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偽りの得失と喰らう銃弾  作者: 勧められた男
一章 終わる偽りの日
19/96

十九呪 モブと謎

 「適当とはいえ、なかなか美味しかったわ」


 「ありがとうございます」


 超高速で作った朝食を食べ終わった俺と聖先輩は家を出て、学校に向かうべく商店街を歩いていた。


 「・・・・・・さっきから周りの視線を凄く感じるのだけど」


 「気にしない方がいいですよ」


 「・・・・・・そうね」


 聖先輩が視線を感じるのは先程から男が聖先輩とすれ違うたびに見ているからなのだが。

 やはり聖先輩は視線が気になる様で、右手を左袖に入れ、

 

 「・・・・・・銃で撃って良いかしら?」


 「余計に視線が集まりますよ」


 と、俺が言うと渋々左袖から右手を抜いた。


 「なら能力で」


 「駄目ですよ・・・・・・って能力ですか?」


 確か聖先輩は昨日俺と同類と言っていたはずなのだが。冗談だろうか?


 (まあ、別にいいか)


 追求した所であまり意味が無いので、追求するのを止めた。


 「・・・・・・聞かないのね」


 聖先輩が少し意外だという様な表情でこちらを見た。


 「聞いていい事と悪いことがありますから」


 「私が本当は能力を持っているとしても?」


 「はい」


 「私が貴方を変態と思っていても?」


 「それは・・・・・・」


 「私が人を何人も殺してるとしても?」


 「!?」


 俺は思わず立ち止まってしまった。人殺し? 何人も? 聖先輩は何を言っているのだろうか。聖先輩が能力庁の人間でもそれは有り得ない。


 能力庁は能力に関係がある事なら全てに関連する行政機関である。犯罪者の取り締まりや能力の調査など様々な仕事がある。特に犯罪者に一番力を入れており、第一信条は能力には能力で対抗する、やられる前にやるなどの徹底的に犯罪者を取り締まるものである。しかし、そんな国のトップで第一信条がそれだとしても人を殺していい訳ではない。

 俺が立ち止まって考えていると、


 「・・・・・・嘘よ」


 聖先輩がそう言った。


 「・・・・・・嘘つかないで下さいよ。驚くじゃないですか」


 俺は聖先輩が嘘だと言ったのでホッとした。

 

 「・・・・・・当たり前でしょ」


 聖先輩がジト目で俺を見てくる。


 「・・・・・・ですよね」


 「だけど――」


 聖先輩は冷たいけどハッキリした芯のある声で言う。



 「『目的』の為なら、私は人を殺すわ・・・・・・誰であろうと」






 「「夜眞棊ぃぃぃぃぃ!!」」


 「のわっ!?」


 聖先輩と商店街を抜けて、学校に着いた俺に待っていたのは負のオーラを纏った男子生徒の集団であった。誰もが如何にも俺に百パーセントの殺意を放っている。


 「何だよ、お前ら?」


 俺が言うと、男子集団の中から一人の男子生徒が出てくる。

 その男子生徒は手にメガホンを持っており、それで叫んできた。


 「我々は――」


 「唯の名前さえ出ないモブキャラ軍団だ。ほっとけ、夜眞棊よ」


 メガホンを持った男子の言葉を遮るように横から声が聞こえたので見ると、肩から小さな機械吊るして、ヘッドセットを付けている形宮がいた。


 「おはよう、夜眞棊よ」


 「ああ。何だその機械?」


 「知らないのか? ギガホンだ」


 「ギガホン?」


 「簡単に言ってしまえば、メガホンより小型で持ち運びに困らない代物だ」


 「そんなのあるのか?」


 「あるのだよ、夜眞棊よ」


 形宮はそう言うと、視線を俺から隣にいる聖先輩に移した。


 「貴女は昨日転入して来た雪野聖さん、で間違いありませんか?」


 「ええ、そうよ」


 聖先輩が言うと、形宮は胸ポケットからカードを取り出した。


 「自分は古賀村高校、情報部部長、形宮礼司です。以後お見知りおきを」


 カード――名詞を聖先輩に渡した。

 聖先輩は形宮から貰った名詞を暫く見ていた。


 「・・・・・・情報部?」


 「はい。情報料さえ払えば何でも情報を提供しますよ」


 「何でも?」


 「そうです。気になる人のメールアドレスからテストの出題範囲、国家機密の情報までなら何でも教えますよ」


 「・・・・・・便利ね」


 「早い、正確、信頼がモットーですから」


 形宮は早くも聖先輩を客にしようとしていた。

  

 「「貴様ら、俺らを忘れてんな!!」」


 と、先程何か言おうとしたら形宮に遮られた男子生徒の集団が叫んでいた。

 

 「元々知らないから、忘れる事すらないんだが」


 俺が言うと男子生徒の集団の負のオーラが更に高まった。


 「「黙れ!! このハイスペック野郎がっ!!」」


 「褒められてるわよ、郁斗」


 「何処が――」


 「「郁斗おおおおおおっ!?」」


 今度は俺の言葉を遮って男子生徒の集団が言う。


 「「許さん・・・許さんぞっ!!貴様っ!!」


 男子生徒の集団の負のオーラがどんどん濃くなっていく。


 「ちょ、聖先輩何言ってんですか?」


 「何って郁斗って言っただけよ。い・く・と」


 「「ブチッ!!」」


 俺の耳に間違いなければ今確かに、ブチって声がしたと思うのだが。と、思っていた所で、男子生徒の集団のメガホンを持っている奴が声を出す。


 「全員――」


 ここで大きく息を吸って


 「突げ――」


 「五月蝿い」


 形宮が内ポケットから良く分からないスイッチを取り出し、言い終わらない内に押した。


 すると、男子生徒の集団の所が爆発した。

 爆発はかなりの威力であり爆風が思いっきり吹きあれ、踏ん張らなければ飛ぶ程である。


 「やりすぎだろ!!」


 と、言いながら俺は聖先輩が吹き飛ばないように前に立ち、防ぐ。

 暫くして爆風が止むと、爆発した所にいた奴らの姿が見えてくる。能力で防いだのか、全員軽く制服が汚れているだけで怪我はしてないようだった。


 「大丈夫だ。加減はしてある」


 「爆発に加減も何もないだろ」


 形宮の発言に俺が突っ込むと形宮は、


 「確かにな」


 と言って、高笑いしながら校舎に向かっていった。

 そこで、いつの間にか隣に聖先輩が来ていた。

 

 「ねぇ、郁斗」


 「何ですか?」


 「形宮君は、何者なの?」


 形宮とは良くつるんでいるのだが、俺が形宮について知っていることとすればあまり無い。俺の心を読む、自称無能力者、神出鬼没。


 「・・・・・・自称、無能力者の謎の高校生です」


 と、しか言えなかった。

誤字・脱字がありましたらご報告してくれると有り難いです。

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