六十八呪 失念
「紫苑ちゃん、何言ってるの?」
俺は紫苑ちゃんの発言を理解出来なかった。年齢を考えてみれば明らかに紫苑ちゃんは中学生である。
「え? 何かおかしい?」
「そりゃあ……」
充分におかしい話である。と、正直に言いたいが俺はここであることを思い出した。
確か世の中には、飛び級制度というものがあったはずだ。それなら中学生じゃない、という紫苑ちゃんの発言も理解出来る。
「別に飛び級とかしてるわけじゃないからね」
速攻で否定された。
だが、飛び級じゃなければ何なのだろうか?
「確かにお兄ちゃんから見れば、私は年齢的にも中学生に見えると思うよ。だけど――」
そこで話を一旦区切り、紫苑ちゃんは真剣な表情になった。
「私には――、ううん。私『たち』には人権が無いんだよ」
そう、俺は忘れていたのだ。昨日多少話題にも出たのにも関わらずに忘れていたのだ。特殊処理課に所属している人間には人権が無いこと。いや、正確に言えば取り上げられていると言った方がいいのだろうか? そんなことを考えてもしかたの無いことだが、それでも考えてしまう。同情的に何か傷つけない言い方を考えてしまう。それがどんなに相手が傷つくことだとしても。
「ごめん。考えなしに言っちゃって……」
「別にお兄ちゃんのせいじゃないよ? というか、むしろ当然だよ。私を見れば中学生に見えるのはお兄ちゃんにとっての極普通の認識なんだから。それが異常ってなっちゃったら何が普通なのか分からなくなっちゃうし」
「…………」
「だからお兄ちゃんは全く悪くないよ。――以上、小説の受け売りを真面目に使っちゃう紫苑ちゃんのあまり締まらないお話でした!」
紫苑ちゃんは元気よく話を締めた。それがさも当然というかのように。
「ま、適当に言っただけだから気にしないでね」
「いや、でも」
小説の受け売りを言ったのだとしてもそれは俺の心を揺さぶっていた。考えればすぐに出てくるのに、それが全く思いつかなかったこと。それを辛いはずなのに普通に紫苑ちゃんに言わせてしまった事。自分が全く三人の状況を考えていなかったこと。
知っていたのに、分かっていたのに。
「考え過ぎだと思うよ?」
「……紫苑ちゃん」
「小説の受け売りだけど、考えないのもよくないけど考え過ぎもよくないよ? 小説の受け売りが無かったら私が言える台詞じゃないと思うけどね」
笑顔でそう言い、紫苑ちゃんは「小説、小説」と口ずさみながら部屋から出て行った。
対する俺は、少し前と同じ無力感を多少感じながらその場に立ち尽くしていた。必死にどうやって救うか考えていたのに、目先の事すら全く考えてなかった。見えてなかった。気づけてなかった。
「……くそっ」
俺は両手を強く握りしめていた。
全く更新していなくてすいません
理由は、色々ありますが一言で言うと忘れていました。
これからもグダグダになってしまうと思いますがなんとか二章の終わりまではしっかりと書きます。




