十七呪 モーニングショット
気付いたら目の前に天井が見えた。
「・・・・・・」
これが知らない天井だったら一瞬で頭が覚醒すると思うが生憎と見慣れた天井――俺の部屋の天井であるためそういう事は無いが窓から光が入っているので、朝という事は分かった。
「・・・・・・」
何か夢を見たような気がするけど、内容は覚えていない。そのまま天井を暫く茫然と眺めていると次第に頭がハッキリとしてきた。
「そういえば昨日・・・・・・」
俺は昨日の事を思いだした。依頼で裏通りに行き、怪しい取引現場を見て、逃げて、ハンマー野郎と戦って、
「・・・・・・」
ハンマー野郎と戦った所までは覚えているが、その後の事が思い出せない。
だが、思い出せなくても今の状況で分かる。
自分の部屋の天井が見えるという事は俺は身体を仰向けにしている。自分の部屋で仰向けにしているという事は俺はベッドに寝ているという事だ。
つまり、しっかりと家に帰ったという事だ。
「・・・・・・帰ったのか?」
昨日もそうだが一昨日も自分がどうやって家に帰ったか覚えていないので、自分の部屋のベッドで寝ていても、違和感がある。
「・・・・・・悩んでも仕方ないか」
悩んだ所で思い出せないので、悩むのを止めて俺はベッドから出ようと身体を起こそうとした。
「いっ・・・・・・ぐあっ!?」
少し身体を起き上がらせたら、身体中がいきなり痛みだした。
今、思いだしたが昨日、ハンマー野郎に身体を叩かれまくったのを思い出した。いくら俺の身体が異常でもあんなに叩かれたのだ無理もない。
それでも、起き上がらないといけない。俺はもう一度身体を起き上がらせようとした。
「無理しない方がいいわ」
「えっ?」
所で声がしたので俺は驚いてしまい、また起き上がれなかった。
「・・・・・・だから言ったじゃない」
呆れた声がまた聞こえた。
「・・・・・・」
呆れられるのはいいがそれよりも問題がある。
(誰だ?)
誰かが俺の部屋に居るという事だった。俺には家族がいないので、家は必然的に俺一人になる。
だけど、何故声が聞こえるのか分からなかった。
(まさか、泥棒!?)
泥棒という考えもあるが、気付いたら普通に逃げるか。
だったら、誰なのか。身体は痛くて起き上がれないが、幸いと言うべきか近くから声がしたので、俺の部屋にいるだろう。
俺は顔を少しだけ上げると、声の主であろう人物は目の前にいた。正解には、ベッドに軽く腰掛けている。後ろ姿しか見えないが、白銀の髪色の人物だった。その人物を俺は知っている。
「聖・・・・・・先輩?」
昨日、転校してきた日本人には有り得ない白銀の髪をしている人物――聖先輩だった。
「正解よ」
聖先輩は一言言うと立ち上がり俺の方に近付いて来た。
明らかに右手に銃を握りしめながら
「あの・・・・・・」
俺が質問しようとしたら額に銃を突き付けられた。
「言い残す事は・・・・・・無いわね」
「!?」
俺が声を出す前に、聖先輩は躊躇無く引き金を引いた。
パン!!
そして部屋に一つの銃声が鳴った。
「・・・・・・何時まで目をつぶってるの?」
「・・・・・・えっ?」
聖先輩に言われて俺はゆっくりと目を開けた。
目を開けると、やはり目の前には聖先輩が銃を持っていたが銃口は明らかに額に照準を定めていた。
「・・・・・・」
俺は暫く状況を理解出来なかった。朝起きて、聖先輩が何故か居て、その聖先輩に銃で撃たれる。
いや、他にも色々あるのだが、ありすぎて頭が混乱していた。
「大丈夫。殺しはしない」
「・・・・・・」
「・・・・・・一パーセントの確率で」
「殺す気満々だろ!!」
俺は思わず突っ込んでしまった。
いや、だってしょうがないだろ? 何時も形宮が突っ込み満載の事を言うのだから自然に突っ込んでしまう体質になりつつあるのだ。しょうがないだろ? いくら相手が美少女の聖先輩でも突っ込むのはしょうがないだろ!?
俺が誰に対して言う訳でも無い言い訳を自分にしていると聖先輩は納得したように言う。
「・・・・・・成る程。中々やるわね」
(いや、納得されても困るんですけど・・・・・・)
俺は心の中で思った。突っ込みはいいとして、まずは色々と聞きたい事がある。
「あの、聖先――」
「何も言わなくていいわ」
聖先輩は俺の言葉を遮った。
「・・・・・・貴方の言いたい事は分かってる」
「・・・・・・」
「な、何故だ? 何故お前が生きている、という事でしょ?」
「違うわ!!」
俺はまたしても聖先輩に突っ込んでしまった。
「私を倒すには、神威の力がなければ倒せない」
「神ですか、貴方は!?」
「・・・・・・」
聖先輩が、貴方何言ってるの? という視線で俺を見ている。
(・・・・・・嵌められた)
俺はその視線を見ただけで何故か分かった。
「貴方をからかうのは、これぐらいにするわ」
聖先輩がそう言って右手に持っていた銃を袖にしまった。
「・・・・・・真剣な話をするわ・・・・・・夜眞棊郁斗」
明らかに今までと声が違う。機械の様に無機質で、氷の様に冷たい。そして表情まで冷たい。
そして言う。
「私を居候させなさい」
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