表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偽りの得失と喰らう銃弾  作者: 勧められた男
一章 終わる偽りの日
27/96

二十七呪 理不尽な世の中


 「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」


 高校生だから、多少は体力があるものの、全力で走れば息が切れる。


 安全な場所に避難して。


 聖先輩がそう言って、俺が真っ先に向かった場所は公園だった。滑り台や砂場、ジャングルジム、ブランコなど、何処の公園にでも存在する物しかない公園だ。


 何故、真っ先に公園に向かったのだろうか。

 安全な場所と言えば、公園以上に安全な場所なんて数多くある。

 それなのに何故、俺は公園に来たのだろうか。

 

 「・・・・・・・・・・・・」


 公園なんて俺にとっては、つらい場所でしかないのに。

 

 「・・・・・・」


 俺は、自分の左手を見た。

 包帯に巻かれた左手。自分が分からなくなった全ての原因。

 

 「・・・・・・そういう事か」

 

 俺は何故、自分が公園に来たのか分かった。

 左手が俺の全てが分からなくなった原因なら、公園は俺の全てが分からなくなった場所だからだ。

 つまり、俺という存在が最後に分かった場所だからだ。

 唯一、自分自身が最後に分かり、そして――終わった。

 

 「ここで、俺は――」


 「死ぬんだよ」


 俺が言おうとしている最中に声が聞こえたと思うと次の瞬間には、吹っ飛ばされていた。

 突然の事に、受身すら取れず地面を何回もバウンドしていき、ジャングルジムに当たり、ようやく止まった。


 「痛って・・・・・・」


 突然吹っ飛ばされて、受身も取れなかったが幸いというべきか俺の身体は異常なため、なんとか立ち上がることが出来た。立ち上がり、俺が居た場所を見ると一人の男がいた。

 男は、多少しっかりとした体格に高級なスーツを着た、いかにもエリートと言った風貌の男だった。


 「おっかしいな? 何時もなら確実に殺せるのに」


 男は、手首を回しながら俺を見て、そう言った。

 

 「まあいいか・・・・・・次で終わらせれば」


 男は今度は首を回しながら俺の方に近寄ってくる。

 何時もなら、直ぐにでも逃げ出すのだが今回は違った。

 この男に見覚えがあったからだ。

 『LO』の取引現場に居た高級なスーツを着た一人だ。


 「お前・・・・・・」


 「へぇ・・・・・・やっぱり見覚えあるんだ、僕のこと?」


 男が、やはりそうか、という感じの表情になる。


 「そうだね・・・・・・一様、名乗っておくよ」


 男は、そう言うと立ち止まった。


 「僕は、君を殺しに来たんだよ・・・・・・夜眞棊郁斗君」


 「何で、俺の名前を!?」


 見覚えがあると言っても、俺が曲がり角から見ただけであり、相手からは見られていないはずだ。ハンマー野郎には見られたが、聖先輩の話では捕まったため、俺が見たという事を知っているのは聖先輩だけだ。

 それなのに、何でこの男は俺の事を知っているのか。

 俺がそう考えていると男はそれに答えるかのように言ってきた。


 「簡単だよ。君が倒した男がサングラス付けてただろ? あのサングラスは監視カメラのサングラス版だよ」


 「監視カメラ?」


 「そう。サングラスで見たものを通じて、サーバーでリアルタイムで見る事が出来るんだよ」

   

 「・・・・・・」


 「いやーでも大変だったんだよ? 君の姿は分かるのに情報が何故か出てこないんだもの。焦ったよ、本当に」


 「・・・・・・」


 「話しはここまでにしようか」


 男はそう言うと、腰を少し屈めた。


 「何であれ、君を殺せばそれでいいからさ。じっとしててくれよ」


 「・・・・・・待てよ」


 俺は男に話しかけた。すると、男は屈めていた腰を上げた。


 「なんだい?」


 「どうして俺が殺されなきゃいけないんだ?」


 「・・・・・・君が取引現場を見たからだよ」


 男が淡々にそう言った。


 「そんだけかよ・・・・・・」


 訳が分からなかった。

 取引現場を見ただけで、殺される。たったそれだけだ。それだけで殺されるって何だよ。受け入れられる訳がない。


 「受け入れられないかい?」


 「当たり前だろ!!」


 俺は目の前の男を睨んだ。


 「見ただけなのに殺されてたまるか!!」


 「まあ、それもそうだ」


 「・・・・・・は?」


 男は俺の訴えに何故か、同情した。


 「君が自分勝手な人間だというのは、この際、目を瞑ろう。そう考えると世の中は、理不尽だよ」


 「・・・・・・」


 「平等じゃない、理不尽だよ本当に」


 「・・・・・・」


 「だけど、僕達は理不尽な世の中を生きているんだよ? 受け入れて生きているんだよ? それが人ではないのかい? 夜眞棊郁斗君」


 「・・・・・・」


 「受け入れられないのなら、受け入れさせてあげるよ」


 男は再び、腰を屈めた。


 「死ぬことを・・・・・・もう一度ね。・・・・・・夜眞棊郁斗君」  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ