三呪 変わらないとは何か?
キーンコーンカーンコーン
何処の学校でも、変わらないチャイムが鳴った。
「では、今日はここまで」
「起立、礼」
「「ありがとうございました」」
教師が言うと、クラスの委員長がお馴染みの号令をして、他の生徒もお約束のように言う。
変わることが無い、繰り返される光景。それは小学生の時から変わらない事だった。
変わらない
という言葉は良い意味にも悪い意味にも使われる。簡単に言ってしまえば表裏一体だ。
例えば、「あいつは、やっぱり変わらない」という言葉の場合を考えてみる。 何が変わらないか分からないが、性格という事にしておこう。性格が良いなら良い意味だが、性格が悪いなら悪い意味で使われる。
だけど、人は変わらなければならない。それは当然かもしれない。
人は前に進むのだから。進まなければならないのだから。
それでも俺は進もうが変わらない。
もし、俺が小説の主人公みたいな能力を持っていたらこんな事は思わなかったのかもしれない。
「……」
たが、俺の能力は、主人公のような能力では無かった。いや、それどころか、他人とは全く違う系統の能力だった。
「変わらない」と同じ、表裏一体の能力だと思っていた。人を幸せにする事が出来れば、不幸にもする事が出来る。他の能力にも人を幸せに出来たり、不幸にさせたりする能力は、山ほどあるが俺の能力は、能力=表裏一体で簡単に表せられるほど、そんな簡単な能力ではなかった。
そして、気付いた時には遅かった。
その時、否、能力を初めて使った時から
俺は変わってしまったのだから。
「はぁ」
「何、溜息付いてんだよ?」
横を向いて見ると、二、三人の男子のクラスメイトが近くにいた。顔を見る限り、どうやら心配してくれたようだ。
「いや、何でもない」
俺は男子のクラスメイトにそう言った。クラスメイト達も納得してくれたようだった。
「てか、何か用か?」
「次の授業、闘戯場だろ?一緒に行こうぜ」
「あー」
と、俺が言葉を濁すよう長く言うとクラスメイト達は、しまった、というような表情になった。
「悪い……悪気は無かったんだが」
「気にして無いから、心配すんな」
「……悪い」
クラスメイト達はそれだけ言うと、俺の席を離れ、そそくさと教室を出て行った。
そして最終的に教室には俺、一人だけになってしまった。
「やっぱり、変わらないな」
俺は、呟いた。
ある授業の時だけ、俺は一人である。
そう、俺が得失者だから