十一呪 委員長相談室
まず最初に、ここから先を話すには説明が必要だと思うので一様しておこう。
『委員長相談室』とは、その名の通りある教室で行われており、委員長に悩みや不安を相談するという教室だ。
前にも言った通り、悩みをほぼ解決している為かなりの人気を誇っており、今では委員長に相談するにしても一ヶ月先までといわれている。噂だが、現職のカウンセラーが弟子入りを求めているともされている。
ちなみに勘違いするかも知れないが、委員長の能力は精神や心に関与する能力では無いことを言っておこう。
『情報部』と内容は少し似ているが『委員長相談室』がカウンセリング、『情報部』が万屋と覚えてくれれば良い。
話は変わるが人間、『思い込み』はいけない事だと思う。よく刑事ドラマなんかでは『思い込み』によって誤認逮捕があるだろう。または、犯人を追い詰め、自供させた後に、誰かが真実を言う事により、犯人だけが『思い込み』で犯行をしていた事もざらである。
刑事ドラマに飽き足らず他にもあるだろう。例えば、少年向けのバトル漫画のキャラクターにも『思い込み』の奴は、いるだろう。「俺は最強だ!!」なんて言ってるライバルだか、ボスだか、モブキャラだか知らないが『思い込み』も良いところだ。大抵の場合、主人公補正とかでやられるのが決まっているのに。
しかし、主人公補正だとか言っても主人公の行き着く先には「思いの力だ!!」とか「これが俺達の力だ!!」とか、どうも『思い込み』に行き着くと思っている。
そして、最終的にはその『思い込み』で敵を倒すのだから何とも言えない気分になる。
まあ、別に何とも言えないだけで、あって嫌いではない。
というか、『思う』という行為は当たり前だと思う。
スポーツで試合するにしても相手が如何に強かろうと、最初から負けると『思う』奴はいないだろ。逆の場合もまた叱りだ。
何か始める時も出来ると『思う』か、出来ないと『思う』のか、人それぞれではあるが。
話しが長くなってしまったが纏めると『思い込み』は『思う』程度にした方がいいという事だ。
無論、人それぞれだから普通にこの話を、右から左に流してくれて構わない。 別に強制をするために話しをした訳ではない。
ただ、疑問に思っただけだ。
今この話しを見てくれている人の何人がこの語りを――
――夜眞棊郁斗が語っている訳では無いと気付くのか気になっただけだ
もう一度言うが、別に気にする必要もない。
ただ、気になっただけだ。
語りはこれぐらいにして、そろそろ題名通り『委員長相談室』を始めよう。 今、見ている人の中にはこの語りをどうでも思っている奴もいると思うので、今回はここで幕引きをしようと思う。
だから『思い込み』は、ほどほどにした方がいいと思う。
見ている者の中にはオチが分かる者もいるだろう。
何故なら――
形宮礼司が語ってる訳でも無いのだから
◆ ◆ ◆ ◆
委員長が俺の右斜め前――形宮の隣の席に座った。
「それで、形宮君。悩みって何ですか?」
委員長が形宮の方に身体を向けてそう言った。
『委員長相談室』なんて名前がついていていても、別に特別な事をやるわけではない。普通に委員長が悩みを聞いて、思った事や解決策を言っているだけである。
それでも悩みを解決してるのだから凄いと思う。そんな事を思っていると、形宮が口を開いた。
「悩みというのは……卒業後の進路についてだ」
「……進路ですか?」
形宮の悩みを聞いて、委員長が少し驚いていた。
まあ、無理も無いだろう。俺だって少し驚いている。形宮が悩みがあると言っても、どうせふざけた事だと思っていたのだが、真剣な悩みだった。委員長は委員長で形宮が卒業後の進路について悩んでるとは思わなかったのだろう。
「進学か就職で迷ってるという事ですか?」
委員長が形宮に質問した。
進路と言えば、進学か就職のどちらかだろう。
「いや、進学する気は無い。やりたい事をやると決めている」
形宮はそう言った。
やりたい事をやると決めてるなら悩む必要は無いんじゃないか?
「別に、悩む必要は無いんじゃないですか?」
委員長も俺と同じ事を思った様らしく、形宮に聞いた。
「やりたい事……いや、やろうとしてる事が二つあるのが問題だ」
形宮は真剣にそう答えた。
つまり、卒業してやりたい事をやるのはいいが、そのやりたい事が二つあるから悩んでいるという事か。
「なら、二つともやれば良いと思いますよ?」
確かに、やりたい事が二つあるならどちらもやればいいのではないだろうか? 形宮の場合は簡単に出来そうな気がするのだが。
「どちらとも、やるのは可能だ。しかし、二ついっぺんにやると中途半端になってしまうのが問題なんだ……」
「だから、片方だけやろうと思っているんですか?」
「……そうだ」
形宮がやはり真剣そうに言う。
こんな奴でも、自分の将来の事を悩んでいるのだ。 それなのに俺はコイツの悩みに気付く事さえ出来なかった。
将来の事に悩んでいるのに、俺の左手の心配をしてくれて。俺はただ、自分の事に精一杯で――自分自身の事しか考えて無かった。
やはり、俺は違うのだろうか?
形宮や委員長、クラスメイト達とは違うのか?
俺みたいな存在が普通に存在してもいいのか?
「つかぬ事を聞きますけど、形宮君のやろうとしてる事って何ですか?」
俺が自己嫌悪していると、委員長が形宮にそう聞いた。
俺は一旦、自己嫌悪を止めて二人の会話を聞く事にした。
「それは――」
形宮は一旦言葉を区切った。
「卒業後と同時に夜眞棊と会社を設立して五年以内で世界経済に影響を及ぼす会社にするか、それとも卒業後と同時に夜眞棊と世界征服をするか……で迷っている」
「「…………」」
形宮の悩みを聞いて俺と委員長は言葉を失った。
突っ込み所がありすぎて言葉を失った。
そんな俺達を無視して形宮は話しを続ける。
「最終的には世界征服をするのだが、会社を設立し地盤を固めるべきなのか、そこが悩み所だ」
一つ理解した。
コイツにまともな話しを求めるのは間違っていると。
「……まず、その進路から考え直して下さい」
委員長が、ごもっともな意見を言う。
「何っ、何処がいけない!!」
「全部に決まってるじゃないですか!!」
真顔で驚く形宮に対して委員長が叫ぶ。
「馬鹿なっ!?」
「何で驚くんですか!?」
「何処がいけないんだ!」
「だから、全部です!」
形宮と委員長の漫才みたいな掛け合いが暫くの間続いた。
委員長はかなり疲れているが、形宮は普通だった。
「委員長よ」
「……何ですか?」
「確かに俺の考えがいけなかった様だ」
「……分かってくれましたか」
心なしか、委員長の表情が安堵の表情になった気がする。
「ああ――」
「――秘書も必要ということだろ?」
「「は?」」
またしても、形宮は訳の分からない事を言った。
「確かに、俺と夜眞棊では無理があったな……」
と、形宮は一人で何やらぶつくさと言い始めた。
「……夜眞棊君」
委員長が俺に声を掛けた。
「……どうした?」
「世の中、救えない人も居るんですね……」
「そうだな」
俺と委員長はもう一度、形宮の方を向いた。
形宮は相変わらず、独り言を言っていた。
「「はあ……」」
俺と委員長はそれを見て、溜息をついた。
因みに形宮は委員長の名前を唯一知っていますが、本人に言うつもりは無いです。(決して、決まっていない訳ではありません)
能力物の話しなのに、全く能力を出していない・・・
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