十八呪 美少女か平穏か
今回もあまりタイトルが合っていません。
聖先輩が全て事情を話すと言うので、こんな所で話すのも、どうかと思うので俺は聖先輩をダイニングに誘導した。(いきなり痛みが嘘のように消えたので)
「・・・・・・まずは私の正体から話すわ」
「正体?」
俺は耳を疑った。正体を話すと言われても自分と変わらない高校生では無いのか、と思うのだが。
「私は能力庁の人間よ」
「マジ・・・・・・ですか?」
いきなり、実質的な国のトップである能力庁の人間と言われてもあまりしっくりこない。
「・・・・・・信じるも信じないも貴方次第よ。だけど、これだけは言うわ」
聖先輩は俺の目を見て言う。
「私は貴方に嘘を言うつもりは無いわ」
相変わらず冷たい声だったが無機質では無かった。たったそれだけなのに俺は聖先輩を信じようという思いしか無かった。
「俺は、信じます」
「・・・・・・そう」
聖先輩は素っ気なく言うと続けて言った。
「私は、ある組織の手掛かりを掴む為に古賀村高校に転入した・・・・・・いや、潜入したと言った方がいいわね」
「潜入?」
潜入捜査とは犯罪組織に潜入して内側から暴くようなイメージだが、実際には多くのストレスを抱えてしまい、犯罪に手を出すケースもあるほどの危険な行為である。
「何でですか?」
「・・・・・・何がかしら?」
「何で、古賀村高校に潜入したんですか?」
潜入捜査したという事は分かったが何で古賀村高校に潜入したのか、俺には分からなかった。
聖先輩は直ぐに口を開いた。
「・・・・・・一昨日私は、ある廃ビルで紙を見つけた」
「・・・・・・」
「その紙には、ある組織と取引をするという事と、もう一つある事が書かれてあった」
「何ですか、その・・・・・・ある事って・・・・・・」
「・・・・・・取引した物を古賀村高校の生徒に売るという事」
「!?」
俺はあまりに驚愕すぎて言葉が出なかった。だから、つい聞き返してしまう。
「本当ですか?」
「本当よ」
「・・・・・・」
「ある組織と取引しようとした奴らは、私が全員捕まえたから、古賀村高校の生徒に被害は出ないはずだった」
「・・・・・・だった?」
「・・・・・・ええ」
聖先輩はそこで少しだけ目を伏せた。
「紙の通りに私は昨日、肝心のある組織と取引する現場に行って、ある組織を捕らえようとした」
「・・・・・・」
「けれど、肝心の取引は既に終わっていて、居たのは囮である下っ端達だった」
「・・・・・・」
「こうなった以上は仕方ないから、古賀村高校の生徒として奴らに接触するしかない・・・・・・納得したかしら?」
「はい・・・・・・」
俺は力無く返事する事しか出来なかった。
「・・・・・・だから、私を居候させなさい」
「すいません。展開が急過ぎます」
何故、居候の話に行くのか分からなかった。
「・・・・・・私は、一様ホテルを借りている」
「・・・・・・なら、ホテルでいいんじゃないですか?」
普通にこんな家(自分の家をこんなと言うのもどうかと思うが)よりホテルの方が快適では無いのだろうか?
「それは嫌」
「・・・・・・何でですか?」
「あの能力庁人望ランキング最下位の、阿呆上官と同じ空気を吸いたくないし半径十キロメートルに居てほしくない」
(・・・・・・上官、本当に人望ねえな)
聖先輩の言葉を聞いて本当にそう思ってしまう。すると、聖先輩が俺が思っている事が分かったのかこんな事を言ってきた。
「・・・・・・あいつに同情しない方が良いわ」
「・・・・・・はあ」
「小さい女の子に銃を持たせて、「人を殺してこい」と平気で言う屑よ」
「・・・・・・」
「だから、居候させなさい・・・・・・いえ、するわ」
「最早、決定事項ですか・・・・・・」
口ではこんな事を言うが内心では、凄く受け入れられなかった。そしてまたしても聖先輩は俺の考えている事が分かったようだった。
「貴方の考えている事は何もおかしい事では無いわ。むしろ当然よ」
「・・・・・・」
「こんな事を直ぐに受け入れられる人なんて、ろくな人間じゃないわ」
「・・・・・・」
「だから、心配しなくていいわ。当たり前なんだから」
「聖先輩・・・・・・」
「それで私はどの部屋を使えば良いのかしら?」
「・・・・・・」
聖先輩はどうやら、俺が受け入れようが無かろうが本当に居候する気らしい。
(・・・・・・居候?)
居候という事は聖先輩は暫くこの家に寝泊まりするという事である。そして家には俺しか居ない。つまり――二人きり。
(・・・・・・)
そう考えると急に実感が持てる気がする。
いや、待て。落ち着け、俺!! 最近色々あったのにここで美少女と一つ屋根の下で過ごす事になったら俺の変わらない日常は何処へ行く!?
(どうする、俺?)
今までの平穏を守り通すか平穏を捨て美少女と一つ屋根の下で過ごすか。
本音を言うとやはり美少女と過ごしたい。だって聖先輩凄くタイプ・・・・・・と今はどうでもいい。しかし、能力を使わないと決めてから俺は変わらない事を決めた。
自分が変わらない様にするには他の事も変わらない様にしないといけない。それ程、徹底的にしなければいけなかった。
そうしなければ――
「・・・・・・ねえ」
俺が考えていると聖先輩が声を掛けてきた。
「家事は交代? それとも分担する?」
「・・・・・・」
「それとも居候させてもらうんだから、私が全部やった方がいいのかしら?」
「分担しましょう」
あんな事があって今更変わらない日常を送ることが出来るのか――無理だ。
失ったものは失ったままの様に、変わったものも変わったままなのだ。
なら、今を変わらない様にすればいい。そうするしかない。
これ以上、自分を変わらせない為に。
「なら、そうしましょう・・・・・・所で、どうするの?」
「何がですか?」
「朝ご飯」
聖先輩がそう言うのでダイニングにある時計を見てみた。
午前七時、ジャスト。
「やばっ!?」
俺は直ぐに冷蔵庫のドアを開けて中を確認する。食材は在るには在るが、スーパーに行ってないので、数は少ない。
(やはり早さの卵か・・・・・・いや、米炊いてないから、卵だけあっても意味がない。早炊きしてもいいがそうしたらほぼ確実に遅刻する可能性が高い。そういえばレンジで温めるご飯があったはず・・・・・・賞味期限は覚えてないが大丈夫なはずだ・・・・・・後は)
俺が頭の中で計算していて、食材を取り出すと、肩越しに聖先輩が声を掛けてきた。
「私も手伝った方がいい?」
「聖先輩、料理作れるんですか?」
「作れるわ。でも・・・・・・」
「でも?」
俺は何か嫌な予感がした。
「同僚に何時も作ってるけど、食べさせるたびに訳分からない事を言わせる程の実力だけどいい?」
「・・・・・・」
俺は聖先輩の申し出を丁重に断り、何時もとは比べものにならない早さで朝食を作ったのだった。
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バトルシーンは、もう少し待ってください。