六十六呪 情報とキーワード
「……ところで、お前さ、ヒント探しはどうなったんだ?」
話がずれてしまったが、本来の目的は芽富良は能力についてのヒント探し、俺が暇つぶしのため、学校を抜け出してきたのである。
俺の横の方をチラリ、と見ると芽富良が買った物が席の半分を占めていた。コイツ、もしかして最初からヒント探す気ではなく、遊びに行くためだったんじゃないかと思うほどに。
「ヒント? 何の事やら?」
「何の事やら、じゃねぇよ! 自分の能力を鍛えるためのヒントを探すつもりで来たんだろうが!」
まさか、本当にヒント探しは口実だ。とかなんとか、言いそうである。
「そんな怒らなくても大丈夫だって、しっかりと楽しみながらヒント探ししてたから」
芽富良は軽く笑いながら、そんな事を言った。
……楽しみながら、というワードが気になるが。
「とりあえず――検索できるようにがんばろっかな~って思うんだ」
「検索?」
検索と言えば、知りたい情報を探すというような意味である。何か閃いたならならそれはそれでいいが、何故検索などと思いついたのだろうか?
「うん。検索って、用は……さ、便利じゃん。知らない事を知るためにさ」
芽富良の言う事は尤もである。世の中、知らない事があればパソコンや携帯があればすぐに調べることが出来、すぐに知ることができる。逆に、検索が出来なければそれはそれで、かなり困る。
「けど、お前の能力って似たようなもんじゃないのか?」
芽富良の能力――『相手の能力を知る能力』も検索と似たようなものだと俺は思う。相手の能力を知ることが出来るなら、もしもの場合対処の方法を組み立てることが可能である。
「そうかな? 確かに似てるかもしれないけど、私は全くの別物って考えてるよ」
「別物?」
「例えばだけど、夜眞棊はもし知らないことを調べようとした時に、知りたいことが曖昧だったらどうする?」
「そりゃ、曖昧の部分を調べて自分が知りたいことを探すしかないだろ?」
「そうだよね、それが当たり前だよね。言い換えれば、何か一つでも分かっていれば答えにありつける事が出来るって事だよね」
「……まあ、確かに」
「けどね、私の能力はそんな便利な機能じゃないんだよ」
「……」
「私の『能力を知る能力』は、知りたい相手の正確な情報を知らないと使えない。名前、生年月日、出身、学歴、等とかの事を知らないと全く使えない。……と言っても、能力自体が使えないことの『全く』じゃないけどね」
俺は芽富良の能力を深く考えていなかったのかもしれない。
能力に制限やデメリットがあることはよくあることだ。実際に俺の能力もデメリットを抱えている。聖先輩も今は大丈夫だが、昔は自分の能力を制御できなくて昔の記憶を失っていると言っていたように。
「……能力自体が使えない事じゃないって、どういう意味だよ?」
言っている意味は分かるのだが、どうも理解が出来ない。話を聞く限りでは芽富良の能力は、能力を知りたい相手の情報を知っていることが能力を使う上での前提条件のはずだ。前提条件を満たさなくても能力が使えるなら、相手の情報を知らなくてもいいのではないだろうか。
「ん~、そこは普通のパソコンとか携帯の検索を思い浮かべてもらうと分かりやすいかな。今、携帯持ってる?」
「ああ、あるぞ」
芽富良にそう聞かれた、俺はポケットから携帯を取り出した。
「じゃあ、『能力』って検索してもらっていい?」
俺は芽富良に言われたとおりに、『能力』と打ち込んで検索のボタンを押した。すると、『能力』という言葉だけで、恐ろしい数の関連する記事が出てきた。
「次に、後ろに『火』って入力してみて」
同じように『能力』、『火』、と打ち込んで検索をすると、また凄い数の件数だが、明らかに数が減っている。
「最後に、何でもいいから後ろに付けてみて」
芽富良がそう言うので、適当に言葉を付け足してみた。すると、最初に調べたのとは数が明らかに違っていた。当然と言えば当然である。
「今やった行動を考えてもらえば分かると思うけど、キーワードがあればあるほど、正確なことが分かるように、私の能力も相手の情報を知っていれば知っているほど、能力の詳細が分かる仕組みなんだよ」
「だったら、相手の事を知らない場合はどうなるんだ?」
「当然分からないよ。だってキーワードが無いから検索しても出ないし」
「パソコンや携帯とほぼ、同じって事か」
「用は、相手の情報を知らないと意味が無いから、その逆の能力だけ分かれば相手の事を検索できるようにしたいって事」
芽富良は簡潔に、自分が検索と言った理由を話してくれた。
「正直、他にも色々あるけどきりが無くなっちゃうから、説明はここまでにしとく」
「ん、了解」
他にも色々知りたいとも思ったが、芽富良本人からしたら面倒なものかもしれない。こちらとしては、真面目にやってくれていただけでも感謝しよう。




