三十呪 行き着く先
どれぐらい叫び続けたのだろう。
少しだけだったのか、長かったのか分からない。
だが、喉がはち切れる程に叫んだので、喉が痛い。
それ程叫んだ。
それ程までに叫んだ。
――化け物
なのに、消えない。
――化け物
頭の中に響き渡る。
――化け物、化け物
「・・・・・・うるせぇよ」
――化け物、化け物、化け物
「・・・・・・黙れよ」
――化け物、化け物、化け物、化け物、化け物、化け物
「うるせぇよ!! 黙れよ!! 消えろよ!!」
―― 化け物、化け物、化け物、化け物、化け物、化け物 化け物、化け物、化け物、化け物、化け物、化け物
「黙れぇぇぇぇぇ!!」
◆ ◆ ◆ ◆
「・・・・・・郁斗?」
何処からか郁斗らしき叫び声が聞こえ、聖は動かしていた足を止めた。
《ブラッド・ナイフ》と戦った後、聖は色んな所を走りまわり、郁斗を捜していた。
「・・・・・・まさか!?」
叫び声がした方角へ、聖は、止めていた足を再び動かした。
暫く走ると、聖は公園に辿り着いた。
「・・・・・・公園?」
公園にある遊具は普通の遊具である。しかし、聖が見たのは、とても遊具とは言えなかった。
「・・・・・・」
ここで、何が在ったのかは一目瞭然だ。
しかし、誰が、というまでは、流石に聖でも分からない。
「・・・・・・郁斗」
だが、場合が場合だ。誰がなんて簡単に予想がついてしまう。
「郁――」
「彼なら、もう此処には居ないよ。・・・・・・お嬢さん」
聖が郁斗の名前を呼ぼうとした時に、男の声が聞こえたため、聖はその声がした方を向くと、高級なスーツを着た男がいた。
「・・・・・・誰?」
聖はスーツの男に銃を向ける。
「誰か知りたいなら、銃を向けないでくれよ」
「無理」
「酷いなぁ・・・・・・まあ、いいか」
スーツの男は銃口を向けられているにも関わらず、聖に向かって歩いてくる。
「・・・・・・よく歩けるわね」
「弾が入ってない銃を向けられても、何も牽制にもならないよ?」
「・・・・・・」
「何で、そんな事を知ってるのか? って顔をしてるね・・・・・・」
聖が今スーツの男に向けている銃は先程の《ブラッド・ナイフ》との戦いで既に使い切っている。その事を知っているのは、銃を持っている聖本人だけである。
「僕は、普通にお嬢さんの戦いを遠くから見てただけだよ」
「そう」
「・・・・・・驚かないんだね」
「驚く要素があるのかしら?」
「普通だったら、驚くよ?」
「私は、普通じゃない」
「・・・・・・」
スーツの男はそこで、足を止めて暫く黙るが、少しすると、また口を開いた。
「だよね・・・・・・お嬢さんは普通じゃない」
「・・・・・・」
「普通だったら、銃なんか構えてるはずがないよね」
「・・・・・・」
「何故か知らなかったけどさ、依頼人がさ、お嬢さんの情報をくれたんだ」
「・・・・・・」
「お嬢さんの情報を知って、驚いたよ・・・・・・」
「・・・・・・」
「お嬢さん程に、自分を犠牲にする人間に会ったのは、初めてだよ」
「・・・・・・」
「お嬢さんだって分かっているだろ? 自分の行き着く先を!!」
「だから・・・・・・何?」
聖は今まで、閉ざしていた口を開いた。
「自分を犠牲? 自分の行き着く先? そんなのは普通に分かる」
「・・・・・・」
「分かるからって、変えるつもりは無い。どんなになっても、私は『目的』を果たす」
「・・・・・・」
スーツの男は聖の言葉を黙って聞いていた。
「・・・・・・そういう事か」
スーツの男は、一人納得するように呟いた。
「そう言えば、彼ならあっちに行ったよ」
スーツの男は右の方角を指した。
「・・・・・・そう、ありがとう」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・行かないのかい?」
「貴方は行かせてくれるの?」
「もちろん。お嬢さんとは戦うつもりは無いよ」
「・・・・・・」
「警戒しなくていいよ。僕は帰るから」
スーツの男はそう言うと、踵を返して、何処かに行ってしまった。
「・・・・・・」
聖は暫く、その場を動かなかった。
スーツの男が油断させて自分を攻撃するかもしれないからである。
暫く見て、何も無いと分かると聖は一目散にスーツの男が指した方角――郁斗の家の方角へと、走り始めた。




