのように炎が縦横無尽に動き回っている。 もはや、魔人と呼んだ方が合っている。
それでも、いきなりあの姿になったのには理解が出来ない。
自分が言うのも何なのだが……。
そこで俺は奴の口が動いていることに気が付いた。まるで何かを食べているような……。
「……まさか!?」
あいつの姿が変わったのは『LO』のせいではないだろうか? より正確には『LO』によって強化された能力ではないだろうか?
『LO』のデメリットはスキルなどの低下である。別に姿形は変わるとは一言も聞いたことが無い。
俺が聞いていないだけで本当はあるのかもしれないが、もしどうなら聖先輩が教えてくれているはずだ。
つまり、炎野郎があんなになったのは強化された能力が原因。
しかし、それはそれでまた一つ問題がある。
炎野郎の能力は簡単に纏めると――発火能力者だ。無論、発火能力に姿を変える能力などない。精々、炎を身に纏うぐらいだろう。
だが、あれはそんなものではないことぐらい見れば一目瞭然だろう。能力の本質が明らかに違う。
「ゴ……ゴオッ!!」
炎野郎が右腕を振り上げたのを見て、俺は身構えた。
距離はあるものの、何がくるか分からないので用心しておく。
すると、奴は右腕を地面に叩きつけた。
「うおっ!?」
地面が恐ろしい程揺れ始めた。俺はその揺れに足を取られて、片膝をついてしまった。
だが、しょうがないとはいえ、その一瞬の気の緩みがいけなかった。
次に気づいたときは、炎野郎は俺の近くまで近寄ってきており、動けない俺に思い切りにラリアットをかましてきた。
当然、俺は防御など取れるはずもなく、それをもろに食らった。
そしてその一撃は俺の意識を刈り取るのにも相応しい一撃でもあった。




