三十一呪 どうでもいい
暫く、予定がありすぎて投稿することが出来ませんでした。楽しみに待っていて下さった方は大変申し訳ありません。
誠に勝手ながら、三十一話目を変えさせていただきました。
これからも出来れば毎日投稿出来る様に頑張っていきますが、出来ない場合は何かしらの方法でお伝えいたします。
何故、自分はこんなに必死になっているのだろう。
聖は、走りながらそんな事を考えていた。
今まで、自分が達成してきた任務も必死だった。バイオテロを防いだり、占領された電車を取り戻したり、世界最強の殺し屋と戦ったりした。
どれもが、一瞬でも気を抜いたら死ぬような過酷な任務だった。現に、一度だけ、本当に何も出来ずに殺されそうになった時があった。(何故か、殺されなかったのだが)
だけど、どれもが自分の為だった。自分が死んだら何もかもが終わってしまう。だから、必死だった。
ただ、『目的』のためだけに。
「・・・・・・」
なら何故、自分は郁斗の為に必死なのだろう。
確かに、自分の信念では一般人である郁斗を巻き込んでは『目的』を達成するなんて出来ない。それだから、郁斗に対して必死と思えばそれで終わりだ。
「・・・・・・」
だけど、そんな簡単な事ではない。明らかに『目的』の為、一般人のためではなく、夜眞棊郁斗という一人の人間として自分が必死になっているのが分かる。
そう。夜眞棊郁斗に対して明らかに特別な感情を抱いているのが分かる。
「・・・・・・今は、どうでもいい」
今、自分がやらないといけないことは郁斗を危険から守ることだ。だから、今はどうでもいい。
「・・・・・・どうでもいい」
聖は自分に言い聞かせるように呟いた。
暫く走ると聖は、郁斗の家の玄関前にたどり着いた。
何処にでもあるような二階建ての家。
郁斗が家の方に走って行ったとしても、家に帰ったのかまでは分からない。家に居てくれればそれでいいが、いなかった場合は正直言って、面倒である。
「・・・・・・それでも」
それでも、自分は郁斗を守らなければならない。
そう、聖は思いながら玄関の扉を開けた。